バズる家具は10年後も“いい家具”なのか? 元「SHEIN」日本事業責任者が挑む、新興ブランド「カグ―」の挑戦とは
「高級家具」と「量販家具」の間を狙うCAGUUU
CAGUUUが今回、初となる本格的なメディア向け発表会を開催しました。新しい温熱家具「CAGUUU WARM LIVING」の発表とともに、大きく打ち出されたのが同社の事業戦略です。
CAGUUUが掲げるミッションは「高級家具の民主化」。中村代表が示したのは、日本の家具市場が抱えるある種の二極化でした。
一方にはIKEAやニトリなど、比較的購入しやすい価格でベーシックな家具を提供するマスブランドがあります。もう一方には、優れたデザインや品質を持つものの、ソファひとつで数十万円、場合によっては100万円を超えるような高級家具ブランドやセレクトショップがあります。
その中間を埋めるのがCAGUUUだといいます。
実際にCAGUUUのサイトを見ると、その意味がよく分かります。いわゆる量販家具とは少し違った、造形や素材感に特徴のある“デザイナーズ家具的”な商品が大量に並び、それでいて価格は数万円から購入できるものも少なくありません。

「デザイナーズ家具の民主化」が意味するもの
筆者は発表会後、中村氏本人に「高級家具というより、これまで多くの人が憧れてきたデザイナーズ家具のようなものを、より手に取りやすくするという意味ではないか」と聞きました。中村氏も、その認識を肯定しました。
例えば100万円のソファを10年、20年と使い続ける世界と、豊富なデザインから自分の感性に合った家具を現実的な価格で選ぶ世界では、そもそも価値の置きどころが違います。
CAGUUUが民主化しようとしているのは、少なくとも現時点では、伝統的な意味での「一生ものの高級家具」そのものというより、デザイン性の高い家具を選べる豊かさなのかもしれません。
なぜ安くできる? 生産・流通・販売の3つを変える
では、なぜ価格を下げられるのでしょうか。
中村氏は「生産」「流通」「販売」という3つのコストから説明しました。
まず生産です。高級家具では「Made in Italy」など生産国そのものがブランド価値を形成しているケースがあります。しかし現在では中国をはじめとしたアジアにも、高い製造能力を持つ工場が数多く存在します。
中村氏によれば、同等品質を前提として比較した場合、イタリアやデンマークなどで作るより、中国などで生産する方が大幅にコストを抑えられるケースがあるといいます。
さらに中間の貿易会社や卸などをできるだけ挟まず、工場から消費者へ近い距離で届ける。そして青山などの一等地に巨大なショールームを構え、ブランドプレミアムを作るためのコストもかけない。
つまりCAGUUUの発想は、単純に「安い材料を使って安くする」というものではありません。
高級家具の価格を構成してきた生産地、流通、ブランド、店舗などのコスト構造そのものを組み替えることで、価格を下げようとしているのです。

SHEINから持ち込んだ「小さく作って、売れてから増やす」
そして、ここからが個人的には今回の発表で最も興味深かったところです。
中村氏は東京大学大学院修了後、戦略コンサルティングファームなどを経て、SHEINの日本市場進出を提案。日本事業の責任者として約3年間、事業を育てた経験を持っています。CAGUUUにも、その経験が明確に生かされています。
従来型の家具チェーンでは、新製品を全国の店舗で展開しようとすれば、サイズやカラーも含めて最初から相当量を生産する必要があります。当然、売れなければ大量の在庫を抱えます。そのため商品企画も慎重になり、同時に試せる商品の数にも限界があります。
CAGUUUは逆です。
まず小ロットで商品を投入する。そしてオンラインで反応を見る。

「秒単位」のデータで売れ筋を見極める
中村氏はこの仕組みについて、SHEINの「コアなビジネスモデルの優位性」を参考にしたと明言しました。
ECなら、商品ごとのクリック率や顧客獲得単価などをリアルタイムに近い形で把握できます。中村氏の表現を借りれば「秒単位」です。
そこで「バズりそうな商品」をいち早く発見し、トラフィックや在庫などのリソースを集中する。販売速度を見ながら補充することで、在庫効率も高めます。
ファッションの世界を席巻した、データドリブンな高速PDCA。それを家具へ持ち込もうとしているわけです。

「秒単位」で売れ筋は分かる。でも家具の良し悪しは?
これはビジネスとして非常に合理的です。
筆者自身も会社経営を経験しているので、小さく試してデータを取り、勝ち筋が見えたところへリソースを集中する合理性はよく分かります。大量に作ってから「売れませんでした」では、在庫も資金も寝てしまいます。
しかし、ここで少しモヤモヤしました。家具の価値は、本当にそのスピードで判断できるのでしょうか。
洋服ならワンシーズン着れば、ある程度の評価はできます。しかし家具は5年、10年と使うものです。
ソファのクッションはへたらないのか。椅子の接合部は緩まないのか。テーブルは反らないのか。表面材はどう経年変化するのか。壊れたときに修理できるのか。そして何より、10年後にもそのデザインを好きでいられるのか。
クリック率や顧客獲得単価なら「秒単位」で分かります。しかし、その家具が本当に「いい家具」だったのかという答えには、何年もかかる場合があります。
これはCAGUUUに限った問題ではありません。むしろデータドリブンな商品開発を、耐久消費財へ持ち込む際に必ず突き当たるテーマでしょう。

中国生産は問題なのか? 中村代表に直接聞いた
もうひとつ気になったのが製造現場です。
SHEINという名前を聞けば、どうしても高速・低コストのサプライチェーンを連想します。そこで筆者は中村氏に、中国や東南アジアで低価格かつ小ロット生産を実現する裏側で、製造現場に過度な負担がかかってはいないのかという趣旨の質問をしました。
中村氏によれば、CAGUUUが使っている工場の中には、ニトリや無印良品の商品などを製造している工場もあるとのこと。極端にコストを下げるため小規模な工場へ発注しているわけではなく、「いいものをちゃんと作れる」工場を使っていると説明します。
もちろん、この回答だけで個々の工場の労働環境まで確認できたわけではありません。
一方で、「SHEINと同じなのか」という筆者の問いに対しても、中村氏は戦略は異なると明確に答えました。CAGUUUではリアル店舗も重視し、一つひとつの商品開発にも関与する。一方でSHEINから学んだのは、小ロットで商品を試せることや、中間コストを省く考え方だといいます。
つまりCAGUUUは「家具版SHEIN」をそのまま作ろうとしているわけではない。しかし、SHEINで磨かれた仕組みの一部を家具へ移植している。ここは分けて考える必要があります。

EC企業なのに「3年で100店舗」の理由
さらに興味深いのがリアル店舗戦略です。
CAGUUUは10月9日、国分寺マルイに初の直営店をオープン。約116平方メートルの店内に約30点の商品を展示します。
そして中村氏が掲げた目標は、3年間で全国100店舗です。
オンラインによって店舗コストを削減してきた会社が、なぜ今度は店舗を増やすのか。答えは家具という商品の性質にあります。
ECの写真を見て「格好いい」と思っても、ソファの座り心地や木材・ファブリックの質感、家具そのものの存在感は画面では分かりません。CAGUUUがこれまで量販店内で展開してきた売り場でも、実物を見たユーザーから「写真よりいい」という反応があったといいます。
なお100店舗すべてが大型直営店になるわけではありません。質疑応答では、フランチャイズや量販店内の売り場など、複数の形態を含めて展開する構想であることも明らかになりました。
ECで探し、比較する。リアルで座り、触り、確かめる。そして購入は再びオンラインへ。
100店舗とは販売網というより、家具EC最大の弱点である「触れない」を補う体験拠点網と考えた方が、この会社らしいのかもしれません。

新製品は「家具そのものを暖房にする」グラフェンテーブル
今回発表された新シリーズ「CAGUUU WARM LIVING」も簡単に紹介しておきましょう。
特徴は、セラミック天板の内部にグラフェンを用いた発熱層を配置したこと。一般的なこたつが中央付近のヒーターを熱源とするのに対し、天板の広い範囲を面状に発熱させます。
ラインナップは「グラフェン遠赤外線セラミックこたつテーブル」が税込5万5490円から、「グラフェン遠赤外線セラミックダイニングテーブル」が8万8990円から。
こたつは20~60℃、ダイニングテーブルは20~45℃で温度調節でき、2・4・6・8時間のタイマーも備えます。こたつタイプの電気代は同社試算で1時間あたり約6.7円です。
実物にも触れました。天板にはかなり重量感があり、実際にじんわりと暖かくなることも確認できました。
ただし、短時間触っただけで、この家具の品質や暖房器具としての優劣まで評価することはできません。今回はあくまで、CAGUUUが「デザイン」だけでなく「機能」を家具へ組み込もうとしている一例として紹介するに留めたいと思います。

「バズる家具」は10年後にも“いい家具”なのか
筆者は、CAGUUUが目指す方向そのものには大いに興味があります。
デザイン性の高い家具が手頃な価格になり、消費者の選択肢が増える。それ自体は歓迎すべきことです。既存の家具業界にあった生産・流通・販売の常識を疑い、新しい方法で価格を下げることにも合理性があります。
しかし、「高級家具の民主化」という言葉には、まだ少し引っかかります。
高級家具の価値は見た目だけではありません。素材、構造、仕上げ、職人技、耐久性、補修性、そして長い時間を経ても使い続けられることまで含めて価格が形成されています。
CAGUUUの家具がそこまでを「民主化」できているのかは、今回の発表会では分かりませんでした。だから現時点では、「デザイナーズ家具的な選択肢の民主化」と捉える方が、筆者にはしっくりきます。
ただ、ここから先が面白い。
CAGUUUはオンラインだけで完結せず、実物を確かめるリアル拠点を100店舗規模へ広げようとしています。そして、単に既存の家具を安く届けるだけでなく、今回のグラフェンテーブルのような機能家具にも踏み込み始めました。
SHEINで培われた「速さ」と「データ」の論理は、時間をかけて価値が決まる家具という商品にも通用するのでしょうか。
売れる家具なら、秒単位で分かる。でも、本当にいい家具だったかどうかは、10年後にしか分からないかもしれない。
「高級家具の民主化」が、本当の意味で「いい家具の民主化」になるのか。その答えこそ、これからのCAGUUUを見続けたくなる理由です。

製品概要
「グラフェン遠赤外線セラミックこたつテーブル」
・価格:5万5490円~(税込)
・発売日:10月5日
・サイズ:80×80×40.5cm/120×70×40.5cm
・カラー:ブラック/ウォールナット/ナチュラルウッド
・温度調節範囲:20~60℃
「グラフェン遠赤外線セラミックダイニングテーブル」
・価格:8万8990円~(税込)
・予約開始日:10月5日
・発送時期:11月より順次発送
・サイズ:140×80×72cm/160×80×72cm
・カラー:ブラック/グレー/ホワイト
・温度調節範囲:20~45℃
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