「旅なんて嫌いだ、でも……」アメージング・タイランドをめぐる、狂騒と静寂の5日間トラベルレポート
ー潮風と、祈りと、ムーカタとー(DAY 2)
滞在2日目。
スパイシーな唐辛子と八角の洗礼に、早くも脳髄が慣れてきた。ホテルの朝食ビュッフェで、朝イチからグリーンカレーを胃袋へ流し込む。アローイ。
今日はパタヤのバリハイ桟橋から大型フェリーに乗り込み、約40分の船旅を経てエメラルドグリーンの海が広がる「ラーン島」へ向かう。かつて世界三大ビーチと呼ばれたパタヤビーチも今や透明度が下がり、観光客は綺麗な海を求めて沖合の離島を目指すのだという。
船を降りると、紺碧の海と白浜が広がっていた。照りつける灼熱の日差しから逃げるように海へ飛び込む。これぞリゾート、これぞバカンスだ、タイ、ばんざい!

浜辺はマリンウォーク、バナナボート、パラセーリングの客引きが大声を張り上げる、たくましい商売の博覧会。彼らの熱気を横目に通り抜け、真の目的である「知らない」の深奥へ向かう。
レンタルバイクを借り、ノーヘルでアクセルをひねる。南北4.5kmほどの小さな島。肌を撫でる湿った空気、潮の香りと熱帯の草木が混ざり合った風。目印のない路地で何度も迷子になりながら、急な坂道をグングン登っていく。間違っているかもわからない道を何度も行ったり来たりする、このゆるさがたまらない。
辿り着いた山頂には、災難除けの巨大な高僧像「ルアン・プー・トゥアット」や、岩から彫り出された金運の「サンカッチャーイ像」が鎮座していた。

すぐ下のビーチでは爆音と歓声の中で観光客が歓楽に興じているというのに、目と鼻の先の山腹には、息をのむような静寂と厳かな信仰が根を張っている。この欲望と畏敬の念が平然と隣り合わせにあるシュールさに驚く。
歴史を少し調べて参拝してみると、初めてタイという国を少しだけ身近に感じられたような気がした。……まあ、たぶん気のせいだろう。
傍らのお土産屋には齢70を超える尼のおばあさんが座り、日本の駄菓子屋のようにニコニコと穏やかな笑顔で見守っていた。
ラーン島からパタヤへ戻り、夕食は地元の熱気であふれる大衆食堂へ。お目当ては、地元民が愛してやまない「ムーカタ」だ。

炭火の煙と肉がジージュー焼ける音が店内に満ちている。ドーム型の鉄板で香ばしく焼いた豚肉を、真っ赤な激辛ダレ、ナムジムに潜らせて口へ放り込む。肉の脂が溶け出したスープと相まって、爆発的な美味さが広がる。初日の夜は街の圧に圧倒されていたはずなのに、気づけば地元民のけたたましい笑い声の中で夢中で肉を突いていた。
知らない道、知らない風、知らない祈り、そして知らない激ウマ鍋。
まだ2日目とは信じられない濃密さだ。ゆるりと流れる時間の中に、ビビッドな体験がこれでもかと詰め込まれている。ハッピーホリデー、今日もいい日だった。
パタヤは今日まで。明日からは、バンコクへ戻る。
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