51年前のクルマなのに走行6800キロ 極上フェラーリがオークションで落札 誘拐事件をきっかけに ガレージに半世紀“封印”され続けた4人乗り「ディーノ」とは
初めてベルトーネがデザインしたフェラーリモデル
2025年10月にベルギーで開催されたブロードアローオークションに、1974年式フェラーリ「ディーノ308GT4」が出品され落札されました。
どんなクルマなのでしょうか。

1974年7月、イタリアの実業家であり政治家、ジャーナリストでもあったアメデオ・マリオ・オルトラーニ氏のもとに、一台の特別なスポーツカーが納車されました。
それが、わずか134台しか存在しないマローネ・ディーノ・メタリッツァート(メタリック・ブラウン)のボディにベージュのベルベット内装を組み合わせた、きわめて希少な「ディーノ308GT4」でした。
さらに当時としては高価だったボルレッティ製エアコンを装備するなど、贅沢な仕様が施されていました。納車後の整備は3回行われ、1974年10月までに走行距離は5000kmに達しています。
翌1975年4月、オルトラーニ氏がローマの大手電子機器メーカー「ヴォクソン(Voxson)」の社長に就任した際、このGT4は同社製ステレオ8ラジオを搭載するアップグレードを受けました。
しかし、そのわずか2か月後の6月10日、彼は誘拐事件に巻き込まれます。
身代金10億リラの支払いを経て11日後に解放されたものの、この出来事が家族の生活を一変させました。人目を避けるように暮らす決意をした一家は、308GT4をガレージに封印。そのまま1989年まで保管され、走行距離は7000kmに満たないままで売却されました。
以後、複数のオーナーのもとを転々としましたが、車両はほとんど走らせられることなく“眠り続けた”状態にありました。
そして2023年末、「ミラノ・オートクラシカ」にて長い沈黙を破り、“発見されたまま”の姿で展示されると、大きな注目を集めました。
オドメーターは今も7000km未満を示し、ボディやインテリアは当時のまま。まさに“タイムカプセル”と呼ぶにふさわしい一台です。そのオリジナリティと低走行距離は、現存する中でも屈指の保存状態を誇ります。
一方で、この308GT4が誕生した背景には、フェラーリの大きな転換点がありました。
1973年に発表されたディーノ308GT4は、20年以上にわたってピニンファリーナの流麗なデザインを採用してきたフェラーリが、初めてベルトーネにデザインを委ねたモデルです。シャープなエッジとウェッジシェイプを持つクーペスタイルは、新しい美学を提示すると同時に、フェラーリにおけるミッドシップV8時代の幕開けを告げました。
2.9リッターDOHCエンジンをキャビン後方に横置きし、その下に5速ギアボックスを配置する構造は、2+2シートレイアウトを可能にしました。
この設計によりフェラーリは、ランボルギーニ「ウラッコ」といったライバルに真正面から挑むことができたのです。さらに開発段階ではF1チャンピオン、ニキ・ラウダ氏がテストに参加し、その優れたハンドリングと操縦性を高く評価したことでも知られています。
今日では308GT4は、優れたドライバビリティを持つクラシック・フェラーリとしてだけでなく、308/328、F355、360モデナへと続くV8モデルの原点として再評価されています。
そんな極上の1974年式ディーノ308GT4、5万1750ユーロ(1ユーロ=177円換算で、日本円で約916万円)で落札されました。
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