イメージどおりの“真のアルピナ”の実力とは? カーマニアが夢見るE36型「B6 2.8/2リムジン」は何がスゴいのか?【今こそ乗っておきたい名車たち】
言葉を失うほどの性能……その後のアルピナとは全く違う
2003年のある日、ドイツ車専門誌の編集記者だった私(伊達軍曹)は、BMW「3シリーズ」の特集記事取材のため、埼玉県のアルピナ専門店に赴きました。当時、BMW「3シリーズ」といえば、まだE46型が新車で販売されていた時代。その前身であるE36型も、まだまだ中古車として旬だった頃の話です。
店に到着して最初に試乗したのは、アルピナ「B3 3.0/1リムジン」でした。E36型「3シリーズ」をベースとするアルピナの中期型です。
特に何も感じなかったというと、さすがにやや大げさですが、さほど感銘は受けませんでした。
そしてその後、「B3 3.0/1」の前身に当たる「B6 2.8/2リムジン」に乗り換えたのですが、これが衝撃的でした。こんな表現をすると各方面から怒られそうですが、牛丼と牛フィレステーキくらい2台は異なっていたのです。
ドアの重み、5速MTの節度感とキレ感、2.8リッター直6DOHCユニットの美しい吹け上がりと、それがドライバーにもたらす恍惚感。そして、操舵に対するフロントタイヤと車両全体の反応などなど。「B3 3.0/1」とはまるで異なっていたのです。
試乗を終えて店に帰庫した私は、感動のあまり半ば言葉を失いながら、当時の販売店社長に問うたのです。「こ、これは……?」と。
ほとんど問いにもなっていない言葉ですが、社長はニンマリと笑い、私に教えてくれました。「分かったでしょ? これが“本当のアルピナ”なんだよ」と。

アルピナ車というと、「ピストンやコンロッドなどの重量公差を極限まで減らし、生産効率を無視してほぼ手づくりで……」というパブリックイメージがあると思います。それはもちろんそのとおりですが、「皆がイメージするとおりのアルピナ像」が、いつまでも完璧に継続されるわけではありません。
人間が寄る年波に勝てないのと同様、どんな企業も押し寄せる合理化の波にはあらがえないことがあります。そのため、1993年に発売された「B3 3.0/1」以降、アルピナもある程度の生産合理化とコストダウンをおこなわざるを得なかったようなのです。
その結果、2003年の私は「B3 3.0/1リムジン」に試乗しても、特に感銘は受けず、「まぁ、フツーだな」と思ったわけです。
しかし、その後に乗った「B6 2.8/2リムジン」は、アルピナが、まだパブリックイメージどおりの製造方法でクルマをつくっていた時代の作品。それゆえ、その後のさまざまなモデルとはまるで異なる印象を、ドライバーは感じ取ることができたのです。
そんな素晴らしい1台を手がけたアルピナ・ボーフェンジーペン社と、それを中古車として見事に仕入れた販売店社長に「お見それしました」と一礼。私は販売店を後にし、編集部に戻ったのでした。
あの日、試乗した中古車の「B6 2.8/2リムジン」の価格は覚えていませんが、おそらく200万円とか250万円とか、そのくらいだったと思います。
あの衝撃から約22年。時は矢のように流れ、アルピナは2025年12月31日をもってBMWへ商標を譲渡。これにより、創業以来60年に渡って生産されてきたアルピナ車も、最終モデルの受注・生産を終了しました。
私に“本当のアルピナ”を知る機会を与えてくれた中古車店社長は亡くなり、私もすっかり中年になりました。同時に「B6 2.8/2リムジン」の流通量も見事に減少。といっても、日本には元々50数台しか正規輸入されなかったようなので、仕方のない話ではありますが、今では1~2台くらいしか流通していない状況となっています。
価格はほとんどが「応談」のため、正確なところは分かりませんが、5速MTの上物であれば1000万円くらい――といったところでしょうか。
私はまだまだアルピナ「B6 2.8/2リムジン」を手に入れることをあきらめてはいません。いつの日か極上モノを再び発見できることを夢見ています。
そして、その車両の価格がいくらであってもクールに購入できるよう、こうして日々、一生懸命、仕事にいそしんでいるのです。
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