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“エンジン搭載アルピーヌ”の終着点! 生産終了を控えたミッドシップスポーツ「A110」で実感した“軽さとしなやかさ”が生む走る楽しさとは?

エンジン搭載の“アルピーヌの最終章”を車山高原で味わう

「今、好きな新車を1台もらえるなら、何を選ぶ?−−クルマ好きの間の会話で盛り上がるそんな質問を投げかけられたら、筆者(工藤貴宏)が選ぶモデルは決まっています。アルピーヌ「A110」一択です。

 アルピーヌとは、フランスに本拠を置くルノー系のスポーツブランドであり、「A110」は同ブランドにおいて、少し前まで唯一の生産車だったピュアスポーツカー。1960年代から1970年代にかけてモータースポーツで名をはせた、元祖「A110」の後継モデルです。

 現代の「A110」は、専用設計のシャシーに4気筒ターボエンジンをミッドシップ搭載。そのスペックは、1.8リッターエンジンの最高出力は最大300psと、イマドキの高性能スポーツカーとしてはひかえめですが、何よりすごいのが車両重量。通常モデルで1120~1130kg、軽量モデルはわずか1090kgと“現代のライトウェイトスポーツ”と名高いマツダ「ロードスター」に迫ります。

 そんな現代の「A110」が、ついにその歴史にピリオドを打つことになりました。正確にいえば、少し前からそういったウワサが流れていたのですが、アルピーヌから正式に生産終了の案内が出たことで、現実のものとなってしまったのです。

 今回、そんな「A110」の3バージョンを、長野県の車山高原で乗り比べることができました。きっと今回の試乗は、3台を同じ条件で乗り比べられる最後の試乗機会になるかもしれません。

生産終了が発表されたアルピーヌ「A110」シリーズを車山高原で試乗
生産終了が発表されたアルピーヌ「A110」シリーズを車山高原で試乗

 なぜ、舞台は車山高原だったのか? アルピーヌとは“アルプス”に由来するブランド名で、アルプスの山道を気持ちよく駆けぬけられる性能をイメージしてつけられたもの。そして、試乗会を主催したアルピーヌ・ジャポンによると「車山高原はフランスのワインディングロードに雰囲気が似ているから」だといいます。

 正直なところ、「A110」は2026年6月をもって生産終了とアナウンスされていますが、すでに新規でオーダーできる枠はわずか。そのほかアルピーヌ・ジャポンは、日本市場向けに最後の限定車として「ブルー アルピーヌ エディション」を用意し、「A110」を30台の、「A110 GTS」を30台の、そして「A110 R 70」を10台という計70台の枠を確保しているものの、そもそも少量生産のスポーツカーである上に駆け込み需要が相当入っているので、この先、新車で手に入れるのは困難になるかもしれません。

 つまり、メディア向けに試乗会を開催したところで、この先、そう多くの台数を上積みできるわけではないのです。「A110」の走りをメディアの人間の記憶に強く焼きつけてもらいたいという思いだけで試乗会を開催したアルピーヌ・ジャポンの、「A110」に対する並々ならぬ思いが伝わってきます。

 車山高原での「A110」シリーズのドライブは、それはそれは素晴らしい体験でした。夢のようなひととき、といっていいでしょう。

 とにかく楽しくて、心地よくて、そして気持ちいい。ピュアスポーツカーだからといってドライバーにテクニックを要求するのではなく、誰が乗ってもそのスキルに応じた楽しさを引き出せるのが「A110」の魅力です。

生産終了が発表されたアルピーヌ「A110」シリーズを車山高原で試乗
生産終了が発表されたアルピーヌ「A110」シリーズを車山高原で試乗

 ミッドシップと聞くと、カミソリのように鋭いハンドリングで究極のコーナリング体験を味わえる一方、ちょっとしたミスがスピンを生むような表裏一体の世界をイメージするかもしれません。

 でも、「A110」はそうじゃない。何よりコントロール性を重視したチューニングで、252psのベースグレードは絶対的な旋回性能を落としてでも、ドライバーがコントロールしやすいことを最優先した味つけとなっています。

 筆者はかつて、「A110」をサーキットでも試乗したことがありますが、挙動がピーキーといわれるミッドシップながら、プロドライバーのような巧みな技術を持たない筆者でも、スピンすることなくテールスライドを楽しめる“懐の深さ”に感動しました。

 スタビリティコントロール機能をオフにしても、まるでよくできたFRスポーツカーのようにコントローラブルだったのです。

 上級グレードとなる「A110 GTS」は、従来の「A110 S」に組み込まれていた“シャシースポール”と300psのエンジンを組み合わせ、従来の「A110 GT」と同様の上質なインテリアを組み合わせたモデル。サスペンションはやや締め上げられています。

 そして、究極といえる存在が「A110 R」。大きなリアウイングを始めとするレーシーなスタイルは、ボンネットやルーフだけでなく、リアのウインドウガラス部までカーボン化して軽量化。

 強化されたサスペンションにはレース直系のショックアブソーバーを組み込んでいるのも見逃せないところで、現在は最終仕様として「A110 R 70」が用意されています。

NextスポーティBEVの専門ブランドとなるアルピーヌの未来は?
Gallery 【画像】これが終着点…“エンジン搭載アルピーヌ”最後の「A110」美しいボディと走りの勇姿を写真で見る(30枚以上)
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