接地面積はハガキ1枚分じゃなく“名刺半枚分”!? 世界最大級のソーラーカーレース「ワールドソーラーチャレンジ2025」で使われたブリヂストンのタイヤ「エンライトン」の思想とは
ブリヂストンのモータースポーツ管掌 今井 弘さんに話を聞いた
ブリヂストン・ワールドソーラーカーチャレンジ2025で供給されるタイヤは、ブリヂストンの商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」が採用されています。

エンライトンとは環境性能と運動性能を両立するタイヤ技術で、「薄く・軽く・円く」というタイヤの基本性能を磨き上げたうえで、それぞれの商品ごとに、要求された最適な性能にエッジを効かせる、というものです。
今回のBWSC2025用タイヤは、ソーラーカーに求められる「低転がり抵抗」「耐摩耗」「軽量化」にエッジを効かせて開発されています。
「ソーラーカーのタイヤと、たとえばスーパーGT用のタイヤって、見た目も素材も何もかも違うんですが、すべてにおいて効率よくしていく、という意味においては同じなんですね。ソーラーカータイヤにおいては、効率がよいということは低転がりだったり軽量化だったりわかりやすいんですが、サーキットのレース用タイヤも、いかにエンジンのパワーを効率よく路面に伝えるか。もちろん長く走れれば、レースが有利に展開できますので。効率よくするという点では考え方はまったく一緒なんです」
と話してくれたのは、ブリヂストンの常務役員で、グローバルモータースポーツ管掌の今井 弘さん。今井さんは、現在アメリカ、欧州、日本で展開しているブリヂストンのモータースポーツを統括、タイヤ開発・技術開発の責任者という立場になります。

ブリヂストンは2023年に、モータースポーツ活動開始から60周年を迎えたのを期に、今後、より早くタイヤを開発する場として、モータースポーツを積極的に使っていくといいます。2026−2027シーズンからは、FIAフォーミュラEの単独タイヤサプライヤーにも決まっています。
今井さんはブリヂストンでF1タイヤのエンジニアとして活躍した後、2009年にマクラーレンに入社。16シーズンを過ごし、昨シーズンは現場責任者のダイレクターとして、1998年以来26年ぶりのコンストラクターズチャンピオンを獲得しました。そして2025年3月にブリヂストンに復職、モータースポーツ管掌に任命されたという、ちょっとユニークな経歴をお持ちです。
「もともとはタイヤの側からクルマを見ていたわけです。タイヤはクルマに装着してなんぼですから。それが逆に、クルマ側からタイヤを見るような仕事になって。で、両方の視点で見る経験をして、それからもう一回タイヤの技術、開発の仕事をしてみたら、どういうふうに見えるんだろうな、ということに凄い興味がありまして。
タイヤの開発をしているチームメンバーにも、タイヤの視点だけではなく、もっとこういう違う見方もできるよね、という中から、我々としてもチームとして、新しい価値を提示できるような新たな開発ができるといいな、と思っています」

久しぶりにブリヂストンに戻られて、以前と変わったなと思うところってあるんですか? という問いに、今井さんは
「16年前にいたときには『サステナブル』という考え方はゼロではなかったかもしれませんが、じつはほとんど存在していませんでした。そうした活動も、あまり活発ではありませんでした。ただ、技術は日進月歩で進んでいます。
タイヤそのものは非常に成熟した技術の成熟した製品だなと思いますが、ことサステナビリティについては成長期、いま非常に盛り上がっているところです」と答えてくれました。
今回のBWSC2025向けのタイヤ「エンライトン」は、再生可能資源比率を65%以上に高めているといいます。以前、2019年頃に取材した際には、これが30%ほどだったと記憶しているので、サステナブルという考え方がいかにタイヤに浸透しているかがわかります。

今回のBWSC向けタイヤにはブリヂストン初となる、新たな再生資源が採用されています。これはエネオスとの共創で、実証機で精密熱分解技術を活用し、使用済みタイヤをケミカルリサイクルして取り出した再生カーボンブラックです。
「タイヤって黒いゴムに見えるんですが、じつは本当に色々なものが混ざり合ってできています。使用済みタイヤからカーボンブラックを取り出すのって、非常に難しい。イメージとしては、『お好み焼きができました。でもパンを作りたくなったから、ここから小麦粉だけもう1回取り出してくれ』、そんな感じです。そんなレベルの話を我々は日常的にしているわけですね。そのような技術が本当にいまあちこちであって、非常に面白いな、って思います(今井さん)」
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