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世界No.1ロボット掃除機ブランドは、掃除をどこまで人の手から解放するのか。「Roborock Saros 20 Sonic」が示した現在地

Roborockが語ったのは、掃除機の性能ではなく“暮らしの摩擦”だった

 Roborockは、市場調査会社IDCによるロボット掃除機ブランド売上高第1位、170以上の国と地域で展開し、2026年現在で2200万世帯以上にサービスを提供するロボット掃除機ブランドです。

 今回の発表会では、Roborock APACマーケティング総括のDan Cham氏、Roborock 日本ブランドリードのRyan Ren氏、Roborock 日本PRマネージャーのアンダーソン勇介氏が登壇。新製品の紹介にとどまらず、Roborockという企業が家庭内の家事をどのように捉えているのかが語られました。

 印象的だったのは、Dan Cham氏が、Roborockのイノベーションは研究室から始まるのではなく、「日々の暮らしの中で、人から大切な時間を奪っているものは何か」という問いから始まる、という趣旨のメッセージを語ったことです。

Roborock 日本PRマネージャーのアンダーソン勇介氏。日本向けの製品説明では、Roborock Saros 20 Sonicを「水拭きをとことん追求したフラッグシップモデル」として紹介した
Roborock 日本PRマネージャーのアンダーソン勇介氏。日本向けの製品説明では、Roborock Saros 20 Sonicを「水拭きをとことん追求したフラッグシップモデル」として紹介した

 家電の進化とは、スペックの向上だけではありません。床にこびりついた汚れをこする。ダストボックスのホコリを捨てる。ブラシに絡まった髪の毛を取り除く。モップを洗って乾かす。

 そうした細かな作業は、一つひとつは小さくても、日々積み重なると確実に人の時間と気力を奪っていきます。Roborockが今回打ち出したのは、そうした“掃除の後ろに残る面倒”までテクノロジーで消していこうという方向性でした。

現在購入できる到達点が「Roborock Saros 20 Sonic」

 その思想を、現在購入できる製品としてもっともわかりやすく体現しているのが「Roborock Saros 20 Sonic」です。

 アンダーソン勇介氏は、日本向けの製品説明の中で、同モデルを「水拭きをとことん追求したフラッグシップモデル」と位置づけました。

Roborock Saros 20 Sonicは、水拭きを追求した同社の新フラッグシップモデル。毎分4000回の高速振動と伸縮式モップにより、床を“拭く”だけでなく“磨く”領域へ進化させた
Roborock Saros 20 Sonicは、水拭きを追求した同社の新フラッグシップモデル。毎分4000回の高速振動と伸縮式モップにより、床を“拭く”だけでなく“磨く”領域へ進化させた

 最大の特徴は、水拭き性能を徹底的に高めた点にあります。プレスリリースでは「拭くから、磨くへ」という言葉が使われていますが、この表現は単なるコピーではありません。

 従来のロボット掃除機の水拭きは、どちらかといえば“仕上げ”に近いものでした。吸引清掃の後に、湿らせたモップで床をなでる。日常の軽い汚れには有効でも、キッチンまわりの油汚れや床にこびりついた汚れまで本格的に落とすには、まだ人の手による雑巾がけに分がありました。

 それに対してSaros 20 Sonicは、毎分4000回の高速振動と、Saros 10比で1.75倍の加圧力を備えた高速振動モップを搭載しています。

 さらに振動面積は従来型と比較して27%拡大し、モップ自体が物理的に伸びることで、壁際0mmまで届くとされています。つまり、ただ床を湿らせるのではなく、汚れに対して“こすり洗い”を行う方向へ進化しているのです。

 日本では靴を脱いで生活する家庭が多く、フローリングの足触りや床の清潔感に対する感度が高い。掃除機をかけるだけでなく、床がサラッとしているかどうかを気にする人は少なくありません。

 だからこそ、Saros 20 Sonicの本質は「高性能なロボット掃除機」ではなく、「床の気持ちよさまで自動化しようとする家電」と見るべきでしょう。

Roborock Saros 20 Sonicは、毎分4000回の高速振動でモップを振動させ、床の汚れをこすり取るように水拭きする。従来の“なでる”水拭きから、汚れにしっかりアプローチする“磨く”水拭きへ進化した点が大きな特徴だ
Roborock Saros 20 Sonicは、毎分4000回の高速振動でモップを振動させ、床の汚れをこすり取るように水拭きする。従来の“なでる”水拭きから、汚れにしっかりアプローチする“磨く”水拭きへ進化した点が大きな特徴だ

吸引力、毛絡み対策、段差対応。日本の住環境で効く実用性

 もちろん、Saros 20 Sonicは水拭きだけのモデルではありません。吸引力は最大3万6000Pa。カーペットの奥やフローリングの隙間に入り込んだ微細なハウスダストから、ペットのトイレ砂のような大きめのゴミまで、床面の汚れをしっかり吸引することを目指しています。

 加えて、らせん状の2本のメインブラシと、弧状デザインの非対称サイドブラシによって、長い髪の毛やペットの毛を絡めにくくする構造も備えています。Roborockの社内試験では、一定条件下で毛の絡まり度0%をうたっています。

 ロボット掃除機を使っていて意外に面倒なのが、ブラシに絡んだ髪の毛の除去です。掃除を自動化したつもりが、結局ブラシ掃除に手間を取られる。この矛盾をどこまで減らせるかは、実使用上かなり大きな価値になります。

Saros 20 Sonicは、最大3万6000Paの吸引力に加え、毛絡みを抑えるブラシ構造を採用。長い髪の毛やペットの毛がブラシに絡みにくく、日々のメンテナンス負担を減らす設計となっている
Saros 20 Sonicは、最大3万6000Paの吸引力に加え、毛絡みを抑えるブラシ構造を採用。長い髪の毛やペットの毛がブラシに絡みにくく、日々のメンテナンス負担を減らす設計となっている

 さらに注目したいのが、最大約8.8cmの二重敷居を乗り越える昇降機構です。日本の住宅は、必ずしもロボット掃除機に優しくありません。部屋と部屋の間に段差があったり、ラグやカーペットが敷かれていたり、家具の脚まわりに細かな障害物があったりする。

 ロボット掃除機の性能は、カタログ上の吸引力だけでは決まりません。どれだけ多くの場所へ自力で到達できるかが、実際の満足度を左右します。

 Saros 20 Sonicは、掃除性能を高めるだけでなく、掃除できるエリアそのものを広げようとしている。この発想は、ロボット掃除機における“自律性”の進化と言えます。

最大約8.8cmの二重段差乗り越えに対応する昇降機構も、Saros 20 Sonicの大きな特徴。ロボット掃除機が掃除できる範囲そのものを広げる技術として注目したい
最大約8.8cmの二重段差乗り越えに対応する昇降機構も、Saros 20 Sonicの大きな特徴。ロボット掃除機が掃除できる範囲そのものを広げる技術として注目したい

掃除後の面倒まで消す「New RockDock」

 ロボット掃除機の進化で、もうひとつ見逃せないのがドックです。掃除中の性能に目が行きがちですが、実際に使い続けるうえでは、掃除後のメンテナンスが非常に重要です。

 ゴミを捨てる。モップを洗う。乾かす。汚れた水を処理する。こうした作業が面倒だと、せっかくのロボット掃除機も次第に使われなくなっていきます。

 Saros 20 Sonicに付属する新型ドック「New RockDock」は、100度の高温水でモップを洗浄し、99.99%の除菌をうたっています。その後、55度の温風でモップやドック底部、ダスト経路まで乾燥。さらに自動洗剤投入、最大65日分の自動ゴミ収集、汚れ検知による再洗浄・再清掃にも対応します。

新型ドック「New RockDock」は、100度の高温水によるモップ洗浄、55度の温風乾燥、自動ゴミ収集に対応。掃除中だけでなく、掃除後の後始末まで自動化する
新型ドック「New RockDock」は、100度の高温水によるモップ洗浄、55度の温風乾燥、自動ゴミ収集に対応。掃除中だけでなく、掃除後の後始末まで自動化する

 これは、単に便利機能が増えたという話ではありません。ロボット掃除機の本当の価値が、「掃除をしてくれること」から「掃除に関わる後始末まで含めて人を解放すること」へ移っていることを示しています。

 家電ビジネスの視点で見ても、ここは大きなポイントです。かつての家電は、掃除機なら吸引力、洗濯機なら洗浄力、冷蔵庫なら容量や省エネ性能といった単体性能を競っていました。しかし、いまの高付加価値家電は、ユーザーが面倒に感じる一連の体験全体をどう設計するかが問われています。

 Roborockのドック進化は、まさにその象徴です。ロボット本体だけでなく、掃除という行為の前後まで含めて、家事体験を再設計しているのです。

Saros Roverが示した、ロボット掃除機の次の壁

 今回の発表会では、現在購入できるSaros 20 Sonicとは別に、開発中のコンセプトモデル「Saros Rover」も披露されました。

 アンダーソン勇介氏は、これを階段を自ら上り、家中どこでも掃除できる未来を示すモデルとして紹介しました。まだコンセプト段階であり、製品として発売されるわけではありません。しかし、家電スペシャリストとして見ると、この存在は非常に象徴的です。

発表会では、開発中のコンセプトモデル「Saros Rover」も披露された。階段を自ら上り下りし、家全体を立体的に移動するロボット掃除機の未来像を示す存在だ
発表会では、開発中のコンセプトモデル「Saros Rover」も披露された。階段を自ら上り下りし、家全体を立体的に移動するロボット掃除機の未来像を示す存在だ

 なぜなら、これまでのロボット掃除機にとって最大の制約は「床の上を走ること」だったからです。平面上を賢く移動することはできても、階段を上り下りすることはできない。そのため、複数階の住宅ではフロアごとにロボット掃除機を置くか、人が持ち運ぶ必要がありました。

 Saros Roverが示しているのは、ロボット掃除機が平面清掃から立体清掃へ進む可能性です。すぐに売上につながる製品ではなくても、企業がどんな未来に賭けているのかを市場に示すことができる。起業家の視点で見ると、こうしたコンセプトモデルの披露には大きな意味があります。

 RoborockはSaros 20 Sonicで現在の技術的到達点を見せ、Saros Roverでその先の未来を見せた。これは、プロダクト企業として非常にわかりやすいストーリー設計です。

Saros Roverは、まだコンセプト段階のモデルながら、ロボット掃除機が平面清掃から立体清掃へ進む可能性を感じさせる。Roborockが見据える次世代の家事ロボット像を象徴していた
Saros Roverは、まだコンセプト段階のモデルながら、ロボット掃除機が平面清掃から立体清掃へ進む可能性を感じさせる。Roborockが見据える次世代の家事ロボット像を象徴していた

家電メーカーではなく、暮らしの摩擦を消すロボティクス企業へ

 今回のRoborock発表会を通じて感じたのは、同社がもはや「掃除機メーカー」という枠に収まらなくなっていることです。

 Saros 20 Sonicは、床を吸うだけでなく、磨き、段差を越え、家具下に入り、毛絡みを減らし、掃除後のメンテナンスまで自動化します。Saros Roverは、階段というこれまでのロボット掃除機の限界に挑もうとしています。

 もちろん、すべての家庭に28万円台のロボット掃除機が必要かと言えば、そうではありません。価格は高く、設置スペースも必要です。日本の家庭環境によっては、機能を使い切れないケースもあるでしょう。

 しかし、フラッグシップモデルの役割は、単に多く売れることだけではありません。その企業がどこまで未来を見ているのかを示すことにあります。Saros 20 Sonicが示しているのは、掃除の自動化が“吸う”から“磨く”へ、そして“後始末まで任せる”段階へ進んだということです。

 Saros Roverが示しているのは、ロボット掃除機が平面を走るだけの存在から、家全体を移動する存在へ進もうとしていることです。

 世界No.1ロボット掃除機ブランドは、掃除をどこまで人の手から解放するのか。その答えの現在地が、Roborock Saros 20 Sonicには詰まっています。そして、その先の未来を、Roborockはすでに階段の向こう側に見据えているのかもしれません。

製品概要

価格:28万5780円(税込/希望小売価格)
発売日:2026年6月1日
販売:全国のヤマダデンキ(一部店舗を除く)/ヤマダウェブコム
本体高:約7.98cm
吸引力:最大3万6000Pa
水拭き方式:伸縮式ソニックモップ/高速振動モップ
モップ振動数:毎分4000回
壁際清掃:壁際0mmまで水拭き対応
段差対応:最大約8.8cmの二重段差を乗り越え
障害物認識:Reactive AI 3.0/200種類以上の物体を識別
毛絡み対策:2本のらせん状メインブラシ+非対称サイドブラシ
ドック:New RockDock
モップ洗浄・乾燥:100度高温水洗浄/55度温風乾燥
自動ゴミ収集:最大65日分

Gallery 【画像】Roborockが日本で発表した新フラッグシップモデル「Roborock Saros 20 Sonic」の“スゴさ”を写真で見る(20枚)
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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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