711馬力の“最強911”はロングドライブでも快適? ポルシェ新型「911ターボS」で公道へ サーキットでは見えなかった“万能さ”とは
“最強の911”でのロングドライブは快適か?
システム最高出力711ps(523kW)、最大トルク800Nm、0-100km/h加速タイム2.5秒、最高速度322km/h……ポルシェ新型「911ターボS」のスペックを眺めていると、「これだけの性能、どこの公道で使うのだろう?」と思ってしまいます。
筆者(村田尚之)は北海道の「十勝スピードウェイ」で新型「911ターボS」を走らせた際、圧倒的な速さはもちろんのこと、それ以上に、711psという大出力を意外なほど身近に感じられたことが強く印象に残りました。
3.6リッターの水平対向6気筒エンジンに2基の電動エキゾーストガスターボチャージャー“eターボ”を組み合わせた“Tハイブリッド”によって、システム最高出力は先代から61psもアップ。車重は85kg増えていますが、市販車開発の聖地とされるニュルブルクリンク北コースで7分03秒92という、先代より約14秒も速いタイムをマークしています。
では、テストコースを公道へ移したら、どうなのでしょう? そもそも「911ターボ」の歴代モデルを振り返ると、いずれも単なるサーキットスペシャルではありません。
「911」のラインナップには、「GT3」や「GT3 RS」のように、より純粋に速さやドライビングプレジャーを追求したモデルが存在します。対するターボ系は、絶大なパフォーマンスを備えながら、街中から高速道路、長距離移動まで1台でこなすオールラウンダーとして発展してきました。すなわち、超高速グランツーリズモというキャラクターこそ、本来の姿なのです。
ポルシェ自身も、新型「911ターボS」を卓越したパフォーマンスと高級感、長距離走行時の快適性、そして日常の使いやすさを兼ね備えたモデルだと説明しています。

となれば、公道で確かめるべきことは明快です。711psを使い切れるかどうかではなく、それほど途方もない性能を抱えたまま、数百kmの移動を普通にこなせるのか? その1点に尽きます。サーキットでは見えなかったもうひとつの特徴を探るべく、街中や高速道路、そしてワインディングへと新型を持ち出しました。
●高速道路で際立つのは“速さ”ではなく余裕
高速道路へ入り、交通の流れに乗ってしまえば、このモデルが711psものパワーを秘めていることを意識する機会は、むしろ少なくなります。もちろん右足に力を込めれば話は別で、8速のデュアルクラッチ式トランスミッション“PDK”が即座に反応。背後の水平対向6気筒“Tハイブリッド”が目を覚ませば、その先にはサーキットで体験したような猛烈な加速が待っています。
とはいえロングドライブでは、そうした加速力を頻繁に発揮させる必要などありません。むしろ重要なのは、交通の流れが変わったときや前走車を追い越す際、アクセルペダルを大きく踏み込まなくても、欲しいだけの加速力がすぐに手に入るか否かでしょう。
新型「911ターボS」の最大トルク800Nmは、2300〜6000rpmという広い回転域で発生。2基の“eターボ”はターボチャージャー特有の応答遅れを抑えます。サーキットでは、それがコーナーを立ち上がった瞬間のレスポンスやラップタイムにつながりますが、一定速度で巡航するシーンの多い高速道路では、同じ資質が“無理のない余裕”として表れてきます。
速さをアピールするモデルの中には、ドライバーに「もっとアクセルを踏め!」とせかしてくるものもあります。しかし新型「911ターボS」は、流している限り、ことさら自らの性能を誇示しようとはしません。これはGTカーとして、とても重要な要素といえるでしょう。
さらにロングドライブでは、シャシーの印象もサーキットとは違ってきます。新型は専用にチューニングされた“PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)”が標準装備されており、ポルシェは従来型に対して乗り心地が向上したと説明しています。実際、ドライブモードで「ノーマル」をセレクトすれば、足まわりはしっとり程よい硬さで、舗装状態のよくない路面でも不快な振動やノイズを感じることはありません。
加えて、標準装備となる“ehPDCC(電気油圧式 ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)”は“Tハイブリッド”の400Vシステムを利用して作動し、状況に応じてコーナリング時のロールを制御するなど、快適性と運動性能の向上に寄与します。
こうした機構は、サーキットで“タイムを削るための技術”に見えますが、公道では長時間の走行でドライバーを疲れさせないための備えでもあるわけです。この辺りは、短時間の試乗よりも高速道路を淡々と走り続けた方が恩恵を理解しやすいかもしれません。
●空力は“速く走るため”だけのものではない
新型「911ターボS」の面白さは、高性能を得るために投入された技術が、必ずしもハイパフォーマンスのためだけに働いていないところにあります。その好例が“アクティブエアロダイナミクス”です。
フロントには、垂直に配置された“クーリングエアフラップ”と“アクティブフロントディフューザー”を備えており、先代から受け継いだ“可変フロントスポイラーリップ”、伸縮したり傾きが変わったりするリアウイングと連携。走行状況に応じてダウンフォースや空気抵抗を調整します。

しかも、これらすべてのエレメントを最も効率的なポジションにセットした場合、空気抵抗係数は先代比で10%低減されるとのこと。つまり最高速を伸ばすためだけの装備ではなく、通常走行時の効率まで考えて空気の流れを変えているわけです。
しかもドライブモードを「Wet」にすると、アクティブフロントディフューザーを閉じることでブレーキディスクに過度な水しぶきがかかるのを抑え、ぬれた路面での制動性能アップも実現します。
700psオーバー、大径の“PCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)”、“アクティブエアロダイナミクス”と聞けば、どうしても限界性能を連想してしまいます。しかし、公道で長時間つき合ってみると、それらの技術の目的が、速く走らせるためだけのものではないことが見えてきます。天候や交通量、路面状況が変わっても、ドライバーに余計な緊張を強いることなく安定した状態をつくる。それもまた、最新の高性能車に求められる資質なのでしょう。
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