ラグジュアリーを極めた「メルセデス・マイバッハの最新作」 ブランド初の電動SUVはプレミアムカーを味わい尽くした人への「裏メニュー」!?
マイバッハ初の電動SUVは何がスゴい?
現在、メルセデス・ベンツには、ふたつのサブブランドが存在しています。ひとつは、パフォーマンス重視のスポーツブランドであるメルセデスAMG。そしてもうひとつが、ラグジュアリーを極めた超高級ブランドのメルセデス・マイバッハです。

マイバッハは元々、1906年にエンジン製造会社として創業。1920~1930年代には高級車製造を展開するもののビジネスに失敗し、1966年にはメルセデス・ベンツの傘下に収まってしまいます。
そんなマイバッハが華々しく復活を果たしたのは2002年のこと。しかし、2012年には再び、ブランド消滅の憂き目に遭ってしまいます。
そんな悲運のブランド・マイバッハですが、2014年に再びメルセデス・ベンツのサブブランドとして復活。現在は日本でも3モデルを展開するほか、2025年中にはブランド史上最もスポーティなモデルとされる「SLモノグラム」シリーズの上陸も予定されています。
本記事でフォーカスするのは、そんなメルセデス・マイバッハ初のBEV(電気自動車)となった「EQS 680 SUV」。ベースとなるのはメルセデス・ベンツ「EQS 580 SUV」(以下、EQS SUV)ですが、実際に乗ると似て非なるものであることが分かりました。一体どんなところが違うのでしょうか? 冷静にひも解いていきたいと思います。
基本的なフォルムこそベースとなった「EQS SUV」と同じですが、マイバッハ仕様は専用のフロントグリル&エプロン、マイバッハマークがちりばめられたインテーク風パネル、22インチの専用アルミホイール、そして大胆に塗り分けられたツートーンペイント(ベルベットブラウン×オニキスブラック)などによって明確に差別化されています。
個性的なボディカラーに加えて、全長5135mm、全幅2035mm、全高1725mmとサイズがサイズなだけに、パッと見のインパクトは絶大。好きか嫌いかは別として、メルセデス・ベンツの分かりやすさとは異なる独自の世界観が漂うのは間違いありません。
筆者(山本シンヤ)は、マイバッハ「EQS 680 SUV」はSUVを名乗るものの、2023年にデビューした新時代のトヨタ「センチュリー」のように、ショーファーカーの新たなスタイルであると思えました。

左右4枚のドアすべてが電動開閉可能なマイバッハ「EQS 680 SUV」のドアを開け、スーッと出てくる大型のステップボードに足を置いて乗り込みます。
インテリアは「全面モニター!」といっても過言ではない“MBUXハイパースクリーン”を備えたインパネ周りが目を惹きます。基本的なデザインはベースとなった「EQS SUV」と同じですが、トリムの材質や厚みは異なり、それらが醸し出す触感は別物。デジタルなのに温かみがあるという、不思議な雰囲気がキャビンには漂っています。
さらに、「フツー、クルマには使わないよね!?」と思ってしまうほどまばゆい、オプションのインテリアカラー(クリスタルホワイト×シルバーグレー)とブラックピアノラッカーフローイングラインセンタートリムが、別格の世界を演出しています。
ベースモデルと大きく異なるのはリアシート。「EQS SUV」が3列シートの7人乗りなのに対し、マイバッハ「EQS 680 SUV」のシートは2列のみ。ホイールベースは3210mmと長いので、後席足元スペースの広さはいわずもがなです。
さらに、オプションのファーストクラスパッケージを選ぶと、左右独立シートや格納式テーブル、そして温冷機能つきカップホルダーやシャンパン用スタンド、冷蔵庫なども装備され、超高級車と呼ぶにふさわしいリアシート空間を構築することができます。
そんなマイバッハ「EQS 680 SUV」のパワートレインは、前後アクスルにそれぞれモーターを搭載したツインモーター4WD。システム最高出力は658ps、同最大トルクは955Nmと超ド級です。
バッテリーは118kWhと大容量で、ヒートポンプやディスコネクトユニット(巡航中にフロント駆動を切り離す機能)の採用も相まって、航続距離はWTTCモードで640kmとBEVの中ではロングレンジを誇ります。
車重3トンを超える3050kgというヘビー級ながら、アクセル全開では脳ミソがカクンとズレるんじゃないかと思うくらい、どう猛な加速を見せます(ちなみに0-100km/h加速タイムは4.4秒)。ただし、このクルマの真骨頂はそんな加速フィールなどではなく、むしろフツーに移動するときの“余裕”にこそあります。
同じ出力を発生させる際、小型のユニットで絞り出すのと大型のユニットで無理せず引き出すのとでは、どちらの方がドライバーにとってストレスが少ないか? それはエンジンだけでなくモーターでも同じです。
モーターは応答性に優れ、高トルクの引き出し方に優れるのはいわずもがなですが、マイバッハ「EQS 680 SUV」のそれは、まさに大排気量エンジンのような“懐の深さ”を強く感じさせるパワートレインだなと感じました。
おそらく、この超ド級のパフォーマンスは、例えば、暴漢に襲われた際の危険回避など、いざというときのために用意されたものではないでしょうか。普段はあくまでマイバッハらしく、ゆっくりとなめらかに、そして静かに走らせるために使うという贅沢こそが、このクルマのパワーユニットの本質なのだと思います。
なので、アクセルペダルを深く踏み込んで、「速いね~」、「スゴいな~」と喜んでいるようではダメ。高速道路の追い越し車線を、目を三角にしてすっ飛ばしていく高性能車を横目に「心に余裕がないのね、オホホホ……」と常に笑って見送ることができる平常心がオーナーには求められるのです。“金持ちケンカせず”でなければ、正しく走らせることができないクルマだと思います。
page
- 1
 - 2
 
VAGUEからのオススメ
                                マザー・オブ・パールが詩情豊かに輝く――大人の夜を彩るブローバ「マリンスター」日本限定モデルの魅力とは【PR】