完全刷新のアーキテクチャーで空間効率がアップしたキャビン

　世界95か国あまりで発売されるレクサスの大黒柱といえば「RX」。弟分の「NX」や「UX」などブランド全数の約3分の2がSUVというレクサスのモデルミックスの中で、半数近くを占めるのがコレといえば、その勢いがうかがい知れるだろう。乗用車のモノコックアーキテクチャーをベースにしたプレミアムなSUVという、今日、石を投げれば当たるほど普通になったカテゴリーのパイオニアは、今でも市場の中心にいる。

　日本ではトヨタ「ハリアー」として販売された初代から数えれば、ほぼ四半世紀となる歴史において、新しいRXは5代目ということになる。そのエクステリアにおいてキャッチーなディテールは“スピンドルボディ”と呼ばれる新しい顔の成り立ちだろう。

　この端緒となったのは、近々の市場導入が見込まれるEV（電気自動車）の「RZ」で、そちらは従来のスピンドルモチーフを穴開きのグリルでなく立体的に形状化することで、EVであることを象徴的に表現していた。新型RXはその流れを汲みながら、エンジン車やHEV（ハイブリッド車）に必要な導風口をボディと一体感のあるデザインで設えている。

　新型RXのリア周りはクオーターピラーなどのグラフィックに先代からの継承が見てとれるが、全体にスタンスが広がって据わりがよくなった印象だ。が、実は寸法関係の数値を見ると、全幅が25mm広がった程度で、全長や全高はほぼ同じ。一方でホイールベースは60mmも延長されている。

　つまりは空間効率が高くなったわけだが、その主因は完全刷新となったアーキテクチャーにある。タイミングの関係もあって“GA-Kプラットフォーム”の採用は後手に回ったが、その分熟成や改良が進んだ最新世代の基礎に新開発のリアマルチリンクサスを組み合わせるなど、シャシーの充実ぶりは想像に難くない。

　日本仕様の新型RXに用意されるグレードは、現時点では3種類。最新世代のダイナミックフォースユニットとなる“T24A-FTS型”2.4リッター4気筒ターボを搭載した「RX350」、次いで“A25-FXS型”2.5リッター4気筒に2モーターを組み合わせたPHEV（プラグインハイブリッド車）となる「RX450h＋」、そして“T24A-FTS型”2.4リッター4気筒ターボに前後モーターを組み合わせたHEVの「RX500h」となる。RX350は前輪駆動と4WDを設定、他２グレードは4WDのみの設定だ。

　日本で最も売れ筋となりそうな「RX350h」、つまり2.5リッター4気筒＋2モーターのHEVが当初ラインナップされていないのはどうよ、と思うが、部品調達などの関係で供給体制が整わないといわれれば、こちとら打つ手はない。メーカー側も不可抗力ながら、買いたくても買えない昨今の状況は、本当にどうにかならないものかと思う。

　日本だけでなく北米でも生産される主力車種ということもあって、RXは実用性の面において先出のNXやライバルとしっかり住み分けられている。

　リアシートの着座感は、足下や天地において181cmの筆者でも窮屈さを全く感じることがなく、その後席を使用したままでラゲッジスペースは612リットルの大容量を確保している。その形状や幅にも気遣われており、9.5インチのゴルフバッグを無理なく4つ積載することが可能だ。さらにリアシートの背もたれを倒すことで容量は1678リットルまで拡大。その後席背もたれは、上位グレードでは運転席側からタッチパネルを介してコントロールできる。

　装備面で特徴的なのは、全車標準採用となる14インチのタッチパネル式インフォテインメントディスプレイだ。レクサスのモデルで最大となるそれは、さすがにインテリアにうまく親和しているとはいいがたいが、多くの情報を一瞥するためにベストな位置でもある。また、地図の拡大／縮小など画面の左方に表示されるボタンはさすがに筆者の男手でもちょっと遠いかという印象だった。新型RXにはAIとの対話式ボイスコントロールも備わるため、使い勝手はそちらとの併用でカバーする形になるだろうか。