アウディの新しい電動SUV「Q6 e-tron」は走りもユーティリティも先進性も高次元! “ポルシェと共同開発”した新プラットフォームの実力は?
「脱・エンジン車」の軌道修正を迫られるアウディの決断とは
本記事の主役は、アウディの新しいミッドサイズSUVにして最新のBEV(電気自動車)である「Q6 e-tron(Q6 イートロン)」です。

数年前、アウディも属すヨーロッパのプレミアムブランドの間では“とある宣言”が流行していました。それが「脱・エンジン車宣言」です。きっと覚えている人も多いことでしょう。
そうした宣言が飛び交ったきっかけは、欧州のいくつかの国が2035年など期限を設定し、エンジン車の販売禁止を発表したこと。それに対して、プレミアムブランドを中心に先の「脱・エンジン車宣言」が次々と打ち出されたのです。
エンジン車を止めるといっても、「じゃあ次はハイブリッド車にシフトね」というわけではありません。各社の宣言は、エンジンを搭載せず、走行中に石油を消費しないBEVへと舵を切ることを意味していたのです。
エンジン車の販売を禁止する目的は、地球温暖化を抑えるための二酸化炭素排出量削減。当時はとにかく「エンジン車の開発を止める」ということ自体が、自動車メーカー間のトレンドになっていたように思います。
もちろん現時点でも、地球温暖化と二酸化炭素の関係は完全に解明されていません。もしかすると、地球温暖化うんぬんより、「脱・エンジン車」を表明すること自体が目的だったのでは? そんな気がするのは、きっと筆者(工藤貴宏)だけではないでしょう。
あれから数年が経ち、気づけば欧州プレミアムブランドの「脱・エンジン車宣言」も、「やっぱり厳しいよね」という空気が強まってきました。それに合わせ、各ブランドも「脱・エンジン車宣言」を「やっぱり止める。無理がある」と軌道修正するところがいくつか出てきています。
そのひとつがアウディです。2021年に「2025年に、エンジンを搭載する最後の新型車を発売し、2026年以降の新型車はすべてBEVとする。そして2033年以降は、BEVだけを生産するブランドになる」と発表していたのですが、ここへきてその方針を変更。今後しばらくはエンジン車の開発もおこない、柔軟に対応していくとしています。
とはいえアウディによると、BEVへのシフトを進めるという方針自体に変更はないとのこと。タイミングは後ろ倒しになるようですが、アウディのラインナップにBEVが増えていくのは、もう止められないようです。
●出来のよさに感心させられるアウディのBEV
そこで気になるのは、そんなアウディのBEVがどれほどの実力を備えているのか? ということです。
結論からいえば、悪いわけがありません。筆者は新型「Q6 e-tron」の試乗に先立って、アウディの主力BEVのひとつである「Q4 e-tron」と数日間暮らしてみたのですが、これが本当によくできていました。
まず、パッケージングがいい。4.6m弱という全長はマツダ「CX-5」とだいたい同じですが、リアシートはそれより圧倒的に広く、ラゲッジスペース容量も520リットルと「CX-5」を凌駕します。パッケージング効率が抜群にいいのです。
……と書くと、「エンジンがないBEVなのだから当然でしょ」なんて反論もありそうですが、ただ単にBEVをつくるだけではこうはいきません。BEVづくりに関する技術やノウハウの蓄積があってこそできることであり、昨日今日BEVをつくり始めたブランドだと、こうはいきません。
また、気になる走りですが、電費は普通に街乗りし、移動距離の半分くらいは高速道路だったにもかかわらず、トータル300km弱走って7.4km/kWhという立派な数値。実電費でこの値は素晴らしいと思います。
その上で、動力性能も上々です。アクセルペダルを踏んだ瞬間から立ち上がる、モーター駆動車ならではの太いトルクに加え、かつてのアウディのBEVにはなかった、アクセルペダルを深く踏み込んだ際の伸び感もしっかり感じられる味つけ。走っていて爽快でした。
そして、ハンドリングも自然で気持ちよく、「よくできたBEVだな」と感心させられたのです。
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