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最高速を樹立も問題視。豪バサーストはR32型「スカイラインGT-R」にとって不遇の地なのか?

優勝したものの“新参者”扱いでブーイング

 日産自動車の“R32”型「スカイラインGT-R」は、日本が世界に誇るスポーツカーであり、今やコレクターズカーとして高嶺の花になりつつあります。車両の動力性能の優秀さ、コストパフォーマンスのよさ、そして改造のベース車としてのポテンシャルの高さなどは新車時から評価されていたことです。

シェリフのR32型GT-Rがクラッシュしたことで、バサーストのレギュレーションがまた変更される!?(C)YouTube『Best Motorsport Videos』
シェリフのR32型GT-Rがクラッシュしたことで、バサーストのレギュレーションがまた変更される!?(C)YouTube『Best Motorsport Videos』

 そんなR32型GT-Rにとって、オーストラリアは不遇の地といえます。

 1991年に「バサースト1000km」レースに初参戦したスカイラインGT-Rは、圧倒的な速さで見事に優勝を飾りました。この頃のバサースト1000kmは、フォード対ホールデンの争いがいつも熾烈で、日本の野球に例えるなら「巨人」対「阪神」みたいなものでした。そんなレースに、手を出しやすいファミリーカーばかりを生産する(と思われていた)“新参者”の日産自動車が参戦し、表彰台をかっさらっていったので面白くなかったのでしょう。1992年には表彰式で観客からブーイングが起きたほどです。

 優勝したジム・リチャーズが「オーストラリアのレースファンはもっとまともだと思っていたよ。今日という日を忘れることはないな。お前らはクソ野郎どもだ!」と応対していたシーンを筆者は鮮明に覚えています。

 しかし、「ツインターボはズルい」という声が大きくなり、レギュレーションが変更された結果、R32型GT-Rは1993年から参戦できなくなりました。

●最高速記録を樹立するも安全性を問題視

 そんなR32型GT-Rも、今ではオーストラリア人にとって憧れのクルマに昇華しています。そしてまたまた、バサーストにて事件が起こりました。

 バサースト12時間レースに、ブラッド・シェリフというアマチュアレーサーが改造を施したR32型GT-Rで参戦。ストレートの公式記録で最高速327km/hを樹立したのです。多くのGT3マシンは280km/h前後といいますから、その速さに驚かされます。しかも今回は、ブーイングではなく歓声があがった辺りに時の流れを感じさせます。

 ストレートの速さこそスゴかったものの、結局、シェリフがドライブするR32型GT-Rはクラッシュ、リタイアしてしまいました。しかもこのクラッシュにより、安全性を懸念する声が上がりました。そこでレースの運営団体であるモータースポーツ・オーストラリアは、改造車の最高出力について調査を開始。レギュレーションの変更も辞さないと発表しています。

 シェリフは自身のFacebookで、この調査に理解を示しつつも、「今後、最高出力が制限されるのであれば、もうR32型GT-Rでレースをするつもりはない」と表明しています。

「私が尊敬しているモータースポーツ・オーストラリアの人から連絡を受けたことは驚きではありません。安全性やスピードへの懸念は理解できますが、ごく普通のドライバーが日産の市販車をベースにした改造車で、より軽量なスペースフレームのマシンの、より才能あるドライバーと競争することは、私にとって魅力のないゲームです」とも、シェリフは記しています。

 バサースト12時間レースのスポーツセダンクラスのマシンは、スペースフレームシャシーでつくられるものがほとんどですが、シェリフのクルマはあくまでも市販車を改造したもの。そのため重量面で大きなハンデを背負っています。だからこそ、シェリフがつくるマシンは改造を前提としているのです。

 シェリフは当初、R32型GT-Rに大型のターボチャージャーを装着してみたそうですが、純正のエンジンブロックでは満足いく仕上がりにならなかったとか。そこで、1ピースのアルミブロックを製作し、1000馬力以上を確実に出せるようにしたそうです。シェリフのマシンのエンジンは1380馬力出せるところまで仕上げられ、バサーストのレースでは1040馬力で走っていたのだとか。

 シェリフのクラッシュによりレース関係者の厳しい視線を浴びることになったR32型GT-Rですが、バサーストでの最速ラップタイムを更新し、21年前とは違って観客を魅了しました。ただし、レギュレーション変更のきっかけとなったのは、今も昔も変わらないようです。

Gallery 【画像】オーストラリアは不遇の地!? レースで活躍したR32型GT-Rの雄姿を見る(5枚)
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