ただの名湯だと思ったら大間違い!? 歴史書や古代文献に“名”が登場する 1000年以上も人々を癒してきた「温泉地」3選
続いては神奈川県と和歌山県に位置する温泉地
●神奈川県「湯河原温泉」
2か所目は、神奈川県湯河原町に位置する「湯河原温泉」です。
湯河原温泉は万葉の時代から湧き出でる名湯とされ、関東最古の温泉のひとつに数えられています。

8世紀に編纂された『万葉集』には、東歌として「足柄の 土肥の河内に出づる湯の 世にもたよらに 子ろが言はなくに」と詠まれており、万葉集全4500首以上の中で唯一、具体的に温泉の湧き出る様子が記述された歴史ある温泉地です。
泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性)であり、肌に優しく包み込むようなやわらかな肌触りが特徴で、古くから傷を癒やす「傷の湯」や「美肌の湯」として高い効能が知られていました。
また、この地域はかつて「土肥(とい)」と呼ばれ、鎌倉幕府を開いた源頼朝に仕えた豪族・土肥実平らが湯治に訪れたほか、近代には夏目漱石や国木田独歩ら多くの文豪に愛されたことでもその文化が継承されています。
温泉街にある「万葉公園」には、赤い鳥居が連なる先に狸が鎮座する「狸福(りふく)神社」が祀られています。
さらに、千歳川・藤木川に沿って広がる温泉街や万葉公園の中には、さまざまな造りの足湯スポットが設けられており、豊かな自然やせせらぎを感じながら散策の合間に疲れを癒やすことが可能です。
●和歌山県「白浜温泉」
そして3か所目は、和歌山県白浜町に位置する「白浜温泉」です。
白浜温泉は、斉明天皇や持統天皇をはじめとする多くの皇族がはるばるこの地を訪れたという歴史が語り継がれており、かつてその地名から「牟婁の温湯(むろのゆ)」や「紀の温湯」と呼ばれていました。

また、『日本書紀』や『万葉集』には、飛鳥時代から奈良時代にかけての天皇や皇族が長期間にわたって滞在した記録が残されています。
たとえば、有馬温泉や道後温泉と並ぶ「日本三古湯」のひとつに数えられ、万葉の歌人たちがその美しい景観と名湯を歌に詠むなど、時代を問わず多くの人々に愛されてきました。
白浜温泉の泉質は、主に塩分を多く含んだナトリウムー塩化物泉や炭酸水素塩泉などがあり、場所や源泉によって異なる特徴を持つ豊かな温泉です。
大きく分けて、海の近くに湧き出し塩分が濃厚な湯と、山側に湧き出すまろやかな湯の2種類が存在します。
塩化物泉は塩分が肌に薄い皮膜をつくるため保湿効果が持続し、湯冷めしにくく神経痛や冷え性のほか、慢性皮膚病などへの適応症があります。
一方の炭酸水素塩泉は、肌の不要な角質や汚れを落とす効果があり、「美肌の湯」として肌をなめらかに整える効果が期待できます。
温泉街には、日帰りで利用できる公共の外湯として、万葉の昔から残る岩風呂の「崎の湯」や「牟婁の湯」など、歴史ある外湯が設けられています。
また、白良浜のすぐ近くなどには無料で利用できる足湯も点在しており、太平洋の絶景や潮風を感じながら気軽に温泉の効能を体感できるのも魅力とされています。
※ ※ ※
今回取り上げた3つの温泉地は、いずれも神話や歴史書にその名が刻まれており、古代の人々も同じように湯の効能を享受していました。
現代の温泉街には、それぞれ独自の泉質を活かした外湯や、観光客が立ち寄れる足湯、展望スポットなどが充実しています。
これらの由緒ある古湯を訪れることで、日本の歴史や神話の世界に触れつつ、地域ごとの特色ある温泉文化を体感することができるといえそうです。
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