481馬力の大排気量NAセダン レクサス「IS」はどんなクルマ? 珠玉のV8エンジンならでは深い味わいとは
レクサスだからこそ展開し続けられる大排気量V8エンジン
発表されるやいなや爆発的なオーダーが入ったというレクサスのスポーツセダン「IS500」を試乗することができました。

昨今、大排気量・自然吸気・マルチシリンダーという三拍子がそろったエンジンが世の中からみるみる消えていっていることに気づいているクルマ好きの方、多いのではないでしょうか?
額面上の二酸化炭素削減と、エンジン本体の設計合理化やコストダウンを両立できることから、いわゆるダウンサイジング化が進んでいたところにEV(電気自動車)シフトの波が来て、内燃機そのものを追いやる動きが加速したというのが現況でして、前述のようなエンジンはすでに滅びゆく恐竜のようなあしらいです。
現在も残る三拍子そろったエンジンを挙げると、数えるほどしかありません。擁しているところをざっくり括れば、フェラーリやランボルギーニ、ポルシェのような純然たるスポーツカー銘柄、何がなんでもV8というお客さんが少なからずいるゼネラルモーターズやフォードなどアメリカ車の銘柄、といったところでしょうか。
と、その一角に食い込んでいるのがレクサスです。型式名称“2UR-GSE”エンジンは、バンク角90度のV型8気筒で、排気量は5リッター。ボアが大径でショートストロークと、今日びのエンジンとは正対に骨格からして回してナンボの適性を備えています。
トヨタのスポーツユニットといえばヤマハ絡みの案件が多いですが、このエンジンも開発にはヤマハ発動機が関与。「LS600h」の“2UR-FSE”型をベースとしながら中身は徹底的に手が加えられ、レッドゾーンは登場当初で6800rpm、現在は7200rpmの設定と、開発当時の同等V8群に照らせば、メルセデスAMGの“M156”系やマセラティの“ティーポ136”系などと比肩する高回転・高出力ユニットに仕上がりました。
でも、彼らのエンジンはすでにターボ化によるダウンサイジング&ハイパワー化へとシフトしています。パワーやスピードという商品価値のためならば、むしろマップチューニングでヒエラルキーを構築できるターボ化は好都合といえるかもしれません。ただし、トップエンドに向かって突き抜けるように吹け上がるフィーリングや、それに乗じたパワーの伸びや心たかぶらせるサウンドなど、感情的な項目でみれば自然吸気に利があるのも確かです。
レクサスが2UR-GSEの展開を継続し続けられる最大の理由は、ハイブリッドカーの普及を先駆けたことによる二酸化炭素排出抑制への貢献があります。先の会見では、あくまでトヨタの試算ながら、これまでにEVにして約750万台相当の二酸化炭素削減を果たしたと発表されました。これはざっくりテスラの累計生産台数の約2倍に当たります。
一方で、さしものトヨタとて2UR-GSEの延命をはかり続けるには限界があります。二酸化炭素的課題だけでなく、エミッションや騒音など環境規制強化への対応も含めてみれば、販売終了のカウントダウンは始まっているとみるのがスジでしょう。
これまで2UR-GSEを搭載するレクサスの世界販売車といえば、ともにクーペの「LC」と「RC F」という2モデルでした。ただし、レクサスにとって最大市場である北米ではもうひとつ、コンパクトセダンの「IS」にも「IS500“F SPORT Performance(Fスポーツ パフォーマンス)”」が2020年11月より用意されていたのです。これはV8エンジン大好きなアメリカの顧客要望から生まれたグレードでして、発表当初から日本市場への導入が検討されるも、彼の地での人気もあってなかなか実現しなかった模様です。
2023年秋になってようやく日本でも販売が始まりましたが、限定500台の抽選販売となった「IS500“F SPORT Performanceファーストエディション”」の購入希望は5000件を軽く突破、抽選倍率は10倍以上になったそうです。
現在は標準仕様であるIS500“F SPORT Performanceが用意されていますが、オーダーすると納車まで年単位で待たされるのは確実。販売店によっては予約自体を止めていると聞きます。
page
- 1
- 2
VAGUEからのオススメ
マザー・オブ・パールが詩情豊かに輝く――大人の夜を彩るブローバ「マリンスター」日本限定モデルの魅力とは【PR】