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ポルシェの“デザインの舞台裏”に日本人がいた! 第一線で活躍するカーデザイナー山下周一さん語る「ポルシェらしさ」の源泉とは?【The Interview】

人の手だけが生み出せる“ポルシェらしい”デザインとは

 ポルシェへ移籍してから20年が経った今、エクステリアデザイナーの視点から見たポルシェ車のデザインのキーポイントはどこにあるのでしょう? また、デザイナーとしての難しさはどのような点なのかについてもうかがいました。

「『911』はいわゆる丸目、『タイカン』は横長の角目といった具合に、モデルごとにキーとなるデザイン要素は異なりますが、いずれも絶対にポルシェに見えなければいけないのです。ディテールの形状だけでなく、プロポーションであったり面の処理であったり、こうした部分でポルシェらしさを創出していくのは非常に難しい作業で、絵で表現するのは簡単ではありません。そこでポルシェでは、時間をかけてクレイモデルをつくっています」

 クレイモデルとはその名のとおり、工業用粘土によって制作される試作モデルで、ポルシェでは段階に応じて、1/3スケール、1/1スケールを製作するそうです。しかし、クレイモデルは手間や時間がかかることから、現在ではCADやCGなど、画面上で形状を確認し、こうした作業をおこなわないメーカーも存在します。

「もちろん、その方が時間を節約できますし、制作費も抑えられます。しかし、ポルシェの場合、大変な作業ではありますが、デザイナーのアイデアを熟練したクレイモデラーとともにカタチにしていくのが欠かせない作業となっているのです。

 デザイン開発の段階で目をつむって触れてみたり、クレイモデルに“ダイノック”という検討用フィルムを貼り、外光の下で光と影の生じ方を見たりと、さまざまな試行錯誤や切磋琢磨を経てカタチにし、それを数値化しています。

山下周一さんが手がけたポルシェのショーモデル「ミッションX」のデザイン工程のワンシーン
山下周一さんが手がけたポルシェのショーモデル「ミッションX」のデザイン工程のワンシーン

 決して『できない』とはいいませんが、現段階でこうした工程なしにポルシェらしさを生み出すのは難しいと思います。人の手には、なんらかの力があるんでしょうね。クラフトマンシップといいますか、手触り、皮膚感覚を用いてクルマのサーフェスをつくっていくことが、ポルシェらしさにおいては重要なのです」

 そんな中で、“カーデザイナー山下周一”としての個性は、どのように表現されるのでしょうか?

「特別に意識していなくても、自らが絵を描いて、モデラーと一緒につくれば、自然と表現されるものだと思っています。例えば、現行型であるタイプ992の『911』は、フェイスリフトの際、フランス人デザイナーが担当したのですが、全体的にちょっとやわらかい感じといいますか、フランスっぽいテイストを感じませんか? 結局、特別に意識しなくても、デザイナーの個性は勝手に現れるんじゃないかと、僕は思っています」

 ちなみに、ポルシェは展開しているモデル数こそ多くないものの、フェイスリフトや派生車種についてもデザインコンペがおこなわれ、担当デザイナーが決定するといいます。

 では最後に、山下さんにとってのポルシェでの代表作をうかがってみました。

「まずは、タイプ991の後期型、なかでも『911GT3』と『911GT3RS』ですね。あとは2023年に手がけたショーモデル『ミッションX』。この3台ですね」

「ミッションX」は、「ポルシェスポーツカー75周年展」で発表された電動のコンセプトモデル。ハイパーカーの将来像を示す存在であるとともに、近い将来の量産化についてもウワサされています。山下さんにとっても思い入れのあるモデルということで、意気込みのほどがうかがえます。

「『911』はポルシェというブランドにおけるコアモデルですから、可能なら次期モデルにも挑戦してみたいですね。そしてもし、『ミッションX』のプロダクションモデル化にゴーサインが出た場合は、ぜひとも携わってみたいと思っています」

 将来的には「高校や大学でデザインを学びたいという人がいれば力になりたいし、子どもたちに『デザイナーになりたい』という夢を持ってもらえるよう後押ししたい」と話す山下さん。

 その語り口は終始おだやかで控えめでしたが、言葉の端々から寡黙に夢を追い続け、実現させた方ならではの優しさと情熱を感じることができました。それはまさに、ポルシェのDNAにも通じる“夢を実現する力”だと感じました。

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