「CROWN」のレタリング“推し”トヨタエンブレムは控えめ

　2023年秋に発売予定のトヨタの新しいスポーツSUV「クラウン・スポーツ」のプロトタイプが先ごろ富士スピードウェイで公開されました。

　当日、メディアや招待ユーザーの前で3台のクラウン・スポーツが公開されたのですが、気になったのはそのエンブレム。トヨタ車であることをアピールする“トヨタエンブレム”が、ものすごく控えめなサイズだったのです。

　トヨタ自動車は、2022年夏の発表会において4モデルの新型「クラウン」を公開しました。

　歴代モデルは、クラウンといえばセダン、というイメージがしっかりと確立されていました。しかし、16代目となる新型はそうしたイメージを刷新。先行発売の「クラウン・クロスオーバー」、ステーションワゴンの「クラウン・エステート」、王道の「クラウン・セダン」、そしてクーペSUVのクラウン・スポーツという4モデルにより、変化の著しいマーケットニーズをカバーしようとしています。

　そんな4台の中でクラウン・スポーツは、エモーショナルで創造的な雰囲気を持ち、乗り降りや運転のしやすいパッケージとともに、俊敏でスポーティな走りを楽しめる新しいカタチのスポーツSUVと位置づけられています。

　設定されるパワートレインは、HEV（ハイブリッド）とPHEV（プラグインハイブリッド）の2種類。駆動方式はいずれも4WDを採用します。

　新型クラウン・スポーツにおける最大の特徴は、そのアグレッシブなルックスといえるでしょう。担当デザイナーによると、「エクステリアデザインはシンプルに、“カッコよく美しいSUV”を目指した」とのことですが、実際、エモーショナルで創造的なルックスは、見る人の目を釘づけにします。

　フロントマスクは、シンプルかつ精悍なデザイン。サメのような鋭い表情を演出する“ハンマーヘッド”デザインを立体的な造形とするなど、新しいクラウンの表情を創出しています。

　サイドビューは、ボディの凝縮感によってアジャイルな印象を追求。サイドパネルは、リアにかけての“抜けのよさ”を表現しています。

　そしてリアのデザインは、左右に分割されたコンビネーションランプが印象的。これは、歴代クラウンのスポーティグレードに共通する記号性をシャープに表現したもので、ワイドスタンス感を強調しています。

　ちなみに、コンビネーションランプは左右にセパレートされているものの、双方を黒いガーニッシュでつなぐことで一体感を演出。その下に「CROWN」のレタリングが大胆にレイアウトされています。

　そんなリアデザインで気になったのが、トヨタ車であることの象徴でもある“例のエンブレム”が控えめなこと。一見、「トヨタエンブレムがない!?」と錯覚するほど極小サイズなのです。

●全トヨタ車で最小のトヨタエンブレム

　先行発売されたクラウン・クロスオーバーのリア回りも、大きな「CROWN」のレタリングが目立つデザインとなっています。しかしトヨタエンブレムは、リア中央の目立つ位置にしっかり鎮座しています。

　それに対してクラウン・スポーツのトヨタエンブレムは、なぜ極小サイズになったのでしょうか？　担当デザイナーはその理由について、「左右のコンビネーションランプをつなぐガーニッシュ内にエンブレムを収めたかったので、このような“トヨタ車最小サイズ”となりました」と話します。

　近年、クラウンシリーズは、フロント中央にクラウン独自の“王冠”マークを、リアの中央にトヨタエンブレムを配してきました。その“方程式”こそ変わりませんが、新型クラウン・スポーツはそのエンブレム配置を見る限り、トヨタ車であることの前にクラウンシリーズの一員であることをアピールしたかったように感じられます。

　この辺りは、先ごろ登場した新型「プリウス」が、前後の目立つ位置にトヨタエンブレムをレイアウトしてトヨタ車であることを主張しているのとは対照的。クラウンというブランドの偉大さを物語るエピソードといえそうです。

＊　＊　＊

　先行発売されたクラウン・クロスオーバーに続いて、これまでの“クラウン像”を打ち破ってくれそうな意欲作である新型クラウン・スポーツ。そのチャレンジングな姿勢は、エンブレムのレイアウトからもうかがえます。