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なぜ世界初公開されたフォルクスワーゲン新型「ID.クロス コンセプト」は前輪駆動ベースを採用した!? IAAで明らかになった「VWの方向性」とは

開発スピードは高めるがVWの「優れた伝統と個性」は捨てない

 けれども、ここまでていねいに作り込まれたデザインが、わずか2、3年で見直される可能性があるとも、グリュニッツ取締役は語っていました。これについてミント氏に訊ねると、「ええ、それは本当です」との答えが返ってきました。

世界初公開されたVW新型「ID.クロスコンセプト」のインテリア
世界初公開されたVW新型「ID.クロスコンセプト」のインテリア

「今後、私たちはクルマのデザインをコンスタントに発展させていく計画です。そしてクルマの開発プロセスをスピードアップさせます。私たちは多くの中国企業とコラボレーションをし、その経験を通じて開発期間を短縮する方法を学んできました。この考え方は(同じIAAで発表されたコンパクトカーの)ID.ポロにも適用されます」

 ミント氏のこの言葉には、中国企業が持つ“強さ”を積極的に取り込んでいこうとするフォルクスワーゲンの姿勢が表れているように思います。

 ご存知のとおり、中国の自動車メーカーはデジタル領域などの新技術を急速に発展させ、これらを次々と電気自動車に採用してきました。

 この点については賛否両論があるでしょうが、中国メーカーを始めとするライバル勢が次々と新製品を投入しているのに、自分たち(=フォルクスワーゲン)だけがいつまでも同じ製品を作り続けているようでは勝負になりません。そういった、無理なく改善できる部分については素直に中国企業を見習い、開発スピードを高めていく方針をフォルクスワーゲンは採り入れることにしたのです。

 ただし、だからといってフォルクスワーゲンの「優れた伝統と個性」まで捨ててしまうわけではなさそうです。

 今回のIAAに際しても「トゥルー・フォルクスワーゲン」と題するプレスリリースを発表。そのなかで「新しいデザイン、高品質、優れたコストパフォーマンス、革新的な新技術、馴染み深いモデル名」によってブランドを強化する方針を打ち出しています。

 個人的には、このなかでも“高品質”という言葉が選ばれたことに強い共感を覚えます。

 率直にいって、一時期のフォルクスワーゲンは品質の点で迷いが生じていたように思います。しかし、最近デビューした「ティグアン」、「パサート」、「ゴルフ8.5」などを見ていると、そういった迷いが吹っ切れ、フォルクスワーゲン本来の高品質主義に立ち返ろうとしているように思えます。

 今回発表されたID.クロスを見て、そういった方針が今後はさらに加速されるように感じました。

 しかも、すでに「ID.2all」の名前で発表されていた電気自動車のコンセプトカーが、「ID.ポロ」の名で来年2026年に発売される方針も打ち出されています。電気自動車時代を迎えても、伝統のモデル名が生き続けることになったのです。

 さらには、しばらくの間はガソリン車やハイブリッド車などの生産を継続する計画であることも明らかになりました。もちろん、将来的には電動化を進めていくのでしょうが、グローバルな市場の状況を考えれば、エンジン車やハイブリッド車の生産継続は現実的な選択といえます。

 先ほどフォルクスワーゲンは品質の点で「迷いが生じていた」と記しましたが、それは製品作りやブランドのポジショニングについてもあてはまること。しかし、ここにきてそういった迷いから解き放たれ、力強く再出発しようとする意気込みが感じられます。

 その新たな方向性をひとことで表現すれば「原点を忘れることなく、自信を持って新しい時代を生き抜く」となるでしょうか。これによって台頭する中国勢との差別化を図りつつ、高い商品性を維持する。これがフォルクスワーゲンの新しい戦略であると私は理解しました。

 高品質であること。そして何より人々のためのクルマ(=フォルクスワーゲン)であること。これこそフォルクスワーゲンが進むべき道だと、私は信じて疑いません。

Gallery 【画像】全長4.1mのコンパクトSUV新型「ID.クロス」に注目! 2026年に登場する新型を写真で見る(39枚)
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