シャークはなぜ“ダイソン一強”を崩せたのか? 新コードレス掃除機「PowerClean 360 PRO」に見えた日本市場攻略の本質【家電で読み解く新時代|Case.46】
口コミで売れる家電には、必ず理由がある
家電の世界では、広告だけでヒットを長続きさせることは難しい。
特に掃除機のような生活密着型の家電は、使った人の実感が非常に重要になる。軽い。よく吸う。ゴミ捨てがラク。髪の毛が絡みにくい。家具の下に入りやすい。壁際がきれいになる。そうした小さな実感が、家族や友人への口コミになり、店頭での納得感になり、レビューとして積み重なっていく。
シャークが日本でここまで存在感を高めた理由も、そこにあると筆者は考えている。
もちろん、店頭戦略やマーケティングの巧さもある。日本での認知が低かった上陸当初から、実際に触ってもらうこと、使い勝手を体験してもらうことを重視していた。
コードレス掃除機は、写真やスペックだけでは伝わらない。持ったときの重さ、ヘッドの動き、ゴミ捨てのしやすさ、家具下に入る感覚。そうした体験こそが、購入の決め手になる。

だが、最終的にブランドを押し上げるのは、使った人の納得感だ。
シャークは、ユーザーの不満を拾い、それを製品に反映し、さらに次の不満を見つけて改善する。そのサイクルを速く、愚直に回してきた。だからこそ、口コミが積み重なり、売り場での存在感が高まり、結果として“ダイソン一強”と見られていた市場の構図を崩すことができたのだと思う。
これは、家電メーカーに限らず、あらゆる企業に通じる話でもある。
起業家として見れば、シャークの強さは「顧客理解を開発に直結させる組織力」にある。顧客の声を聞く企業は多い。しかし、その声を本当に製品の形に落とし込める企業は限られる。さらに、それを毎年のように続けられる企業はもっと少ない。
シャークは、それをやっている。

シャークは“メーカーの鏡”である
PowerClean 360 PROは、確かに高性能な掃除機だ。
吸引力は前モデル比で20%高まり、360°クリーニング性能も進化した。壁際、床の溝、家具の下、カーペット、そして掃除機を手前に引いたときのゴミまで取り残しにくくする。
青色LEDヘッドライト、iQゴミセンサー、フロアセンサー、エッジセンサー、FLEX機能、自動ゴミ収集ドック、フィルターケア機能など、機能面も充実している。
だが、筆者が今回最も強く感じたのは、製品単体のすごさではない。
そこに存在しないだろうと思われた死角まで、死角としてあぶり出す。掃除機の効率や掃除力を、愚直に高め続ける。前モデルの時点で「これはもう十分ではないか」と思わせながら、決して歩みを止めない。ユーザーの声や不満を拾い、それを開発側が形にしていく。
この姿勢こそが、シャークを日本市場で強いブランドへと押し上げた最大の理由だと思う。

2018年の上陸時、シャークはまだ日本に完全に最適化されたブランドではなかった。パワフルではあるが、どこかマッチョで、大味な部分もあった。だが、そこから約8年。日本市場の厳しい目に向き合い続け、製品を磨き続けてきた。その結果、いまのシャークがある。
家電メーカーにとって本当に大切なのは、完成した製品を誇ることではない。完成したと思った製品に対して、まだ改善できる余地があると考え続けることだ。
その意味で、シャークはメーカーの鏡である。
PowerClean 360 PROは、新しい掃除機であると同時に、シャークがこの8年間、日本市場で何を学び、何を積み重ねてきたのかを示す一台でもある。
かつて“ダイソン一強”だった市場で、シャークがここまでの存在になった理由。それは、派手なスペック競争に勝ったからだけではない。ユーザーの暮らしの中にある小さな不満を見つけ、そこから逃げず、次の製品で愚直に解決してきたからだ。
掃除機の新製品を前に、筆者が改めて感じたのは、シャークというブランドの本当の強さは、スペックの派手さではなく、ユーザーに対する誠実さにこそ宿っているということだった。
page
- 1
- 2
VAGUEからのオススメ
ポータブル電源が都心で過ごす夜を変える──Jackeryがかなえる“オフグリッド”なスポーツ観戦【PR】
