「EVは遠出に向かない」はもう古い? ボルボのフラッグシップSUV「EX90」で900kmのロングドライブでわかった“激変する価値観”とは
240kW超急速充電がEVの常識を変える!?
2日目。ホテルの周りはどんよりとした曇り。昨日、雨で撮れなかったEX90の外観とか内装などを、宿泊したロッテアライリゾートで撮影してから出発する。
このホテルには普通充電が備えられているから、一晩充電していたら朝には相当貯まっていただろうし、試乗会スタッフには昨日の夜に充電をお願いしていたんだけれど、朝見ると同じ30%台。あれ、忘れてたのかな?
ひと通り撮影を終えてから、試乗会スタッフにぜひ立ち寄ってほしいと言われた、ある急速充電の場所へ向かう。国道18号のバイパスからちょっと入った、新潟県上越市にある「FLASH(フラッシュ)」という急速充電は、最大240kWという国内最高水準の超急速充電だ。
このフラッシュ、昨日妙高SAで行った50kWの充電器とは比べものにならないぐらい、ゴクゴクと素早く充電していく。バッテリーに電気が貯まってくると、入れはじめの充電速度よりも徐々に遅くはなるので、単純に50kWの充電器よりいつでも5倍近く早い、というわけではないが、それでも感覚としては「充電をのんびり待つ」のではなく、ガソリンをゆっくりと給油しているイメージに近い。30%台だったバッテリー残量は15分ほどで70%を超えた。
テスラオーナーなら250kWのスーパーチャージャーを使ったことがある人も多いだろう。「早っ」あの感覚だ。

フラッシュの面白いところは、従量課金制だということ。サービスエリアにある急速充電を含め、ほとんどの場所では課金は時間制で、どれだけの電力が充電できたかは関係なかったりする(それはそれでおかしな話)のだが、このフラッシュは2026年9月現在、1kWhあたり44円という、入れたら入れた分支払うシステム。だから別に30分待たなくても、ガソリン感覚で好きな分だけ入れることができる。フラッシュはすでに全国に200以上、47都道府県に設置され、多くの拠点で24時間利用可能なので、今までのEVでの長距離ドライブに対する意識や計画の立て方が、大きく変わることは間違いない。
ただ、ここも注意が必要なところだが、充電スピードって充電器のスペックだけじゃなく、EV側にも委ねられているということは覚えておきたい。EX90は、クルマ側のシステム電圧が800Vと高いために、この超急速充電のメリットを享受できるけど、例えば国産EVの400V系バッテリーだと、いくら240kWの急速充電器でもそこまで早く充電できないし、軽EVなんかは50kW充電器を使った場合と充電速度があまり変わらなかったりもする。だから「こうした充電インフラによってすべてのEVの走り方が変わる」とまでは言い切れないのだけど、でも対応している輸入車のプレミアムEVは、これまでのイメージとはだいぶ違った感覚でドライブの計画を立てることができるだろう。
ちなみにEX90のWLTCモードの電力量消費率は180Wh/kmだから、フラッシュの44円/1kWhで計算すると、10km走った時の電気代は79.2円。全長5m超えの7人乗り大型プレミアムSUVだと考えると、これはかなり優秀だ。
途中、軽井沢の有名なスペイン料理店でランチを頂いて、東京に戻る。雨が降っているけど、車内は相変わらずの静けさだ。
EX90のインパネは、物理ボタンを極力無くしたシンプルでクリーンなデザインで、ボクは好きだ。ウール地のシートの肌触りも心地良い。運転中、目に入ってくる情報が整理されているのも、落ち着いたドライブができる理由のひとつかもしれない。
快適装備の設定など大部分は、14.5インチの縦型センターディスプレイの画面操作で行う。たとえばドアミラーの調整など、ちょっと深い階層に行かないとできないのはやや不便かなと思ったりしたけど、でもこのEX90、一度設定すればキーを持ってシートに座るだけで、ドライバーの着座位置やドアミラー角度などを自動調整してくれる機能があるから、オーナーになればそんなことあまり関係ないもんな、とも思う。あとは画面上のボタンを押した際に、指先にブルッとフィードバックが来ればいいなぁ、と感じるくらい。
そうだ、最上級グレード「ウルトラ」には標準搭載のB&Wのオーディオシステムがあった。上信越道で試してみる。総出力1610W(!)、合計25個のHiFiスピーカーを搭載するB&W(Bowers & Wilkins=バウワース&ウィルキンス)ハイフィデリティ・オーディオシステムで、最近ハマっている「ヨルシカ」の楽曲をかけてみる。
このシステムには、ビートルズやピンク・フロイドがレコーディングを行った伝説のスタジオ「アビーロード・スタジオ」の音響特性を再現したアビーロード・スタジオモードなどもあり、好みに合わせた音を再生できるのだが、ボクが気に入ったのはステージの「屋内ホール」モード。カーオーディオのDSPって、わざとらしい残響音のものがほとんどだったりするけど、EX90ウルトラのB&Wシステムは本当に自然だ。

大学生の息子に誘われ、今年の7月に2人で行った横浜アリーナでのヨルシカのライブツアー「一人称」。その時の感動をまるっと再現したかのような音の作りにはちょっと震えた。アニメ「チ。」のエンディング曲である「アポリア」なんか、ボーカルsuisの伸びやかな高音や息遣い、キタニタツヤの正確で情緒的なベースライン、そして跳ねるようなピアノの音色や、サビに遠くから入ってくるマンドリンの音などが、粒立って耳に届いてくる。変拍子なのに心地いい、ヨルシカの世界観を余すところなく表現していくオーディオ。音量を上げていっても音は割れずに一粒一粒の輪郭が明確になっていくだけ。決して耳障りにならず、身体の芯の部分にずんと届くコンサート会場さながらの音響空間。ぜひこれは、みんな一度ディーラーに行って試してもらいたいと感じたほどだった。
というわけで1泊2日、およそ900km走行のEX90でのロングドライブは終始雨に見舞われていたけれど、そんななかでも存分にその魅力を味わえたと思う。
EVに対してまだ懐疑的な人もいるだろう。でも冒頭書いた通り、クルマの進化は早いし、インフラも徐々に整いつつある。あまり決めつけをせずに、まず乗って素直に感じてみるのも、人生が楽しく豊かになる秘訣のような気がしている。
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