揚げないのに“二度揚げ”発想!? ブラウン新型ノンフライヤーで唐揚げはどこまでおいしくなる?
油で揚げない唐揚げは、本当に「唐揚げ」になるのか?
唐揚げは、日本人にとって最も身近な家庭料理のひとつだ。外はカリッと香ばしく、中は肉汁があふれるほどジューシー。子どもから大人まで人気の定番メニューだが、いざ家庭で作ろうとすると、なかなか厄介でもある。
たっぷりの油を用意し、温度を管理しながら肉を揚げる。油は飛び散り、調理後には面倒な廃油処理が待っている。しかも、健康を考えれば脂質も気になる。おいしい唐揚げは食べたいが、できれば揚げ物はしたくない。そんな矛盾を解決する家電が、近年注目を集めるノンフライヤーだ。
2026年10月7日、デロンギ・ジャパンは、ブラウン ハウスホールドの新製品「ノンフライヤー マルチフライ3(HF3030JBK)」を発表した。11月5日から公式オンラインサイトなどで先行発売される製品で、公式オンライン価格は1万7820円(税込)だ。
ブラウン ハウスホールドといえば、ハンドブレンダーの「マルチクイック」シリーズなどで知られるドイツの老舗家電ブランド。機能性と合理性を追求するデザイン思想を受け継ぐ同社が、日本市場で新たにノンフライヤーというカテゴリーに挑戦する。
日本の購入済み割合はわずか6.4%。ブラウンが見いだした市場の可能性
発表会で興味深かったのは、ブラウン ハウスホールドが日本でのノンフライヤー普及に大きな可能性を見いだしていることだ。
同社が紹介した調査によると、脂質摂取を気にする18〜64歳の層で、ノンフライヤーを購入した割合は米国57.2%、中国54.5%に対し、日本はわずか6.4%。調査対象を限定した数字ではあるものの、海外との大きな開きが浮かび上がる。
では、なぜ日本で普及が進まないのか。ブラウン ハウスホールドはその理由のひとつに、従来のノンフライヤーに対する「油で揚げたものほどおいしくない」「食感がパサつく」「焼きムラができる」といった不満があると分析する。
確かに、ノンフライヤーという名称から想像するのは、油を使わないヘルシーな揚げ物だ。しかし、肝心の味がおいしくなければ、いくら健康的でも毎日の食卓には定着しない。

最大90%脂質カットでも、おいしさを諦めない独自技術
そこでブラウン ハウスホールドが投入したのが、独自の「RealAir Technology」を搭載したマルチフライ3だ。本体上部のヒーターと高速ファンによって高温の空気を食材全体に循環させ、表面の水分を飛ばしながら加熱することで、外はカリッと、中はジューシーな食感を目指したという。
メーカーによれば、従来の油で揚げた自家製ポテトとの比較で、脂質を最大90%カットできる。ただし、すべての料理で同様の効果が得られるわけではない。
そんな技術の実力を確かめるため、発表会では料理家の今井亮さんによる「揚げない唐揚げ」の実演が行われた。

料理家が教える「揚げない唐揚げ」をおいしく作るコツ
実演で使われたのは、約300gの鶏もも肉1枚。これを10等分し、しょうゆ、酒、ショウガ、砂糖、塩、こしょうで下味を付けていく。
ここで今井さんが教えてくれた最初のポイントは、調味料を単に絡めるのではなく、肉にしっかり揉み込むことだ。短時間でも味がなじみやすくなり、砂糖には肉の水分を保持する効果も期待できるという。
さらに衣にも工夫がある。薄力粉と片栗粉を同量ずつ混ぜ、肉に薄くまとわせるのだ。粉を厚く付けるのではなく、余分な粉を落とし、鶏皮を広げて均一に付ける。これがカリッとした食感を生み出すコツだという。
下ごしらえした鶏肉をバスケットに並べたら、いよいよ調理開始。ここでも食材同士を密着させず、適度な隙間を空けることが大切だ。高温の空気が食材の周囲を循環するための通り道を確保するためである。

「180℃で13分」の自動調理に加えたプロの“ひと工夫”
マルチフライ3には8種類の自動調理プログラムが搭載されている。今回選択したのは「肉」モード。ボタンを押すだけで180℃・13分に設定される。
しかも予熱は不要。一般的なオーブンのように設定温度になるまで待つ必要がなく、食材を入れたらそのまま調理をスタートできる。
ただし、今井さんの実演はここで終わらなかった。
基本の自動調理だけでも仕上がるが、より唐揚げらしいカリッとした食感と香ばしさを求めるなら、追加で温度を上げて加熱するのがおすすめだという。いわば、揚げ物でいう「二度揚げ」の発想だ。
さらに衣が白っぽく残った場合には、少量の油を表面に塗ることで、焼き色や風味を調整できるとも説明した。実演ではオリーブオイルが使われたが、好みに応じて油の種類を変えることもできる。
この話を聞いて、なるほどと思った。ノンフライヤーとは、何が何でも油を使わないことを目的とした家電ではない。大量の揚げ油を使わず、必要な部分だけに少量の油を補うことで、おいしさと健康面のメリットを両立させる。むしろ、その合理性こそが製品の本質なのだろう。
実演で完成した唐揚げは、こんがりとした焼き色が付き、今井さんが試食すると衣の歯切れのよい音が会場にも伝わってきた。もちろん、油で揚げた唐揚げとの厳密な比較試験ではないものの、熱風調理でも仕上げ方次第で食感を追求できることを示す実演だった。

脂質カットの先にある「ほったらかし調理」の価値
そして、家電スペシャリストとして注目したいのは、もうひとつの価値だ。それが「ほったらかし調理」である。
従来の揚げ物は、調理中に油の温度や揚げ具合を見守る必要があった。一方、ノンフライヤーなら自動プログラムによって加熱を任せられ、油の飛び散りや廃油処理の負担も抑えられる。
マルチフライ3は4.3Lの容量を備え、肉や魚、野菜のグリルから温め直し、お菓子作りまで対応。ノンスティック加工のバスケットとプレートは食洗機でも洗える。ただし、幅26.5cm、奥行36.5cmという設置スペースが必要な点は、購入前に確認したい。
私は長年、海外の家電市場やメーカーの開発現場を取材してきたが、家電が生活に定着する条件は、技術の新しさだけではないと感じている。それまで面倒だった行為を、いかに自然に日常の習慣へ変えられるかが重要なのだ。
事業を展開する立場から見ても、ブラウン ハウスホールドの戦略は興味深い。日本で普及が進まない理由を、単純な認知不足ではなく、味への不満と調理負担という生活者の課題に見いだしているからだ。
揚げない唐揚げが、油で揚げた唐揚げを完全に置き換える必要はない。平日の夕食やお弁当のおかずなど、これまで揚げ物を諦めていた場面で、手軽に作れる選択肢が増える。それだけでも食卓の可能性は広がる。
ブラウン ハウスホールドのマルチフライ3が日本で定着するかどうか。その鍵を握るのは、脂質カットという数字以上に、「これならまた唐揚げを作りたい」と思わせる体験なのではないだろうか。
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