オフロードライドもこなす車体構成

　2023年のバイク市場を占う上で重要なモデルが多数出展されたイタリア・ミラノでのEICMA（国際モーターサイクルショー）2022。その中の1台が、ホンダの「XL750トランザルプ」です。

　近年は、長距離ツーリングを快適にこなせるアドベンチャーモデルが人気ですが、「XL750トランザルプ」は同カテゴリーで注目を集める1台です。

　ホンダのアドベンチャーモデルといえば「CRF1100L アフリカツイン」が人気ですが、新しい「XL750トランザルプ」は少し排気量の小さいミドルクラスに該当します。近年は1000ccクラスの大排気量モデルだけでなく、このクラスにも注目が集まっています。

「XL750トランザルプ」のエンジンは755ccの水冷並列2気筒で、OHCの“ユニカムバルブトレイン”を採用しています。同機構は、DOHCに比べて左右の寝かし込みや切り返しが軽くなるのが利点で、ホンダではオフロードマシンを中心に採用されているもの。

　また、ホイール径もフロント21インチ、リア18インチというオフロード車のような設定とされており、荒れた道での走破性を重視されていることがうかがえます。

「アドベンチャーモデルには、オンロードを重視したモデルとオフロードでの走破性を高めたモデルとがありますが、『XL750トランザルプ』は後者に分類できそうです」

　そう語るのは、2輪車などの乗り物を中心に取材・執筆活動をしているライターの増谷茂樹さん。

「オフロード性能を重視したモデルとしては、2018年に発表されたヤマハの『テネレ700』がありますが、『XL750トランザルプ』はそのよきライバルとなりそうですね」（増谷さん）

●かつての人気モデルのネーミングを継承

「トランザルプ」という名を冠したモデルは、過去にもラインナップされていました。

　1987年発売の「トランザルプ600V」がルーツで、こちらは583ccのV型2気筒エンジンを搭載。まだ“アドベンチャー”というカテゴリーが存在していない時代でしたが、高い支持を集めました。

　その後、1991年には、日本国内向けに400ccへと排気量を落とした「トランザルプ400V」が登場。欧州仕様車は途中から排気量をアップし、2012年まで生産が続きました。

　そんなロングセラーモデルの名を受け継いだ今回の「XL750トランザルプ」。欧州仕様車はすでにスペックなども発表されており、日本国内への導入も見込まれていますが、日本仕様の価格や発売時期などは未発表です。755ccという排気量は日本の道路事情に適していることもあり、登場を心待ちにしているライダーも少なくないでしょう。

　容量の大きなパニアケースやLEDフォグランプ、ラジエターガード、スキッドプレートなど、アドベンチャーモデルらしいオプションも豊富に用意される見込み。ツーリングライダーには気になる車種となりそうです。

●製品仕様（欧州仕様）
・サイズ：2325×838×1450mm
・シート高：850mm
・重量：208kg
・エンジン：755cc水冷並列2気筒OHC4バルブ
・最高出力：67.5kW／9500rpm
・最大トルク：75Nm／7250rpm