VAGUE(ヴァーグ)

「EVは遠出に向かない」はもう古い? ボルボのフラッグシップSUV「EX90」で900kmのロングドライブでわかった“激変する価値観”とは

EVに対して両極端な価値観

 ここ数年、電気自動車(EV)に対する意見が極端になっている気がしてならない。

 すでに現在アメリカやヨーロッパのプレミアムブランドのEVに乗っている人なんかは「いまの時代、EVじゃなきゃ古い」だとか「EVが世界の潮流だ。日本だけが出遅れている」なんて言ってるイノセさん的な人もいる。

 一方で「EVは走行距離が短いから長距離ドライブは現実的じゃない」とか「やっぱりすぐに給油できるからエンジン車のほうが便利」という声もある。割合的にはこちらの意見のほうがまだ多いんじゃないかなと思う。

 三菱の「i-MiEV」とか日産初代「リーフ」が登場したあの頃は、EVに対してもっと穏やかな意見が多かったように思う。当時のほうがいまよりも急速充電器自体が少なかったり、あっても出力が低かったりしたのに、だ。

 クルマの世界は、技術革新も流行の変化も本当に早い。

 中国やヨーロッパの国々では、補助金のおかげでEVがドンと売れたかと思えば、補助金を縮小した瞬間に販売台数が激減したり、2035年を目標にした「エンジン車の新車販売を実質禁止する」というEU委員会の方針が2025年12月に大幅に見直されたり。かと思えばいま、ヨーロッパでガソリン価格が急騰、スーパーハイオクがリッター380円とかになってしまい、今度は再びEVが売れ始めたり…と、EVをめぐる世界の状況は目まぐるしく変わっているのも事実だ。

 クルマって「EVだから良い」とか「ハイブリッドだから良い」とかというものではない。ぶっちゃけると、EVの中でも運転していてまったく心に沁みないモデルもあるし、令和の今に純エンジン車に乗っても、驚くほど感動するモデルもある。つまりはクルマの面白さや楽しみって、内燃機関とか電気だとか云々言う前に「クルマとしてどうなのか」という、本質的なところに立ち返るんだと思う。

 ただし、EVでしか表現できないクルマの良さ、ってのが、じつは存在しているのも事実ではあるけれど。

ボルボのフラッグシップSUV「EX90」
ボルボのフラッグシップSUV「EX90」

 今回、ボルボEX90で1泊2日、ロングドライブを行うというイベントが開催された。

 EX90は、2026年7月に日本に上陸したばかりの最新の3列7人乗りフラッグシップSUV。スリーサイズは全長5035mm✕全幅1965mm✕全高1740mmという大柄なプレミアムEVとなる。試乗したのは「EX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」という最上級グレードで、車両価格は1399万円。

 旅程はまず東京を出発し、途中諏訪湖畔で昼食休憩、その後は新潟県妙高市にあるロッテアライリゾートまで走行して宿泊。2日目は軽井沢を経由し、東京に戻るというルート。2日間でおよそ900kmを走行するという、EVの試乗会としてはけっこう長丁場のイベントになる。

 当日は、雨。外苑前にあるボルボスタジオ東京を8時すぎに出発する。

 キーを持ち、クルマに近づくとドアハンドルがポップアップされ、ライトが点灯。お迎えされている気分になる。そして運転席に座って、シートベルトをしただけでもうドライブの準備が整うのは、ほかのボルボのEVと同じだ。スタートボタンなどなく、このまま右手側にあるシフトセレクターを下げDに入れてアクセルペダルを踏むだけで、クルマは走り出す。

 外苑料金所から首都高環状線に入り、4号新宿線を経由し中央道を走る。しばらく走って気づくのは、車内の静かさだ。とにかく、車室内に侵入してくるノイズが圧倒的に少ない。

「エンジン音がないんだから、EVが静かなのは当たり前じゃん」と思う人もいるだろう。でも、違う。エンジン音がないからこそ、タイヤが発生するシャー音やゴー音、風切り音なんかが逆に目立ってうるさく感じるEVもじつは多いのだ。

 EX90は、それがない。ピレリのスコーピオンPNCSといって、スポンジ入りのサイレント系SUVタイヤを履いているけれど、きっとそれだけじゃない。これは遮音材の量だけでもなく、ラミネートガラスを採用したことだけでもなく、ボディ剛性から足回りの作りから取付け剛性から何から徹底的に考えられ、トータルでこの静けさを作り上げているのだろう。

ボルボ「EX90」のディスプレイにはまわりの交通状況が映し出されるモードもある
ボルボ「EX90」のディスプレイにはまわりの交通状況が映し出されるモードもある

 あと高速道路を運転していて気づくのは、アダプティブクルーズコントロール(ACC)のアタマの良さ。右手側にあるシフトセレクターを走行中に下げるだけでACCが作動し、あとはハンドルの左手側にある上下スイッチで設定速度を変えるだけ、っていう分かりやすさも良い。

 パイロットアシストと呼ばれるこの機能は、レーダーで360度周りのクルマの存在を常時確認していて、眼の前のモニターには前と左右にいるクルマをリアルタイムで映し出してくれる。バイクがいればバイクの形、トラックならトラックの形まで映してくれるので、雨で視界の悪い今日なんかはとても重宝する。

 1か所、暗いトンネル内で工事をしていて、1車線に規制されていた場所があった。前方を走るクルマはライトを点灯しておらず、いま思えばその行為自体相当危険なのだけど、ボクが先行車を目で確認したのと同じくらいのタイミングで、EX90もレーダーで先行車を認識していた。

 このように、どんな状況でもクルマに見守られていると思うと、いつもよりも安心して運転できることを実感する。もちろん安全運転というものをクルマに委ねすぎるのもアレだけれど、それでも実際、こんなにどしゃ降りなのに、ボクが普段乗っている愛車を運転するときよりも心拍数が下がっているのを感じる。

 交通状況に合わせた加減速もじつに滑らかで、急に進路変更してくるクルマに対しても余裕を持って対応してくれる。車線の中央をキープするハンドル操作のアシストもごく自然だし、先行車がいなくなった場合の加速もスムーズに行い、すべての状況で「急」が付く運転に決してならない。こういう細やかな制御ができるのが、エンジン動力じゃなくてモーター駆動の強みだとも思うけど、じつはEVのなかでもギクシャクするACCもあるので、ここはEX90の自然さを褒めるべきだろう。

Next全長5m超、車重2.7トンの大型SUVを運転する感覚がない
Gallery 【画像】ボルボEX90ってスゴい! 写真で見る(30枚以上)
ロケット級の飛びは本当?新「ZXi RKTドライバー」をアマチュアが本音試打
ネギシマコト
ネギシマコト
VAGUE編集部 副編集長
東京都文京区生まれ。大学卒業後、音楽誌、美術誌(陶芸担当)の編集を経て1995年に自動車雑誌業界に入り、輸入車系月刊誌を中心に、国産車系月刊誌でもクルマのイロハを学ぶ。当初よりタイヤ担当としてほぼすべてのタイヤの試走会に参加し、今年で31年目。 最近のマイブームは鉄道での旅。移動中でもパソコン仕事ができる便利さを今さらながら知り、クルマ業界出身にもかかわらず最近はドライブする機会がめっきり減った。趣味は神社巡り(御朱印帳8冊目)、美術館巡り、落語鑑賞、演劇鑑賞。大の巨人ファン。

page

VAGUEからのオススメ

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

前作超え感じさせる“ロケット級”の飛び実現へ! 新スリクソン「ZXi RKT」ドライバー4モデルの実力を試してみた【PR】

RECOMMEND