スズキの新しい電動SUV「eビターラ」は何がスゴい? 広々キャビンに息づく小型車づくりのノウハウ!「EVだから」とあなどれない高評価のポイントとは
「eビターラ」の要であるリン酸鉄バッテリーの特徴とは
そんな「eビターラ」には、いくつかの注目すべきポイントがあります。

まずはバッテリー。「eビターラ」はリチウムイオンタイプではなくリン酸鉄タイプを使っているのですが、これは日本ブランドが国内市場向けに展開するBEVとしては初めてのことです。
リン酸鉄バッテリーはリチウムイオンバッテリーに比べてエネルギー密度が低いのですが、安全性が高い上に低コストというメリットがあります。エネルギー密度が低いとはいえ、「eビターラ」はWLTCモードで400km以上も走ってくれるのですから、実際の使用シーンでも不満を覚えるケースは少ないでしょう。
さらに「eビターラ」は、スズキ車として初めて楕円というか“ほぼ四角形”の異形ステアリングを採用しています。回転式のシフトセレクターが、どこかで見たカタチなのはご愛敬ですが、運転環境も新しくなっています。
さらに、スズキの量産車としては初めて、1500WのAC100V電源も用意。またプレミアムオーディオには、インフィニティを採用しています。スズキ車にインフィニティが組み込まれる日が来るなんて、筆者(工藤貴宏)は驚きました。
●炎天下のサーキット走行も涼しい顔でこなす頼もしさ
そんな「eビターラ」の試乗コースは、プロトタイプいうこともあって公道ではなくサーキットでした。そこで驚かされたのは、スズキの“攻めの姿勢”です。
一般的に、BEVは暑い日が苦手です。フツーに走る程度なら全く問題はありませんが、サーキット走行となると電気の出し入れがどうしても大きくなるバッテリーの発熱量が増え、システム側が出力をセーブするなんてこともあり得ます。しかも試乗日は真夏を思わせる炎天下。サーキットをBEVで走るには、かなり条件が悪かったのです。
にもかかわらず、スズキは「30分間の試乗枠の中で、好きに走っていいですよ」と、果敢にもバッテリーを冷やす時間を与えない“攻めの姿勢”を見せたのです。
試乗時は「ストレートは120km/hまで」という速度制限が設けられ、一部区間にスラロームを試すためのパイロンが並んでいたとはいうものの、BEVにとっては相当、負担のかかる(ブレーキだってツラい)状況だったのは間違いありません。
どう考えても「しっかり熱対策を施しているので、そこも感じて欲しい」という、開発陣の自信の表れだったのではないでしょうか。
そんな「eビターラ」の加速は、2WD車も4WD車も「必要にして十分」といった印象。特別、速いわけではありませんが、発進時からグイグイ加速している感覚が魅力的です。
いじわるにアクセルペダルのオン/オフを繰り返してみても、イマドキのBEVらしく挙動に“唐突感”がなく、とても素直に加速。また加速の伸び感も、スピードがある程度乗った後に尻すぼみになる感じはなく、それ相応の伸びが余韻としてしっかり感じられるのも美点です。
期待以上だったのは、コーナリングフィールというかフットワークのよさ。バッテリーをフロア下に置いたことによる低重心効果もあるとはいえ、ドライバーがねらったラインを気持ちよくトレースしてくれる感覚がとても好印象です。路面にクルマがジワッと張りつくような安心感と安定感があり、ついつい走りを楽しみたくなります。
パイロンが並んだスラローム区間でも、反応の遅れなくリアが追従。車体の一体感を感じられ、心地よく走ることができます。このように「eビターラ」は出来のいいドライビングマシンであったことは、実に意外で驚きでした。
ちなみに、大容量バッテリーを搭載する上級グレードの2WD車と4WD車とを乗り比べると、意外にも後者の方が軽快に感じられました。
車両重量はちょうど100kg重いのですが、前後の駆動力配分によって生み出される“曲がる力”がこうした印象につながっているのでしょう。
しかも4WD車は、前へ出ていこうとする力が強いので、運転していて楽しいのは、断然4WD車だと判断できます。
その気持ちよさは「スイフトスポーツ」級というと大げさですが、「スイフト」くらいの楽しさは感じられるといえそうです。
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実はスズキ初の量産BEVは、トヨタ、ダイハツ、スズキの3社連合が開発を進める軽商用車になる予定でした。
実際、2023年の「ジャパンモビリティショー」には、参考出品車としてほぼ市販状態のモデルが展示されていたのですが、諸事情により同モデルの発売は遅延しています。
そんな背景もあって、「eビターラ」がスズキの初の量産BEVとなるわけですが、筆者は結果的に、それでよかったと感じています。それくらい「eビターラ」は、出来のいいBEVであり、スズキの技術力の高さを感じさせる1台だからです。
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