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アルファ ロメオ「ジュリアTI」の「キレ味」冴えるツインカムに感動【旧車試乗】

モンゴルの耐久ラリー用に仕立てられた「ジュリア」とは

 今回テストドライブさせていただいたジュリア・ベルリーナは、最初期型にあたる1965年型で、シングルキャブレターの「ジュリアTI」である。

 ただし現状の姿はノーマルではなく、かなり気合いの入ったラリー仕様。日本を代表するクラシックカー愛好家のひとりであるとともに、海外のラリー競技にも積極的に参加している「伊香保おもちゃと人形 自動車博物館」の横田正弘館長が、はるかモンゴルの砂漠で開催される長距離耐久ラリーに参加するために、日本国内のスペシャリストとともに仕立てた1台である。

  • 典雅な「Alfa Romeo」の文字がい込まれたアルミ合金製のカムカバー

 さっそくロールケージ入りのコックピットに潜り込み、山中のワインディングを走らせてみると、ハードなラリーのために施されたチューニングの効力がはっきりと体感できる。

 ノーマルのジュリア・ベルリーナは絶対的な重心が高い上に、ボディ剛性も時代なりのもの。また、サスペンションのセッティングもかなり柔らかめとなる。それゆえ、中速以上のカーブではグラリとロールしつつもグイグイと曲がってゆく姿は、映画などでもおなじみであろう。

 現代のスポーツセダンと比較してしまえば旧態依然と感じられてしまうかもしれないが、それがジュリア・ベルリーナの個性であり、無類の楽しさをもたらす源でもあると思うのだ。

 ところが、今回の試乗車両はロールケージによって剛性が大幅にアップしているほか、サスペンションも固められ、車高も低くなっていることから、クルマとドライバーの一体感は格段に向上しており、筆者がジュリア・ベルリーナに抱いていた固定概念を覆すような弱アンダーステアで、とても気持ちよくコーナーを駆け抜けてくれる。

 たとえクラシックカーをベースとしていても、現代の技術で仕立てられたラリーカーの出来の良さとドライブの楽しさを実感できる仕上がりであった。

●ジュリア持ち前の資質と、現在のクラシック・ラリーカーの進化に感銘

 そして肝心要のエンジンは、昔ながらの「アルファ・ツインカム」らしく、高回転までキッチリと回すことができる。この個体のエンジンは、クーペ版「スプリントGT」やジュリア・スーパーのウェーバー社製ツインキャブ仕様ではなく、初期型TIのスタンダードであるシングルキャブがノーマルのまま残されてはいるものの、体感できるパワー感やレスポンスの差異は極めて小さいようだ。

 生産から半世紀以上の時の間に受けたレストアの段階で、エンジンにもバランス取りなどのファインチューンが施されているのかもしれないが、アイドリング+αの低回転域から5000rpm以上の回転域までよどみなく吹け上がり、かつては「アルファ・ミュージック」とも称された豪快な排気音とともにツインカムの「キレ味」を堪能できるのだ。

 そしてここで生きてくるのが、当時としては先鋭的だった5速MTである。ジュリエッタ時代から続くアルファ ロメオの特徴として、ダッシュパネルの下から長いシフトレバーが斜めに伸びてくるので、一見したところでは古臭いトラックのようにも映る。

 もちろんレバーの長い分ストロークも長めで、しかも発進からローにシフトする際には、いったんセカンド(2速)をかすめてからロー(1速)に入れるという儀式めいた操作も求められるものの、シフトフィール自体は正確で心地よい。

 また、クラッチワークも軽くて素直だ。1速以外はシンクロメッシュも強力に作用してくれるので、ちょっと手荒にシフト操作してもドライビングのリズムを乱すことがないのは、重要な特性といえるだろう。だから、ノンパワーのステアリング操作が若干重い程度で、現代のマニュアル車と大きくは変わらないスキルで運転できるのだ。

 この楽しさと安心感を両立した走りが、現代の日本のスペシャリストによるチューニングの成果であることには、疑う余地もあるまい。しかしアルファ ロメオ・ジュリアという稀代の名作が、生まれつき持っていた優れた資質についても認めたいところである。

 量産メーカーとしてのアルファ ロメオの地位を絶対的なものとすると同時に、アルファ・ベルリーナの哲学を確立したことで、エンスージアストから熱愛されたジュリアTI。

 その魅力は、誕生から間もなく60年を迎えようとしている今となっても、まるで色褪せないのである。

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