ボタンひとつの涼しさは、どこで生まれるのか。20年ダイキンを使ってきた筆者が、エアコン工場で見た“空気をつくる”現場【家電で読み解く新時代|Case.52】
生成AIは、熟練者の知見を現場に広げる道具だった
今回の見学で、もうひとつ時代性を感じたのが、生成AIを使った設備故障診断システムである。

自動化が進むほど、設備が止まったときの保全力が重要になる。しかし、熟練した保全技術者の育成には時間がかかる。そこで、過去の故障記録や設備構造を生成AIに追加学習させ、経験の浅い保全技術者でも初期診断を進めやすくする仕組みを開発したという。
実演では、保全担当者が対象ラインと設備を選び、異常内容を入力すると、AIが原因候補や確認方法を提示していた。追加質問をすれば、より具体的な確認手順まで返ってくる。
質疑応答では、この取り組みが約2年前から始まり、まず臨海工場でトライアル・導入され、その後インドや米国でも試行中であることも説明された。

AIという言葉は、いまや家電にも工場にもあふれている。だが滋賀製作所で見たAIは、人を置き換えるものではなかった。むしろ、ベテランと若手の経験差を補い、現場全体の力を底上げするための道具だった。
これは、家電の未来を考えるうえでも重要だ。便利な製品の裏側には、便利な工場がある。AIはユーザー体験だけでなく、製品を安定して生み出し続ける現場にも入り始めている。
“うるさらX”が流れるラインで感じた、家電と暮らしの距離
組立ラインでは、ダイキンのフラッグシップモデルである「うるさらX」も生産されていた。筆者の自宅リビングで長年使ってきた「うるるとさらら」の流れをくむモデルが、目の前で一台ずつ完成に近づいていく。その光景は、単なる工場見学以上に、自分の暮らしと地続きのものとして感じられた。

ラインでは、製品を台車上に固定し、部品投入から完成までを進めていく。複数機種を扱うため、作業時間の違いがあっても待ち時間を減らす工夫がされている。作業者の身長に合わせて作業台の高さを3段階に変えられる仕組みもあった。

こうした“らくらく化”は、とても地味だ。だが実は、こういう地味な改善こそが工場の強さを支えている。大きなロボットやAIに目が行きがちだが、働く人が無理なく作業できる高さ、部品が自然に届く配置、認定された作業者が工程に入っているかを見える化する管理。そうした小さな改善の積み重ねが、一台一台の品質につながる。

自動化と人の手作業は、対立するものではない。ロボットが担う工程があり、人が組み立てる工程があり、AIが支える保全があり、からくりのように現場の知恵から生まれる改善もある。滋賀製作所は、そのバランスが非常に面白い工場だった。
ボタンひとつの涼しさは、膨大な仕組みの先に届いていた
今回の工場見学を終えて、家のエアコンを見る目が少し変わった。
リモコンのボタンを押せば、涼しい風が出る。それは、あまりに当たり前の体験だ。だが、その当たり前の裏側には、需要を読み、生産を組み、部品を運び、配管を接合し、漏れを検査し、外観を確認し、設備を保全し、最後に家庭へ届けるまでの膨大な仕組みがある。
しかも、その仕組みは国内だけで完結していない。世界各地で熱波が広がり、冷房が贅沢品から生活インフラへと変わりつつあるなか、ダイキンは市場の近くで聴き、考え、つくる体制を強めている。滋賀製作所は、そのためのマザー工場として、技術と人材と現場の知恵を世界へ広げている。
夏休みの大人の自由研究として、これほど面白いテーマはなかなかない。
「涼しさ」とは、単なる冷たい風ではなかった。
それは、人とテクノロジーがバランスよく組み込まれた現場から生まれる、生活を支えるインフラだった。

製品概要
ダイキン うるさらX(Rシリーズ/2026年モデル)
価格:オープン価格
カラー:ホワイト
タイプ:ルームエアコン(壁掛け型/無給水加湿・除湿・給気/排気換気機能搭載)
対応畳数:おもに6畳〜29畳
電源:単相100V/単相200V
室内機:AN226ARS-W〜AN906ARP-W
室外機:AR226ARS〜AR906ARP
主な機能:無給水加湿「うるる加湿」、さらら除湿、プレミアム冷房、猛暑時スピード気流、プレミアムPIT制御、エコブースト制御、節電自動運転、給気/排気換気、水内部クリーン、AI快適自動運転、室温パトロール、スマホコントロール、タフネス暖房・冷房、高効率スイングコンプレッサー
付属品:かんたん大画面リモコン、加湿ホース[外径φ35mm/内径φ28mm、6m]
備考:9.0kWクラスを除き、目標年度2027年省エネ基準を達成
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