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“ランエボ”がお手本!? “不評の電気自動車”がついに「エンジン車顔負けの走り」を実現! ヒョンデの高性能BEV「アイオニック5 N」驚きの実力とは

物理の法則を超える抜群の運動性能を実現

 では、「アイオニック5 N」は本当に、ジューン氏のいう“Nの3つの柱”をBEVで実現できているのでしょうか?

 それを検証すべく、まずはサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)での全開走行からチェックしてみました。クローズドサーキットでの走行ということで、ESPは完全オフの状態で試します。

ヒョンデのスポーツブランド“N”の名をBEVで初めて冠した「アイオニック5 N」
ヒョンデのスポーツブランド“N”の名をBEVで初めて冠した「アイオニック5 N」

 パワートレインは、アクセル全開にすると「速っ!」と感じる力強さですが、それよりも、アクセル操作に対して緻密に反応してくれることに驚きます。要するに、パワフルだけどシームレスな上に、コントローラブルで“手の内感”もある650psなのです。

 さらにストレートでは、ブーストモードである「NGB(“Nグリン・ブースト”)」も試してみましたが、大径ターボチャージャーを思い出させる2段階の加速フィールは、どこかなつかしさも感じさせます。

 エンジン音やジェットサウンドを発生させる“Nアクティブサウンドは、「Ignition」では高出力ターボのような野太いサウンドを、「Evolution」ではより音の粒がそろった洗練されたフォーミュラEのようなサウンドを、そして「Supersonic」では雑味がないジェット機のようなサウンドを奏でます。いずれもワクワク感を高めてくれます。

 8速DCTのような加速感やシフトショックを生み出す“N eシフト”は、パドル操作時のシフト感やアップシフトの際のバブリング、さらにダウンシフト時のブリッピング制御がお見事のひと言。その制御はBEVに乗っていることを忘れるくらいの仕上がりです。

 試乗前、これらの機能は面白さやワクワクを演出する“エンターテイメント”のためのギミックだと思っていましたが、実際に使って走らせてみるとドライビングのリズムが取りやすいということに気づきました。クルマを運転する上で、音と振動は重要な要素であると改めて実感した次第です。

 そんな「アイオニック5 N」を走らせてみて最も驚いたのはフットワーク。特に、物理の法則を超えた運動性能には、アッパレのひと言しかありません。

「アイオニック5 N」の車両重量2.2トンだけに、いくらスポーツモデルとはいっても「しっかり曲がれるのか?」、「限界を超えたら制御できるのか?」と心配でした。しかし走り始めると「ちょっと重いクルマかな?」と感じるくらいの身軽な身のこなしで、感覚的には1.6~1.7トンくらいのクルマに乗っているかのような感覚です。

 コーナリングは、ターンインでは重さを感じることなくノーズがインをスッと向く回頭性の高さ、旋回時は腰を中心に曲がる感覚と路面に張りつくような安定感を持ちながら、アクセルのコントロール次第でクルマの向きをコントロールできる自在性の高さ、そして、トラクションをかけるとリアタイヤに荷重をグッと乗せながら蹴り出していく感覚を味わえます。

 しかもそれらは、タイヤのグリップ力に頼っているような印象はありません。重量配分や低重心といったクルマの基本的な素性のよさに加えて、“Nトルク・ディストリビューション”による緻密な駆動力制御による合わせワザで実現しているのでしょう。

 ただし袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、高速の2コーナーやヘアピンの9コーナーなどで2.2トンの重さが“顔”を出し、「もう少しグリップあった方が安心だよね」と感じることもあります。でも、これだけ走れれば十分以上といえるでしょう。

 ちなみに、中速コーナーやアールがさほどきつくないコーナーでは、ドライバーの操作次第でアンダーにもオーバーにもできる自在性を実感。ただし、アウトサイドへ流し過ぎてしまうと2.2トンという重さゆえリカバリーが難しく、少しだけ注意が必要です。筆者(山本シンヤ)もその洗礼をしっかり受けました(汗)。

 ちなみにサーキット走行でも、「アイオニック5 N」は足がよく動いている印象ですが、それゆえにクルマの動きはスポーツモデルとしては全体的に大きめです。個人的には、もう少し空力を効かせてボディのムダな動きを抑えた方が、安心感や安定感がより高まるように感じました。

●公道ではサーキットとは対極の冷静な走行フィール

 今回は袖ヶ浦フォレストレースウェイでのサーキット走行に加えて、水をまいたスペースを用いてのドリフト走行も体験しました。

 ここでは“Nドリフト・オプティマイザー”を試します。このシステムは、前後の駆動配分比率と車両制御を最適化することで「誰でもドリフト走行を楽しめる」というのがウリです。

 確かに普通に走るよりもドリフトのキッカケづくりや定常円旋回のしやすさなどで「なるほど‼」と感心するものの、あくまでサポート機能ゆえ、そこから先はドライバーの腕次第といった感があります。

 2.2トンを自在にコントロールするのは難しいのですが、その入口は誰でも味わえる上、レベルアップもしやすいと思います。ただし、21インチタイヤを惜しげもなく使う勇気は必要となりますが……。

 ちなみに、一般道で走りはどうでしょう? サーキットでの熱血さとは真逆で、いい意味でハイパフォーマンスBEVを感じさせない冷静な走行フィールに驚きます。

 パワートレインは、モーター駆動の応答性のよさはいうまでもありませんが、加速の立ち上がりは意外とおだやか&ジェントルで、微細なコントロールも楽におこなえます。

 アクセルを全開にすると、ハイパワーBEV特有の脳天を揺さぶる怒涛の加速を味わえると思いきや、実際のところは「加速感は乏しいが速い」といったイメージ。とはいえ、パワフルなのは間違いなく、日常的なシーンでは使うドライブモードは、最も穏やかな「ECO」が最適といえるでしょう。

 フットワークも同様の印象で、操舵応答は高いもののクルマの動き自体はおだやか。コーナリング時のロールは小さめながら一連の流れはなめらかで「スポーツモデルというよりもスポーティモデルかな?」といった乗り味です。

 乗り心地は低偏平タイヤを履くこともあり、ベースモデルである「アイオニック5」よりもコツコツ感がありますが、むしろ足の動かし方やショックの吸収のさせ方などはベースモデルより上品で、バネ上のフラット感もハイレベルだと感じました。この辺りは、サーキットをしっかり走るために施されたレベルアップが、過渡な領域での質感アップにも効いているのだと思われます。

* * *

 さて、そろそろ結論とまいりましょう。

「アイオニック5 N」は一般道からサーキットまでハイレベルにカバーする、リアルに“万能型のBEV”でした。と同時に、「楽しいクルマだなぁと思ったら、実はパワートレインがBEVだった」といった具合に、BEVであることをあまり感じさせないモデルです。

 実際、筆者はサーキット走行中、このクルマがBEVであることをすっかり忘れてしまうくらい、ドライビングに夢中になってしまいました……。

 要するに、どちらかというと“効率論”で評価されやすいBEVにあって、数字には表れにくい“エモーショナルな領域”が際立つBEVといえるでしょう。

 試乗後、そんな印象をジューン氏に伝えると、「パワートレインはなんであれ、クルマは楽しくないとダメですよね。だから我々は“ハイパワーBEV”ではなく、“ハイパフォーマンスBEV”をつくりました」と笑顔で答えてくれたのでした。

「アイオニック5 N」は、内燃機関とBEVとをつなぐ“架け橋”になれる存在だと強く思いました。世の中のクルマ好き、エンジン好き、ドライビング好きの人は、とにかく一度、試してもらいたい1台です。

Gallery 【画像】「えっ!…」これがBEVであることを忘れるほど走りに夢中になれる「アイオニック5 N」です(70枚)
「2段あたため」レンジがすごすぎるっ!? 最新レンジを徹底紹介

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