日産「GT-R」はなぜ延命できたのか? 終焉を迎えるはずだったR35型に2024年モデルが登場した理由
2022年モデルの時点では“次のモデル”はなかった!?
このように、さらなる進化を果たした「GT-R」だが、なぜR35型は「2022年モデルで最後」とウワサされていたのだろう? その根拠は、走行時の騒音規制が強化されたことにある。

継続生産車であるR35型「GT-R」も2022年秋から規制の対象となったのだが、2022年モデルは規制をクリアできていなかった。そのため「R35型は2022年モデルで最後」という説が、半ば常識となっていたのである。
「2022年モデルを発売した後、ものすごい反響をいただいた。反響というよりはお叱りの声。『手に入らないじゃないか。もっとつくれないのか?』と」
「GT-R」や「フェアレディZ」のブランドアンバサダーを務める日産自動車の田村宏志さんは、当時の状況をそう振り返る。
2022年モデルを世に送り出した時点では、やはり“次のモデル”の計画はなかったのだろう。騒音規制はマフラーの近接排気音だけではなく、タイヤが発するノイズやエンジン音などあらゆる騒音に対する規制であるため、基準を満たすのがとても難しい。クリアするためには、大幅な変更が避けられないのだ。
「規制をクリアするには、マフラーの容量を3倍にしてラゲッジスペースを半分にする。タイヤから生じる音を減らすために、後輪にも前輪と同じ255mm幅のタイヤを履く。そうやってノイズを消せば、なんとかなる。でも、そんな「GT-R」って皆さんが欲しいと思うか? 欲しくないでしょう? だからパワーを1馬力も落とさずやってくれ!」
こうした田村さんの無茶ぶりが開発責任者の川口さんへと伝えられ、「GT-R」改良モデル=2024年モデルの開発はスタートした。
「『GT-R』の魅力は絶対にキープしなければならない。パワーは絶対に落とさない。音量は落としても迫力は落とさない」。それが、難題に挑む川口さんの決意だった。
●スーパースポーツの延命を実現した新構造マフラー
川口さんら開発陣は騒音を減らすため、どんな手段をとったのか? その秘密が、2024年モデルの日本仕様に搭載された新構造のマフラーだ。このマフラーのおかげで、「GT-R」はパワーを落とすこともなければ荷室を狭くすることもなく、また、タイヤを細くすることもなく生産を継続できるようになった。
車外騒音を減らすには、特にエネルギーの大きな低音域をカットするのが効果的だ。そこで新しいマフラーは、途中から分岐した先に密閉された消音機を設け、そこで低音域をカットすることで騒音を減らすことに成功した。一方、排気の流れは邪魔していないことから、出力は落ちていない。
心配なのは、低音域のボリュームを下げたことで音の迫力が削がれることだ。その点について川口さんは「大きなエネルギーをきれいに分散させて小さな渦を発生させることで、高速・高回転域で迫力あるジェットサウンドが生まれた」と説明する。
これに関してはまだエンジン音を聞けていないため、試乗機会を楽しみに待ちたいところだ。
2024年モデルの「GT-R」は、新開発のマフラーによってパフォーマンスを落とすことなく、非常に難しいとされてきた騒音規制に対応した。この高い壁をクリアしたことは、非常に大きな意味があると考える。なぜなら、20年ほど前の2002年とは異なる流れになっているからだ。
2002年といえば、日産の“R34”型「スカイラインGT-R」をはじめ、“S15”型「シルビア」やトヨタ“A80”型「スープラ」、マツダ“FD3S”型「RX-7」など、多くのスポーツカーが排ガス規制の強化に適合できず、一斉に生産終了を終了した年だ。正確にいえば「コストを投じれば対応できるものの、コストに見合うだけの販売台数が見込めない」という理由からだった。
今回の「GT-R」も、販売台数が多いかといわれればそうではないものの、R35型は終焉の道を選ぶのではなく、高い壁に果敢に挑んだのである。今後発表される車両価格はおそらく上がるだろうが、生産や販売が終了するよりはよっぽどありがたい。
そしてこの先、「フェアレディZ」をはじめ騒音規制によって将来的な生産継続が危ぶまれているスポーツモデルも、「GT-R」と同じようになんとか生き延びて欲しいと願うばかりだ。スポーツカーファンにとって、「GT-R」の2024年モデル誕生は希望の光となるのではないだろうか?
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