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“20円でヒーローになれた時代”があった!? スーパーカー消しゴム「カー消し」ブームに隠された少年たちの熱狂と創意工夫とは

教室がサーキットに! 魔改造とBOXYで競った少年たちの“聖戦”

 この「初期モノ/後期型」のあとに登場し、カー消しブームを本格化させたのが、いわゆる“精緻モノ”と呼ばれるシリーズでした。

「初期モノ/粗彫りシリーズ」は、漫画「サーキットの狼」の影響で認知度が大幅に増したクルマたちが題材となっていました。とはいえ、まったく似ていません
「初期モノ/粗彫りシリーズ」は、漫画「サーキットの狼」の影響で認知度が大幅に増したクルマたちが題材となっていました。とはいえ、まったく似ていません

 この精緻モノは「スーパーリアリズムシリーズ」とも呼ばれており、初期モノでの反省を踏まえたのかは定かではありませんが、スーパーカーらしい美しいプロポーションがしっかりと再現されていました。ポルシェやBMWを除けば、イタリア車をメインに展開され、子どもたちの間で一気に定番化していったのです。

 その精緻モノが広く一般化したあと、さらなる進化を遂げたのが「ペったんこモノ(=フラットボディシリーズ)」です。前身の「精緻モノ/スーパーリアリズムシリーズ」でスーパーカーブームを代表するモデルが出揃ったこともあり、プロトタイプやショーモデルなど、よりマニアックな車種が題材に選ばれていきました。

 このシリーズでは、透明素材を使ったカー消しも市民権を得て、通常バージョンと同じように著しく発展していきました。透明カー消しは材質が少しやわらかく、机上でのグリップ力が強かったため、速く走らせるための個性的な改造も増えていったのです。

 その後、カー消しのモチーフは国産車、デコトラ、働くクルマ、戦車などにも広がり、全体像を誰も把握できないような状況になっていきました。

 カー消しはスーパーカーをモチーフにしたクルマ型の消しゴムですが、成形ディテールを優先した結果、字を消すという本来の性能は犠牲になっていました。そういった意味では、カー消しはゴム製のミニカーだったのです。

 ちなみに、1957年頃から塩化ビニル樹脂を主材料とするプラスチック字消しが文房具の主流になっていました。一般的なプラスチック消しゴムは、柔軟性を出すためにフタル酸系可塑剤を加えていますが、カー消しでは可塑剤を減らして強度を上げていたのです。実際に字を消せるカー消しも後年リリースされており、こちらは駄菓子屋ではなく、主に文房具店で販売されていました。

 遊び方についても触れておくと、三菱鉛筆のボールペン、BOXYを使ったカー消し遊びが基本となっていました。主な遊び方は2つあり、土俵に見立てた机の上から相手のカー消しを押し出したら勝ちになる「カー消し相撲」と、決められたコースを走らせ、先にゴールしたほうが勝ちになる「カー消しレース」です。

 さらに、BOXYのワンプッシュで誰が一番遠くまでカー消しを飛ばせるか?というシンプルな遊び方も存在していました。当時1本100円で販売されていたBOXYが子どもたちの間で定番となったのは、卓上に置いたときの安定感が抜群だったからです。

 カー消しを弾き飛ばす力を強めるために、内部のバネを取り出し、グゥ〜っと伸ばしてから戻すチューニングが盛んに行なわれていました。バネが細く、伸ばし過ぎてしまうとスプリングとしての機能を失ってしまうため、失敗&後悔する子どもたちが続出したのです。

 バネを2本入れるチューニングも行なわれていましたが、実戦経験が豊富、つまり各部が擦り減っているBOXYにバネを2本入れると、縮められたスプリングの力を解放するオレンジ色のボタン部が壊れてしまうこともありました。この場面でも、往時の子どもたちは大いに後悔したのです。

 カー消しは消しゴム、つまり文房具の一種という言い訳が通用したため、小学校の教室がカー消し遊びのメインステージとなっていました。成績が悪くても、スポーツが苦手でも、カー消し遊びで強ければクラスのヒーローになれたのです。

 ヒーローになるために、子どもたちはBOXYの魔改造だけでなく、カー消し相撲やカー消しレースに出場させる愛車にも、勝つためのカスタマイズを当たり前のように施していました。

携帯電話やインターネットが存在しなかった時代にもかかわらず、全国各地で似たような改造が施されていたのは、駄菓子屋を基点としたクチコミ・ネットワークがフルに機能していたからにほかなりません。缶蹴り、ケイドロ、牛乳瓶のフタ集めと同じように完全なるアナログでしたが、創意工夫したことによる成果をすぐさま実感できる、かけがえのない楽しい時代でした。

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