「カウンタック」より速いってホント!? F1譲りのV12を積んだ伝説のミッドシップフェラーリ「365GT/4BB」に秘められた“物語”とは
子どもの頃に憧れたビービーは“ベルリネッタ・ボクサー”?
365GT/4BBに標準装備されていたホイールは、シルバー仕上げの星形5本スポークの軽合金製で、センターハブにノックオフ式スピンナーで固定されています。内側には大径のベンチレーテッド・ディスクがあり、サーボアシスト付きのブレーキは油圧回路を2系統に分けています。

4輪独立サスペンションは、ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング/油圧ダンパーという構成で、リアにはコイル/ダンパーユニットが1輪につき2本ずつ装備されています。さらに、前後にアンチロールバーも備わっています。
テールライトは3連丸型ユニットが一段奥まったメッシュパネル内に配置されており、これは365GTC/4に準じた処理です。その下には、クロームメッキ仕上げの小径エキゾースト・テールパイプが左右3本ずつ配置され、独自のリアビューを形成しています。
365GT/4BBは、フェラーリの市販車として初めてスペースセーバー・スペアタイヤを採用したモデルでもあり、収納場所はフロントリッド下のくぼみとなっています。ただし、ノーズが薄いため、タイヤを積むとラゲッジスペースはほとんど残りません。
マテリアル面では、ドアと前後リッドパネルがアルミ製、キャビンのフレームがスチール製、ノーズ下部とテールセクションはグラスファイバー製という構成です。また、ウィンドウシールドが寝ている関係で、上端部には着色ストリップが貼られており、そこにはラジオアンテナが埋め込まれています。
当時の子どもたちは365GT/4BBを「ビービー」と呼んで親しんでいましたが、そのモデル名はフェラーリの命名慣例に基づいています。365は1気筒あたりの排気量、4はカムシャフトの数、BBは“ベルリネッタ・ボクサー”を意味しています。
総排気量4390ccを誇るエンジンの社内コードネームはティーポF102AB000で、各バンクあたり2基のトリプルチョーク・ウェーバー40IF3Cキャブレターが装着されていました。
ボア×ストロークは81mm×71mmで、ベルト駆動の水平対向12気筒エンジンは、フェラーリの市販車としては初の構成でしたが、365GT/4BBのパワーユニットは180°V型と呼ぶべきピストンの動きをしていました。大人になってから分かったことですが、一説によると向かい合うピストンの動きをボクシングのパンチになぞらえてベルリネッタ・ボクサー(BB)と呼ぶのだそうです。
エンジンは5速トランスミッションと一体で縦置きに搭載されており、潤滑方式はウェットサンプ式となっています。トランスミッションはクランクケースの下部に収まり、エンジンとギアボックスのハウジングには一部共通の鋳造パーツが使われていますが、内部のオイル回路は完全に独立しています。
公称最高出力は380馬力とされていましたが、実際にはそこまでのパワーはなく、302km/hという最高速度もブラフだった可能性が高いといわれています。とはいえ、当時の子どもたちにとって大切だったのは実測値ではなく、「カウンタックLP400よりも速い!」とアナウンスされたことが大切だったのです。本当にイイ時代だったといえます。
現オーナーのEさんは、高校時代は2輪(主にヤマハの2スト)に熱中していたそうです。大学に進学してからはクルマを運転するようになり、旧いオープンカーへと興味が移行。最初に検討したのは「MG B」をはじめとする英国車でしたが、結局、趣味系自動車専門誌のバザール欄で見つけた黒いアルファロメオ「スパイダー(シリーズ3)」を購入しました。

スパイダーではキャブ調整なども楽しんでいたそうですが、故障をきっかけに手放し、次はプジョー「306」のMTを新車で購入。これもお気に入りだったそうですが、さらに刺激を求めて1999年に赤いアルファロメオ「スパイダー(シリーズ1)」へ乗り換えたそうです。
“デュエット”の愛称で知られるこの赤いスパイダーで、当時のインポーターが主催していたムゼオ・アルファロメオ系ツーリング・イベントなどにも参加していたEさんは、デュエットに10年ほど乗り続け、40歳になる前にフェラーリ購入を決意しました。
本当は、いきなりBBシリーズが欲しかったそうですが、最初のフェラーリとして選んだのはMT仕様の「F355ベルリネッタ」でした。F355を愛用しながらも512ではなく365にこだわってBBを探し続け、ようやく2012年に運よく極上モノの365GT/4BBと出会い、購入に至ったといいます。情熱がハンパないので、Eさんの充実したBBライフは、これからも長きにわたって続いていくことになりそうです。
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