マツダ車の「教習車や道路パトロールカー」なぜ増えてる? “縁の下の力持ち”マツダE&Tが手がける特装車と新車開発の舞台裏【Behind the Product#37】
“縁の下の力持ち”の仕事ぶりを工場見学で実感
近年、自動車教習所の教習車や道路パトロールカーを始めとする緊急自動車などで、マツダ車を見かける機会が増えています。そうした“特別なマツダ車”を手がけているのが、マツダ直系の子会社であるマツダE&Tです。
一部のクルマ好きには特装車メーカーとして知られる同社には、実はマツダ全体を支える“縁の下の力持ち”という側面もあります。今回はそんなマツダE&Tの特装車開発の現場と、マツダとの深い関わりについてご紹介しましょう。
マツダE&Tは従業員1370名を抱えるマツダの100%子会社で、マツダ本社の敷地内を本拠としています。自社工場も構えており、そこでカスタマイズ事業による特装車の開発・製造をおこなっています。
特装車というと縁遠いクルマに感じるかもしれませんが、実は意外と身近な存在。手動運転装置つき車両、助手席リフトアップ車、車いす移動車といった福祉車両や、自動車教習所の教習車などが代表例で、それらの開発から生産までを一手に担っているのがマツダE&Tなのです。
同社の特装車で特徴的なのは、新車と同じように工程分けされた生産ラインで組み立てられていること。実際の生産ラインでは、需要の多い福祉車両や教習車が、まさに流れ作業で次々と生産されていました。
その一例である教習車は、タイで生産される「マツダ2」のセダンがベース。広島に運ばれた後、マツダE&Tによって教習車用の専用部品が架装されていきます。

マツダE&Tで月間製造台数が最も多いのは、軽スーパーハイトワゴンの車いす移動車です。リアシートからラゲッジスペースにかけてのスペースを改造し、車いすのまま乗れるようにしたモデルで、フロア後部は傾斜つきの専用構造へと変更。リアゲートには一体式の折り畳みスロープが備わり、車いす乗降用の電動ウインチも装備されています。
この車いす移動車は、ベース車に専用部品を取りつけるだけでなく、ボディ後部のカットや溶接、塗装といった大がかりな作業も必要とします。部品の組みつけなどには手作業の工程もありますが、溶断・溶接・塗装といった工程の多くは自動化されており、その光景は新車の製造ラインをコンパクトに縮小したかのようです。
特装車用の部品も同じ工場内で製造されており、金属の曲げやプレス、溶接といった加工設備も整っています。
●マツダSUVがベースの“緊急自動車”と新たな柱
そんなマツダE&Tが最近、力を入れているのが、マツダのSUVをベースとした緊急自動車です。
元々カスタマイズ事業は、商用車をベースとする冷凍車や箱バンなどの架装をビジネスの柱としていました。しかし、2020年にマツダ製「ボンゴ」の生産が終わり、マツダの商用車がすべてOEM供給に切り替わったタイミングで、それら架装車の製造も終了。そこで新たなビジネスの柱として、乗用車の架装に注力する決断を下したといいます。
その主力となるのが、マツダのSUVをベースとする緊急自動車です。道路パトロールカー、消防指揮車、血液運搬車、河川パトロールカー、ドクターカーなど、多岐にわたる車両が含まれます。
これらは、それぞれの業務に最適化された装備や機能が求められる“はたらくクルマ”。開発・製造には相応のノウハウが必要になります。
ここではその一例として、高速道路の維持管理や事故対応を担う道路パトロールカーを見てみましょう。
道路パトロールカーは、専用のカラーリングに加えて、ルーフ上の警告灯や起伏式表示装置など、多彩な専用装備が与えられます。車内には無線機、拡声用の機器、専用装備の操作パネルなどが追加され、後部にはさまざまな備品を積み込むためのスペースも必要です。
一見したところ「マツダSUVをパトロールカー仕様にしただけ」に映るかもしれませんが、中身には大きく手が加えられています。
特に驚かされるのが、ルーフに載る起伏式表示装置や警告灯など一式の重量が200kg以上にもなるということ。さらに、ラゲッジスペースには200kgオーバーの機材を積むこともあるといい、その負荷は相当なものになるといいます。
その上で、年間18万km、車両入れ替えまでに50〜60万kmも走るケースがあるという過酷な使用条件が加わります。当然、稼働率は高く、その条件に耐えうるだけの信頼性が求められます。
加えて、道路パトロール会社の車両は地域ごとに使用環境が異なるため、規定もバラバラという複雑さ。それでもマツダE&Tが緊急自動車ビジネスに挑めるのは、自社の“強み”を活かせるからにほかなりません。
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