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“日本向け”は仮の姿? 新ルンバ「Roomba Plus 515 Combo」は世界の都市生活者を狙う戦略モデルである

日本の家では、高性能ロボット掃除機が力を出し切れないことがある

 ロボット掃除機は、ここ数年で一気に高機能化しました。吸引力は強くなり、マッピング精度は高まり、水拭きにも対応し、上位モデルでは自動ゴミ収集やモップ洗浄までこなす。もはや単なる“動く掃除機”ではなく、家の床掃除をほぼ任せられる清掃ロボットへと進化しています。

 しかし、ここでひとつ大きな問題があります。いくら性能が高くても、ロボット掃除機そのものが入れない場所は掃除できない、ということです。

 日本の住環境は、欧米の郊外住宅と比べると決して広くありません。家具と家具の間隔は狭く、ローソファやベッド、テレビボード、キッチンキャビネットの下など、掃除したいのに人の手も掃除機も入りにくい場所が多い。

 ロボット掃除機が大きすぎたり、高さがありすぎたりすると、たとえ吸引力やマッピング性能に優れていても、実際には走行できる場所が限られてしまいます。

日本の住まいでは、家具下や壁際など、掃除したいのに手が届きにくい場所が少なくない。ロボット掃除機は高性能である以前に、まず“そこに入れるかどうか”が実力を左右する
日本の住まいでは、家具下や壁際など、掃除したいのに手が届きにくい場所が少なくない。ロボット掃除機は高性能である以前に、まず“そこに入れるかどうか”が実力を左右する

 つまり、日本の住環境では、ロボット掃除機の性能は「どれだけ賢いか」「どれだけ強く吸うか」だけでは決まりません。どこまで入り込めるか。どれだけ生活空間に収まりやすいか。そこが、実際の掃除能力を左右するのです。

 今回発表された「Roomba Plus 515 Combo」は、その問題に真正面から向き合ったモデルです。本体サイズは約30.3×29.8×8.4cm。

 従来のRoomba Plus 505 Comboと比べて、幅は5cm以上小さく、薄さは10.6cmから8.4cmへと大きく低くなりました。体積比では46%コンパクトになっています。

 これは単なる小型化ではありません。ロボット掃除機が日本の家で、本来のパフォーマンスを発揮するための再設計だと見るべきです。

Roomba Plus 515 Comboは、従来モデルより46%コンパクトな設計を実現。標準サイズのロボット掃除機では入りにくかった場所にも走行しやすく、清掃可能範囲を広げている
Roomba Plus 515 Comboは、従来モデルより46%コンパクトな設計を実現。標準サイズのロボット掃除機では入りにくかった場所にも走行しやすく、清掃可能範囲を広げている

Roomba Miniのヒットが示した「小さいこと」の価値

 この流れを理解するには、先に登場したRoomba Miniの成功を振り返る必要があります。

 Roomba Miniは、「Small」「Powerful」「Simple」をキーワードに、日本の住環境に合わせて企画された小型ルンバです。幅24.5cm、高さ9.2cmという世界最小クラスのコンパクト設計に加え、ボタンひとつで掃除を始められるシンプルさ、市販の床拭きシートにも対応する手軽さが特徴でした。

 発表会でアイロボットジャパン代表執行役員社長の山田毅氏は、Roomba Miniが2026年4月時点でロボット掃除機カテゴリの店頭販売数量シェア27%超を獲得し、アイロボット全体の店頭ブランドシェアも60%超となったことを紹介しました。

 購入後満足度も91.5%と高く、発売を知ったときからMiniにしようと決めていたユーザーも多かったといいます。

登壇したアイロボットジャパン代表執行役員社長の山田毅氏。日本の住環境に合わせて企画されたRoomba Miniが想定を超える反響を得たことを紹介し、その成功を受けて誕生したRoomba Plus 515 Comboの狙いを説明した
登壇したアイロボットジャパン代表執行役員社長の山田毅氏。日本の住環境に合わせて企画されたRoomba Miniが想定を超える反響を得たことを紹介し、その成功を受けて誕生したRoomba Plus 515 Comboの狙いを説明した

 興味深いのは、Roomba Miniが日本国内だけでなく、海外にも波及し始めている点です。山田氏は、当初は日本向けに作られたコンセプトだったものの、その好評を受けて欧州各国でも発売が始まり、現地でも高い反響を得ていると語りました。

 これは非常に重要な出来事です。これまでルンバは、どちらかといえば米国の広い住宅を前提にした製品が中心でした。

 それを日本の住環境に合わせて小さくしたところ、逆に海外からも求められるようになった。つまり、日本向けのローカライズが、世界の都市型住宅に向けた新しい解になり始めているのです。

 考えてみれば、これは当然かもしれません。狭い住空間で暮らしているのは日本人だけではありません。ニューヨーク、ロンドン、パリ、バルセロナ、上海のような大都市圏には、コンパクトなアパートメントで暮らす人が数多く存在します。

 ロンドンは英国人口の約13%、パリ首都圏はフランス人口の約18%、バルセロナ都市圏はスペイン人口の約12%、ニューヨーク都市圏も米国全体の約6%を占める規模です。都市に人が集中し、限られた住空間をいかに快適に保つかは、いまや世界共通の課題になっています。

 そう考えると、Roomba Miniは単なる“小さなルンバ”ではありません。日本の住宅事情から生まれた製品でありながら、世界の都市生活者に向けた新たな可能性を示したモデルだったのです。

日本向けに生まれたRoomba Miniのコンセプトは、欧州各国にも展開。コンパクトな住空間で暮らす都市生活者に向けて、“小さくても使えるルンバ”の価値が広がり始めている
日本向けに生まれたRoomba Miniのコンセプトは、欧州各国にも展開。コンパクトな住空間で暮らす都市生活者に向けて、“小さくても使えるルンバ”の価値が広がり始めている

小さいだけではない。今度のルンバは妥協なし

 とはいえ、Roomba Miniには明確な役割がありました。単身者やワンルーム、比較的コンパクトな住まいに向けて、小さく、シンプルに使えることを優先したモデルだったのです。

 一方、今回のRoomba Plus 515 Comboは、そこから一段上のモデルとして位置づけられています。小型・薄型でありながら、清掃力やメンテナンス性には妥協しない。いわば、“小さな上位モデル”です。

 発表会で山田氏が話していた開発背景も印象的でした。山田氏の家庭は、妻、娘二人、ペット三匹。ペットの毛が多い家庭では、Roomba Miniは便利である一方、ゴミがすぐにいっぱいになってしまう。だからこそ、小ささを維持しながら、より高い清掃力を持つモデルが必要だったというのです。

 これは非常に生活者目線の説明です。ロボット掃除機を必要としている人は、必ずしも広い家に住んでいる人だけではありません。

 むしろ、家事に追われ、ペットの毛や髪の毛、ホコリに悩み、家具の下や部屋の隅まできちんと掃除したい人ほど、ロボット掃除機に期待しています。

Roomba Plus 515 Comboは、吸引力の向上だけでなく、ブラシやモップの構造も進化。壁際や部屋の隅など、ロボット掃除機が苦手としてきた場所へのアプローチ力を高めている
Roomba Plus 515 Comboは、吸引力の向上だけでなく、ブラシやモップの構造も進化。壁際や部屋の隅など、ロボット掃除機が苦手としてきた場所へのアプローチ力を高めている

 Roomba Plus 515 Comboは、そうした現実に応えるために作られたモデルです。吸引力はRoomba 105 Combo比で3倍。可動式のPerfectEdgeエッジクリーニングブラシは、角や壁際に向かってブラシを伸ばし、ゴミをかき出します。

 さらに伸縮式のDualCleanモップパッドは、本体の円周の外側まで動き、壁際の水拭きにも対応しやすい構造になっています。

 ロボット掃除機が苦手としてきた「角」「壁際」「家具の下」。そこに届くことを重視している点が、今回の製品の本質です。

高さ8.4cmを実現した、前面LiDARという技術的ブレイクスルー

 では、なぜRoomba Plus 515 Comboは、これほど薄く、小さくできたのでしょうか。

家具や収納のすき間は、日本の住まいでホコリがたまりやすい場所のひとつ。Roomba Plus 515 Comboの薄型化は、こうした“入りたくても入れなかった場所”を清掃対象に変えるための進化でもある
家具や収納のすき間は、日本の住まいでホコリがたまりやすい場所のひとつ。Roomba Plus 515 Comboの薄型化は、こうした“入りたくても入れなかった場所”を清掃対象に変えるための進化でもある

 その鍵を握るのが、前面に組み込まれた「Integrated Line Laser」です。

 一般的な高機能ロボット掃除機では、本体上部に360度LiDARセンサーを搭載するケースが多くあります。これは部屋の間取りを把握するうえで有効ですが、そのぶん本体上部に突起が必要になり、薄型化の制約になります。ロボット掃除機の“帽子”のような部分が、ソファ下や家具下に入るうえで邪魔になるわけです。

 Roomba Plus 515 Comboでは、このLiDARセンサーを天面ではなく、本体前面のウィンドウ部分に統合しました。

 アイロボットが独自開発したIntegrated Line Laserは、マッピング用の水平方向レーザーと、障害物回避用レーザーの2つを同時に出力します。これにより、部屋の間取りを把握しながら、猫の餌皿のような障害物も検知して回避できるのです。

左の従来モデルは天面にLiDARセンサーを搭載しているが、右のRoomba Plus 515 Comboは前面のIntegrated Line Laserに統合。センサー構造の見直しが、高さ8.4cmの薄型化につながっている
左の従来モデルは天面にLiDARセンサーを搭載しているが、右のRoomba Plus 515 Comboは前面のIntegrated Line Laserに統合。センサー構造の見直しが、高さ8.4cmの薄型化につながっている

 つまり、この製品は、単に外装を小さくしたわけではありません。ナビゲーションの根幹となるセンサー構造そのものを見直すことで、高精度なマッピングと障害物回避性能を維持しながら、高さ8.4cmという薄型化を実現しています。

 ここに、家電としての面白さがあります。小型化とは、単に部品を削ることではありません。どの機能を残し、どの機能を統合し、どの位置に再配置するのか。

 そこには設計思想があります。Roomba Plus 515 Comboは、日本の家に入るために、ルンバの構造そのものを変えたモデルだといえるでしょう。

AutoWash充電ステーションで、掃除後の手間まで減らす

 もうひとつの大きな特徴が、AutoWash充電ステーションです。

 ロボット掃除機は、掃除を自動化する家電として広がってきました。しかし使い続けていると、次に気になるのは掃除後のメンテナンスです。ダストボックスを捨てる、モップを洗う、乾かす、水を補充する。こうした作業が面倒だと、結局ロボット掃除機を使う頻度が下がってしまいます。

AutoWash充電ステーションは、自動ゴミ収集、水拭き用の給水、モップ洗浄に対応。掃除を任せるだけでなく、掃除後のメンテナンスまで減らすことで、ロボット掃除機を日常的に使いやすくしている
AutoWash充電ステーションは、自動ゴミ収集、水拭き用の給水、モップ洗浄に対応。掃除を任せるだけでなく、掃除後のメンテナンスまで減らすことで、ロボット掃除機を日常的に使いやすくしている

 Roomba Plus 515 ComboのAutoWash充電ステーションは、自動ゴミ収集、水拭き用の給水、モップ洗浄に対応します。

 ゴミ捨ては最大約3か月不要。モップは約75度の温水で洗浄し、約45度の温風で乾燥します。水拭きロボットで気になりがちな、生乾きのにおいやモップの衛生面にも配慮されています。

 加えて、アプリを使えば外出先からの清掃開始、清掃モードの選択、エリア指定、AutoWash充電ステーションの洗浄・乾燥時間設定、過去10日間の清掃履歴確認なども可能です。掃除機がけだけの日、水拭きまでしたい日、キッチン下だけ集中的に掃除したい日。生活に合わせた細かな使い分けができます。

 ここで重要なのは、Roomba Plus 515 Comboが“高機能を並べた製品”ではなく、“生活の中で使い続けるための製品”として設計されていることです。

本体背面側に備えたモップパッドで、掃除機がけと同時に水拭きも行えるRoomba Plus 515 Combo。床のホコリを吸うだけでなく、フローリングの皮脂汚れや細かな汚れまでケアできる点も特徴だ
本体背面側に備えたモップパッドで、掃除機がけと同時に水拭きも行えるRoomba Plus 515 Combo。床のホコリを吸うだけでなく、フローリングの皮脂汚れや細かな汚れまでケアできる点も特徴だ

「あんしん」まで含めた日本向け設計

 今回の製品で見逃せないのが、「Roomba Premium」という日本独自の特典です。Roomba Plus 515 Comboには、3年の長期保証、プレミアム専用ダイヤル、追加消耗品パッケージが付帯します。購入時に自動的に適用され、別途加入手続きは不要です。

 ロボット掃除機は、いまや10万円を超えるモデルも珍しくありません。Roomba Plus 515 Comboも、アイロボット公式オンラインストア価格は12万9800円(税込)です。

 機能が優れていることは理解できても、初めて購入する人にとっては、設定できるのか、使いこなせるのか、故障時はどうなるのかという不安があります。

 アイロボットジャパンによれば、日本のユーザーは故障時だけでなく、購入直後やセットアップ時に相談することが多いといいます。だからこそ、専用ダイヤルを用意し、最初の不安を減らす。これは非常に日本市場らしい発想です。

 家電は、買った瞬間よりも、使い続ける時間のほうが長い。特にロボット掃除機のように、毎日の暮らしの中に入り込む製品では、初期設定でつまずかないこと、消耗品交換に迷わないこと、困ったときに相談できることが、満足度を大きく左右します。

 Roomba Plus 515 Comboの“日本向け”とは、サイズだけではありません。使い始めから、使い続ける安心まで含めて設計されている点にこそ、その本質があります。

ルンバの進化は、スペック競争から暮らしへの最適化へ

 Roomba Plus 515 Comboは、2026年5月29日に発売およびレンタル開始。価格はアイロボット公式オンラインストアで12万9800円(税込)、ロボットスマートプランによる月額レンタルは6180円(税込)です。

 2026年5月27日から7月6日までは、誕生記念キャンペーンとして9万8800円(税込)で提供されます。

 2026年夏のラインナップを見ると、Roomba Mini Slim、Roomba Mini、Roomba Plus 515、Roomba Max 705V、Roomba Max 705Cと、用途や価格帯に応じた選択肢が整理されています。その中でRoomba Plus 515は、最も薄く、吸引力も強いモデルとして位置づけられています。

Roomba Plus 515 Comboには、日本独自の「Roomba Premium」特典が付帯する。3年の長期保証、専用ダイヤル、追加消耗品パッケージにより、購入後も安心して使い続けられる体制を整えた
Roomba Plus 515 Comboには、日本独自の「Roomba Premium」特典が付帯する。3年の長期保証、専用ダイヤル、追加消耗品パッケージにより、購入後も安心して使い続けられる体制を整えた

 ロボット掃除機の進化は、これまで「どれだけ賢いか」「どれだけ吸うか」「どれだけ多機能か」で語られることが多かった。しかし、今回のRoomba Plus 515 Comboが示しているのは、それだけではありません。

 家に入れるか。家具の下に潜れるか。壁際に届くか。ペットの毛をしっかり取れるか。掃除後の手間を減らせるか。購入後も安心して使えるか。

 こうした一つひとつの課題に向き合うことで、ロボット掃除機はより暮らしに近づいていきます。

 日本の住環境を起点に生まれた小型化の発想は、いまや世界の都市生活者にも広がり得る。Roomba Plus 515 Comboは、日本向けルンバであると同時に、都市化する世界に向けたルンバの新しい答えです。

 小さいことは、妥協ではない。薄いことは、機能を削ることでもない。むしろ、限られた空間で最大限の性能を発揮するための進化である。

 今回の新ルンバは、ロボット掃除機の競争軸が、単なる高性能化から“暮らしへの最適化”へ移りつつあることを示す一台といえるでしょう。

製品概要
製品名:Roomba Plus 515 Combo ロボット + AutoWash 充電ステーション
価格:12万9800円(税込/アイロボット公式オンラインストア価格)
キャンペーン価格:9万8800円(税込/2026年5月27日〜7月6日)
月額レンタル:6180円(税込/ロボットスマートプラン)
本体サイズ:約30.3×29.8×8.4cm
充電ステーションサイズ:約34×33×48.5cm
カラー:ブラック
主な機能:掃除機がけ、水拭き、AutoWash充電ステーション、自動ゴミ収集、温水モップ洗浄、温風乾燥、アプリ連携
主な特典:3年長期保証、プレミアム専用ダイヤル、追加消耗品パッケージ

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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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