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“進化版”トヨタ「GRカローラ」のスゴさとは? レース現場からのフィードバックで全方位的に改良! 新兵器“8速AT”の走りも気になる

レース現場からのフィードバックで進化した「GRカローラ」

 TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)によってモータースポーツの世界で鍛えられ、304psの手組みエンジンや卓越した4WD機構を搭載。ルーフパネルはカーボン製で、組み立ては少量生産用の専用ラインでおこなわれる……。10年前、トヨタからそんなクルマが出るなんて、誰も信じられなかったことでしょう。本記事でフォーカスするのは、そんな“信じられないクルマ”トヨタ「GRカローラ」です。

モータースポーツで培った技術やノウハウをフィードバックしたトヨタ“進化版”「GRカローラ」
モータースポーツで培った技術やノウハウをフィードバックしたトヨタ“進化版”「GRカローラ」

 ハイパフォーマンス4WDカーといえば、かつてはスバルや三菱というのが相場でしたが、気づけば両ブランドはそのステージから降りてしまいました。しかし、今でもその分野に果敢に挑み続けているのがトヨタ。TGRがモータースポーツ活動からの学びを活かして鍛えた「GRカローラ」や「GRヤリス」をラインナップしています。

 先ごろ“進化版”と呼ばれる最新モデルへとアップデートされた「GRカローラ」ですが、その改良メニューには「空力性能とブレーキ冷却性能を向上させるためのバンパー形状の変更」や「中回転域のエンジントルクを30Nm向上」、「ショックアブソーバーとスプリングとスタビライザーの変更を含むサスペンションの見直し&後輪の接地性を高めるためのジオメトリー変更」といった、スポーツカーらしい分かりやすい内容が並びます。

 一方、「ステアリングコラムとインストルメントパネルリインフォースメントのボルト頭径を3mm、ワッシャー径を2mm大型化」や、「リアショックアブソーバーのアッパー部とボディを固定しているボルトのフランジ厚を1mmアップ」なんていう、超細かいメニューも。「フツーはそんなとこまで手を入れないよ……」と思うのは、われわれシロウトのクルマ好きだけではないはずです。きっと他メーカーのエンジニアも驚くプログラムでしょう。

 今回、TGRがなぜそこまで手を入れてきたかといえば、レース現場からのフィードバックがあったから。「GRカローラ」は、スーパー耐久シリーズという市販車ベースのマシンで争われるレースに参戦していて、そこで常に、勝つための細かい進化を実施。そうした戦闘力アップのノウハウが、今回の“進化版”にも反映されているというわけです。

 では、どのくらい進化しているのか? 今回の改良ポイントであるという「加速」、「旋回」、「冷却」の性能をチェックすべく、最新の「GRカローラ」を公道でドライブしてみました。

 結論からいうと、公道を走る限り、今回の進化については正直、よく分かりませんでした。なぜ分からなかったのか? そもそも従来モデルのレベルが高すぎるのです。「GRカローラ」、クルマ自体の出来がスゴすぎるんですよ。

 とある寿司屋さんが出す超絶おいしい寿司がさらに進化し、スゴい寿司から、よりスゴい寿司になったとしても、きっと抱く感想は「どっちもおいしい」になるはず。“進化版”「GRカローラ」もそれと同じ状況なのです。

 フツーのドライビングスキルの人間がワインディングロードでちょっとくらい頑張ったところで、性能限界には到底届くことはありません。もしかしたらサーキットなら、今回の進化を感じられるかもしれませんが……。

 そんな公道での試乗でも、改めて実感できたことがあります。それは「思いのままに動く」ということ。マツダがよく使う言葉を借りるなら、「人馬一体」感を味わえるってやつです。

“進化版”「GRカローラ」は、ドライバーのステアリング操作に対して素直に向きを変え、峠道を走る程度の領域では決して裏切ることがありません。まるでドライバーがクルマと一体になったかのような身のこなしです。

モータースポーツで培った技術やノウハウをフィードバックしたトヨタ“進化版”「GRカローラ」
モータースポーツで培った技術やノウハウをフィードバックしたトヨタ“進化版”「GRカローラ」

 そういえば、「GRカローラ」のベースモデルは「カローラ スポーツ」ですが、その先輩であるトヨタ「オーリス」には、かつてバンダイとコラボした特別仕様車“シャア専用モデル”が存在しました。その世界線の表現を借りるなら、ニュータイプがモビルスーツを操縦する際はきっとこんな感じ……なのかもしれません。

●ドライバーがしっかり操れる十分すぎる動力性能

“進化版”「GRカローラ」が搭載する1.6リッター直列3気筒ターボエンジンは、最高出力304ps、最大トルク400Nmを発生。しかしこの数値、イマドキのハイパフォーマンスカーとしては目を見張るものではありません。

 しかし、ドライバーがしっかり操れるという意味では、この程度が上限といえる数字。もちろん、パワー不足など感じることはなく、むしろ「コレは速いな」と素直に感心します。

 強いて気になるポイントを挙げるとすれば、筆者(工藤貴宏)的には「軽自動車を思わせるエンジン音だけなんとかならないかな?(おそらく、3気筒エンジンである以上、どうにもならない)……」と思います。その一方、野性味あふれる低い排気音にはワクワクさせられますね。

 またスポーツモデルだけに、シートポジションがもう少し低くなって欲しい、とも思います。

 一方、普段使いを考えれば、フットワーク最優先のサスペンションは路面からのフィードバックをしっかりと伝えてくるので、車体の上下動が大きめで高速移動時の快適性に欠ける、ということでしょうか。

 でも乗り心地に関しては、戦闘力優先と考えると納得できます。運転する楽しさと速さに比べたら、そこに抱く不満など大したものではありません。快適性のために走行性能を落とすことは、「GRカローラ」の場合、適切な味つけではないでしょうからね。

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Gallery 【画像】「えっ…!」これがレース現場からのフィードバックを元に進化したトヨタ「GRカローラ」です(30枚以上)

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