なぜ世界初公開されたフォルクスワーゲン新型「ID.クロス コンセプト」は前輪駆動ベースを採用した!? IAAで明らかになった「VWの方向性」とは
なぜ従来の後輪駆動ベースから前輪駆動ベースへと大転換を遂げた?
ドイツ・ミュンヘンで行われた自動車ショー「IAA モビリティ2025」でフォルクスワーゲンは重要な発表を行いました。
そのなかで、もっとも目を惹いたのは「ID.クロス・コンセプト」でした。

これは全長4161mmのコンパクトなSUVで、ID.の名がついていることからもわかるとおり完全な電気自動車、つまりBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)です。
“クロス”という言葉が添えられていることから現行モデルのT-クロスを思い浮かべる方もいるでしょうが、そのT-クロスを電気自動車に置き換えたのがID.クロスと考えていただいていいでしょう。
現状はあくまでもコンセプトカーで、量産モデルは2026年夏に発表されるそうですが、このID.クロス、フォルクスワーゲンの新しい戦略を象徴しているという意味でも大いに注目すべきモデルです。
現在、発売されているフォルクスワーゲンの電気自動車「ID.シリーズ」は、いずれもMEBというプラットフォームを用いていて、駆動方式は後輪駆動もしくは4輪駆動とされていましたが、ID.クロスは新開発のMEBプラスと呼ばれるプラットフォームを採用し、駆動方式は前輪駆動となります。
なぜ、ID.クロスは従来の後輪駆動ベースから前輪駆動ベースへと大転換を遂げたのでしょうか。
フォルクスワーゲン・ブランドで技術開発担当取締役を務めるカイ・グリュニッツ氏は、その優れたスペース効率が前輪駆動レイアウトを採用する理由のひとつだったと説明してくれました。
たしかに、モーターやコントロールユニットなどを車体前部にまとめて搭載すれば、エンジンを積んだ前輪駆動車と同じように、コンパクトなボディでも広々とした室内スペースを確保できそうです。
また、たとえばモーターを車体後部、そしてコントロールユニットを車体前部とバラバラの位置に積むと、ふたつをつなぐケーブル類が必要となり、コスト的にも車重的にも不利になります。この点でも前輪駆動レウアウトにメリットがあるといえるでしょう。
ただし、今後登場するフォルクスワーゲンの電気自動車がすべて前輪駆動になるかといえば、そうともいえないようです。前出のグリュニッツ取締役は「モーター出力が大きい場合、路面に駆動力を伝えるうえで後輪駆動もしくは4輪駆動のほうが有利」と語り、前輪駆動レイアウトの採用はエントリーモデルに限られるとの見通しを明らかにしているからです。
ID.クロスで注目されるもうひとつのポイントは、長い航続距離と手頃な価格設定にあります。
まず、航続距離について申し上げれば、WLTPモードで最大420kmを達成。価格についても2万5000ユーロ(440万円)程度からとなる見通しです。
デザインも魅力的です。余計な装飾がないのに個性的で、コンパクトサイズながらバランスがよくて上質さも漂うスタイリングは、2023年にフォルクスワーゲンのチーフデザイナーに就任したアンドレアス・ミント氏が中心となって描きだしたもの。フォルクスワーゲンの新しいデザイン言語について、ミント氏は「ピュア・ポジティブ」がテーマだと語ります。ピュア(=純粋さ)とは、前述のとおり余計な装飾を取り除いた手法のこと。そしてポジティブは親しみ易さを意味しています。
「ID.クロスのフロントマスクを見てください。(口角が上がっていて)微笑んでいるように見えますよね。フォルクスワーゲンのお客様は、こういう表情を好むはずです」 そう語るミント氏が掲げるコンセプトはシンプルで明快ですが、その考え方が魅力的なスタイリングへとしっかりと落とし込まれている点に、彼のデザイナーとしての力量が表れているような気がします。
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