なぜ今、日産は「エルグランド」を復活させるのか? 新しい高級ミニバン投入に込められたブランド再建の一手
売れるクルマではなく“ブランドを語る”クルマ
各自動車メーカーのラインナップは、台数を稼ぐモデルとブランドを象徴するモデルとに分かれています。例えば、スポーツカーは販売台数こそ限られていても、人々にこんなに魅力的なクルマをつくれる会社だ、というブランドイメージを印象づける存在となります。
新型「エルグランド」も、そうした役割を担う存在です。
日産は近年、「移動をもっと知的で豊かな体験に変える」という長期ビジョンを掲げ、電動化やAI、自動運転技術を軸としたブランド再構築を進めています。その中で新型「エルグランド」は、第3世代“e-POWER”に加えて、高速道路でのハンズオフドライブに対応する“プロパイロット2.0”など、最新の運転支援技術を採用。日産の先進性を象徴するモデルとして位置づけられています。
つまり、新型「エルグランド」は単なる高級ミニバンではなく、「これからの日産は、こういうクルマをつくっていく」という方向性を示すショーケースでもあるのです。
その紹介に日産が使う“プレミアムグランドツーリングミニバン”という言葉も、興味深いポイントです。
これまで高級ミニバンというと、後席でくつろげることが価値の中心でした。もちろん新型「エルグランド」も、ゼログラビティシートやラウンジのような室内空間など、後席の快適性を重視しています。しかし、それだけではありません。
第3世代“e-POWER”によるなめらかな加速性能、“e-4ORCE”による安定した車両制御など、運転する人も満足できるプレミアムを前面に押し出しています。
これは初代が築いた、日産らしい走りへのこだわりを現代の電動化技術で再解釈したともいえるでしょう。

現在、マーケットには、出来のいい高級ミニバンが多数存在します。だからこそ日産は、豪華さで競うのではなく、ドライバーズカーとしての高級ミニバンという原点へ立ち返ろうとしているように見えるのです。
●ブランド再建は1台のモデルから始まる
企業の経営改革や販売戦略は、数字で語られることが多いもの。しかし、ユーザーがブランドを評価するのは、最終的には1台1台のクルマとなるケースが多いのです。「このクルマに乗りたい」、「このメーカーは面白い」、そう思ってもらえる商品があれば、そのブランドは支持を集めます。
新型「エルグランド」は、約16年間の空白を埋めるモデルであると同時に、日産ブランドの現在地を映し出す1台でもあります。だからこそ、第3世代“e-POWER”や“e-4ORCE”といった最新技術が与えられ、デザインも走りも全面的に刷新されるのでしょう。
もちろん、日産が目指しているのは、かつての栄光を取り戻すことだけではありません。電動化、知能化、そしてブランド価値の再構築という、新しい時代の日産となりたい。それを象徴するモデルとして、「エルグランド」を復権させようとしているのではないでしょうか。
そう考えると、約16年ぶりに生まれ変わる1台に、大きな役割が託されている理由も理解できるはず。そしてもし、新型「エルグランド」が成功すれば、それは1モデルのヒットで終わらず、日産ブランドが再び魅力を取り戻したという評価につながることでしょう。
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