「旅なんて嫌いだ、でも……」アメージング・タイランドをめぐる、狂騒と静寂の5日間トラベルレポート
ー寺院と、大河と、チャイナタウンとー(DAY 3)
滞在3日目。
タイの人々と接していると、時おり、そのたくまし過ぎる商魂に圧倒されることがある。タクシーが相場の倍を吹っかけてくるのはデフォルトだし、雑貨屋では「買う」と言ってもいない品物を気づけばレジ袋に入れられそうになる。いや、入れられた。
しかし、ここは人口の9割以上が熱心な仏教徒の国だ。日常の至るところで、自然と手を合わせる作法が息づいている。この土着の神秘性と、現世利益むき出しの商売気質とのギャップが甚だしい。寺院に行けば僧侶までが「これを持てば運が開ける」とお守りをグイグイすすめてくるのだ。一体どういうことなのか…。
今日はパタヤからバンコクへと戻る日。高速バスと地下鉄を乗り継ぐ。
初日に降り立ったスワンナプーム空港から地下鉄に揺られて1時間、目当てのホテルに到着した。同行するガイドが定宿にしている「クルンカセム シークルン ホテル」。古き良き安宿と聞いていたが、いつの間にか新しくリニューアルされ、モダンな雰囲気をまとっていた。

「だんだん、この周辺も新しい店舗が増えてきてるんだよね」とガイドがこぼす。
たしかに街を歩けば、閉まりっぱなしのシャッター街と、地元民が群がる昔ながらの小汚い(しかし美味い)定食屋、そしてそこに混ざるように真新しいオシャレなカフェが隣接している。まったく統一感のない風景。玉石混交、バンコクという街全体が、今まさに変わっている最中なのだ。
移動だけで終わるかと思いきや、この日は「タイといえば」の寺院巡りへ。ワット・ポーやワット・アルンといった超有名な寺院は、どこも観光客の熱気で溢れかえっている。
途中、川幅200メートルはあろうかという広大で濁ったチャオプラヤ河をフェリーで渡る。エンジンの爆音を響かせながら水路を横断するのも、バンコクの醍醐味のひとつだ。一見するとただの泥水だが、現地の人々にとっては生活を支える神聖な大河だ。

生まれた曜日によって違う守護仏が並び、そしてメインには黄金の巨大仏「プラ・プラターン・イム・ラップ・ファー(微笑みの本尊)」が鎮座している。タイの人々の祈りの時間は、日本のそれと比べてひたすらに長く感じた。彼らは目を閉じ、一体何をそこまで熱心に祈っているのだろうか。
敬虔な仏教徒の顔と、関西のあきんどのようながめつい顔。やはり、そのギャップが埋まらない。ルールと固定観念でガチガチに固まった自分には、到底理解が及ばない。でも、それでいい。

夜になり、ホテルのすぐ裏手に広がるヤワラー(チャイナタウン)へ足を踏み入れた。極彩色のネオン看板が頭上を覆い尽くし、屋台から立ち昇る八角とニンニクの煙が通りを包み込む。昼間の寺院の静寂はどこへやら、ここには底知れない食と人間のエネルギーが渦巻いている。

知らない仏像、知らない作法、知らない祈り、そして熱狂の夜の街。
ゆっくりと流れる時間の中に、粗削りな力強さと、なんでも飲み込んで許容する懐の深さがある。まるで、あの濁ってすべてを包み込むチャオプラヤ河のような包容力が、そこかしこに感じられる。……というのは大袈裟だろうか。
マイペンライ。なんだかんだで、今日も無事に生きている。
明日は……ついに念願のムエタイ体験だ。
page
VAGUEからのオススメ
前作大ヒットのスリクソンアイアンがさらに進化! 「ZXi」シリーズはアマチュアの武器になる【PR】
