ポルシェ「918」のなかでも「ヴァイザッハ」仕様は別格扱い ハイブリッドはコレクターズアイテムになるのか?
新車時の価格を大幅に上回るハンマープライスの理由とは?
ポルシェが自信たっぷりに送り出した918スパイダーのパフォーマンスは、予想どおり別世界のものであった。ポルシェAGの公式データによると0−100km/h加速タイムは2.8秒、最高速度は345km/hに達すると標榜されていたものの、のちに外部のメディアがおこなったロードテストにより、ポルシェの公表値はどちらかといえば控えめなものであることさえ判明する。
しかし「スタンダードの」918スパイダーでは飽き足らないというハードコア志向のカスタマーのために、ポルシェは彼らのホームである「ヴァイザッハ(Weissach)」の名を冠した、さらにスパルタンなパフォーマンスパッケージを用意した。
「ヴァイザッハ」仕様は、車体の基本的なメカニズムは不変ながら、約40kgの軽量化に成功。そのうちのほぼ3分の1は、ヴァイザッハ・パッケージ専用のマグネシウム合金ホイールが達成したもので、ほかにもキャビンの消音材をいさぎよく減らすなどの軽量化デバイスが施されていた。
また、リアディフューザーの大型化やドラッグを軽減するリアウイングレットなど、エアロダイナミクスの面でも数多くの改良がおこなわれている。
さらに、取り外し可能なタルガスタイルのルーフパネルとリアウイングは、レーシングカー由来であることを強調するために、両方ともカーボンファイバーの地肌が見える無塗装とされていた。
ポルシェワークスのテストドライバー兼レーサー、2016年にはル・マンでも総合優勝に輝くマルク・リープ選手のドライブで、2013年9月にニュルブルクリンク・ノルドシュライフェのタイムアタックをおこなった918スパイダーは、まさにこのヴァイザッハ・パッケージ車だった。
この時のチャレンジで、リープ選手はそれまでの記録を14秒以上も短縮する6分57秒をマーク。918スパイダーを、シリーズ生産車両としては史上初の「7分切り」に成功したクルマとして歴史に残すことになった。
●フルラッピングされたコレクターズアイテム
今回紹介する「St.Moritz」オークションに出品された918スパイダー、シャシNo.#0219も、希少なヴァイザッハ・パッケージ仕様車の1台である。ヨーロッパ仕様として219台目に生産され、2014年12月19日にツッフェンハウゼン工場をラインオフ、ドイツ国内にデリバリーされた。
特徴的なマットブラックのボディは、実は新車納車時にラッピング仕上げが施されたもの。その下にはグロスブラックのカーボンファイバー製ボディが、完璧な状態で隠されているという。
キャビンは、ブラックのアルカンターラにアシッド・グリーン(黄緑色)のパイピングが組み合わされ、ブレーキキャリパーや外装のレタリングもアシッドグリーンとされた。
また、DABデジタルラジオを備えた「カレラGTサウンドシステム」やナビゲーションシステム、エアコン、フロントのリフティングシステムなど、豊富なメーカーオプションを選択している。
今回の出品車両は新車時からのワンオーナー車両で、オークションカタログ作成時の走行距離は3700km足らず。完全なオリジナル状態にあるという。
この間「ポルシェ・ツェントルム・シュトゥットガルト」によってメンテナンスされていた#0219は、2019年11月に受けた最新のメンテナンスからのマイレージは850km未満とのこと。納車時に添付されるドキュメントやサービス記録簿に加えて、充電用のアクセサリーキット、シャシナンバー別に番号づけされたアートワーク「918クリスタルモデル」が添えられていたという。
近い将来、パフォーマンスの面で918スパイダーを凌駕するハイパーカーは、おそらくポルシェ自身からも誕生するだろう。しかしそれは、ハイブリッドシステムや従来の内燃機関ではなく、完全なBEVと“なってしまう”可能性が高いと思われる。
それゆえ918スパイダーは、たとえハイブリッドであろうとも素晴らしき時代の終わりの始まりと見なされ、魅力的でスリリングなドライビングをもたらす特別な1台として、歴史的意義の次元からも高く評価されつつあるのが実情。現在のコレクターカー・マーケットでも、デビュー時にライバルと目されたラ・フェラーリやマクラーレンP1と人気と高値を競い合っているようだ。
当時のポルシェAGが設定した新車の正札価格は70万4365ユーロ。当時の日本円換算では約1億円というベーシックプライスで販売されたのだが、今回の「St.Moritz」オークションでは141万1250スイスフラン、日本円に換算すれば約1億7083万円という「プレ値」がつくことになったのは、ポルシェが内燃機関とともに創り出した最後のハイパーカーとなるだろうという観測が、大きく作用しているかに感じられたのである。
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