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マツダ車の「教習車や道路パトロールカー」なぜ増えてる? “縁の下の力持ち”マツダE&Tが手がける特装車と新車開発の舞台裏【Behind the Product#37】

“マツダの新車開発”を支えるエンジニアリング事業

 その強みとは、同社の大黒柱であるエンジニアリング事業です。多くの従業員が属すこの事業とは、街を走るマツダ車の新車開発を支えること。マツダ車の開発プロセスのほぼすべてにマツダE&Tが関わっており、話を聞く限り「マツダE&Tなくして現在のマツダ車は成り立たない」といっても大げさではありません。

 一例として挙げておきたいのが、新車開発における安全性確認の要ともいえる衝突試験の多くを、マツダE&Tが担当しているということ。マツダ本体からの信頼の厚さを物語るエピソードです。

 その分、マツダ車の構造や電子制御に関する知識も社内に蓄積されており、「車両を隅から隅まで知り尽くしていること」が、特装車開発の面でも武器になっています。

 マツダ直系としての情報量の多さに加え、新車開発からのフィードバックを受けられる点も大きな強みです。

 緊急車両の提案時には、求められる仕様を盛り込んだ完成車の内外装イメージをCGで提示できるため、ユーザー側も“納車後の姿”を具体的にイメージしやすいというメリットが。結果、実際に使い始めてから「思っていたのと違う」というトラブルを減らせるわけです。

 さらに、新車開発で培ったノウハウを活かし、架装状態での機能や安全性の確認も実施。緊急車両の開発では、完成車と同等の荷重をルーフや荷室に載せてテストコースで走行試験をおこなうことで、走る・曲がる・止まるの基本性能をチェックしています。

マツダE&Tでは道路パトロールカーを始めとする緊急自動車の架装も手がける
マツダE&Tでは道路パトロールカーを始めとする緊急自動車の架装も手がける

 歩行者保護を考慮した架装や、標準装備となりつつあるADAS(先進運転支援システム)の作動確認も同様。図面上での検証だけでなく、リアルワールドでのテストを重ねるのは、メーカー直系ならではのこだわりといえるでしょう。

●サイバーセキュリティ時代の“特装車”に求められるもの

 マツダE&Tによると、昨今、緊急自動車の世界で大きな課題となっているのが、サイバーセキュリティおよびソフトウェアアップデートの国際基準に対応した新車への架装だといいます。

 市販車の世界でも、昨今、後づけされた電子機器が原因で車両機能に不具合が生じ、最悪の場合、走行不能に陥るトラブルが問題になっています。

 特に、電子機器が多く追加される緊急自動車では、そのリスクはなおさら深刻。いまや当たり前となったドライブレコーダーでさえ、配線の取り回し次第ではクルマの機能障害につながりかねないといいます。

 また、装着直後は問題なくても、後日、車載通信機によるソフトウェアアップデートをきっかけに、翌朝クルマが動かなくなった――というケースも実際に起きているのだといいます。

 その点、マツダE&Tは新車開発に携わっているため、現行車だけでなく今後採用されるソフトウェアアップデートも見据えた機器取りつけが可能。緊急車両の生命線ともいえる、業務中の安全性と信頼性の確保につながっています。

 決められたメンテナンス日以外、故障が業務に大きな影響を及ぼしかねない緊急自動車にとって、これは非常に重要な要素です。

 もっとも、クルマを知り尽くしているからこそ、新車開発と同様のプロセスで特装車も手がける結果、どうしても手間がかかってしまい利益率が高くないのだとか。それでも、自分たちの仕事が多くの人々の安心・安全を支えているという事実が、現場のモチベーションになっているといいます。

* * *

 このように、特殊な企業に思えるマツダE&Tですが、実はクルマ好きにとって身近な存在でした。

 かつて2代目「ロードスター」で限定販売されたターボモデルやクーペを手がけていたほか、最近では「マツダ スピリットレーシング・ロードスター 12R」の製造工程の一部も担当。そして、「クラシックマツダ」がおこなう初代NA型「ロードスター」のレストア作業に携わっているのも、マツダE&Tのスタッフたちです。

 特別仕様車や特装車の開発・製造は、決して楽な仕事ではありません。しかし、クルマを愛する人々が集い、新車開発と同じ目線でクルマと向き合うからこそ、“難しいクルマ”であっても安定して世に送り出すことができる――。工場見学を終えた後、マツダE&Tという企業の姿を改めてそんなふうに感じたのでした。

Gallery 【画像】超カッコいい! “縁の下の力持ち”マツダE&Tの仕事ぶりを写真で見る(30枚以上)
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