ツーリングに適したバイクはどっち!? 進化した“ミドルサイズのアドベンチャー” ヤマハ「テネレ700」とホンダ「XL750トランザルプ」を乗り比べて分かったこと
2モデルともオフロードでの走破性が上々
世界的に盛り上がっているアドベンチャーバイク市場ですが、日本国内でツーリングに出かけることを想定した場合、「あまり大きすぎない方がいい」と感じているライダーは多いのでは?
そんなライダーにおすすめなのが、排気量が700cc前後のミドルクラスに位置づけられているモデル。高速巡航も快適にこなせる装備内容ながら、オフロードも気軽に走破できるのが魅力です。
同カテゴリーで長年のライバルといえる2台が、ヤマハの「テネレ700」とホンダの「XL750トランザルプ」。先ごろ、ともにモデルチェンジを果たし、それぞれ大きく進化した2台を乗り比べてみました。それぞれどんな特徴があり、どんなライダーに向いているのでしょう?
今回の2台に共通する特徴は、高速走行を快適にしてくれるフェアリングを装備しながら、前21インチ、後18インチというオフロード向けのホイールサイズを採用していること。これにより、未舗装路での走破性を高めています。
エンジンはどちらも並列の2気筒。「テネレ700」は688ccで最高出力73ps、「XL750トランザルプ」は754ccで同91psを発生します。いずれのパワーユニットも、トラクション性能に優れるとされる270度のクランク角を採用しています。
それぞれの進化ポイントに目を向けると、「テネレ700」の最新モデルは電子制御スロットルやトラクションコントロール、走行モードの切り替え機能など電子制御が充実。また、シートを前後一体型とし、サスペンションのセッティングを変更するなど、オフロードでの走行性能とツーリング時の快適性を高めています。

対する「XL750トランザルプ」の最新モデルは、クラッチ操作を自動化する“Eクラッチ(Honda E-Clutch)”を搭載したのが最大のトピックです。“Eクラッチ”と電子制御スロットルの組み合わせはホンダ初。また、ヘッドライトデザインが一新されたほか、大型のスキッドプレートを装備するなどルックスもさらに引き締まった印象です。
●オンロードとオフロードで比較試乗
実際に走らせてみると、それぞれの進化が実感できます。
「テネレ700」は、電子制御の充実で飛躍的に快適さがアップ。従来モデルはアクセル操作に対して、やや挙動が敏感に感じることがありましたが、最新モデルは電子制御スロットルの導入でそれを解消。特に走行モードをマルチに使える「エクスプローラー」にしておくと、渋滞などでのストレスが圧倒的に軽減されます。
“Eクラッチ”を搭載した新しい「XL750トランザルプ」は、クラッチ操作から解放された恩恵を強く感じます。クラッチレバーは存在するものの、ライディング中は触れる必要がありません。ストップ&ゴーを繰り返す街乗りや渋滞時も半クラッチ操作が不要なので、左手が疲れないだけでなく、心理的な負担も抑えられます。これなら初めて大型バイクに乗るライダーも安心して走れることでしょう。
高速巡航は、いずれも大型のフェアリングを装備していることから走行風が当たらず、快適に移動できます。
シート高は「XL750トランザルプ」が850mmなのに対して「テネレ700」は875mm。その分「テネレ700」はやや腰高感はありますが、今回のように乗り比べなければ気になるほどではありません。なお「テネレ700」には、ローダウンリンクとローシートを装備し、シート高を約30mm落とした「アクセサリーパッケージ」も用意されています。
2台ともオフロードでの優れた走破性をアピールするモデルということで、未舗装の林道にも持ち込んでみました。
どちらも21インチと大径のタイヤを履いていますが、最低地上高は「XL750トランザルプ」の195mmに対して「テネレ700」は240mm。大きめの凹凸などを乗り越える際の安心感は「テネレ700」の方が上手です。ただし、オフロードでは足つき性がよい方が安心できるというライダーもいるかもしれません。そうした人には「XL750トランザルプ」くらいの方が好相性かも。
今回、新たにトラクションコントロールを搭載した「テネレ700」ですが、駆動輪がすべった際に介入してくれる安心感はあるものの、登坂などでは駆動力が減ってしまうデメリットも感じました。元々、エンジンのトラクション性能が高いので、オフロードではトラクションコントロール機構を切った方が楽しめそうです。
一方、「XL750トランザルプ」のトラクションコントロールは早めに介入してくるものの、効きながら車体を前に進めてくれるような感覚があるため、トラクションコントロールを切るのが不安というライダーにはこちらの方が適していると思います。
また、オフロードでも“Eクラッチ”が搭載されたメリットを感じることができます。荒れた道を低速で走る際はエンストするのが一番嫌なので、クラッチレバーに指をかけたまま走るライダーも多いと思いますが、“Eクラッチ”がついているとエンストの心配がなく、ストレスから解放されます。
クラッチレバーはあるので、一瞬、駆動力を切ってから回転数を上げてクラッチをつなぎ、少しフロントを上げるといった乗り方にも対応。オフロードと“Eクラッチ”の相性は予想以上にいいなと感じました。
* * *
ルートがオンロードのみのツーリングに出かけるのであれば、排気量が大きくパワーにも余裕があり、足つき性も優秀な「XL750トランザルプ」に分があるといえそうです。ただし、オフロードでの走破性は「テネレ700」の方が格上。未舗装路のルートを快適に通過したいのか、積極的に楽しみたいのかによって、どちらを選ぶかは変わってくるでしょう。

高速道路では、優れたウィンドプロテクション性能の恩恵で走行風が体を直撃せず、長距離を走っても疲労感が少なくて済みます。遠くの林道まで出かけるようなツーリングには、とてもありがたい特性といえます。
未舗装の林道を走っても、「エクスプローラー」モードのアクセルを開けやすい特性と、後輪がスリップすればすぐに介入するトラクションコントロールのおかげで、オフロードに慣れていないライダーでも安心してアクセルを開けることができます。
ただし、「スポーツ」モードにするのは未舗装路に慣れてからの方がいいかもしれません。それほど明確に性格が変わります。ラフにアクセルを開ければすぐに後輪がスリップし、トラクションコントロールが介入することに。もちろん、トラクションコントロールとABSはオフにできるので、リアをすべらせながら加速するようなアクティブな走りも可能です。
そういった走り方をすると、2気筒エンジンのトラクション性能の高さを改めて実感します。リアタイヤが少し空転しながらも、車体をグングン前へと押し出してくれるような特性は、文句なしに楽しいもの。フラットな林道に持ち込んでこの加速を味わうだけでも、このモデルを購入する価値があると思えるほどでした。
足まわりの許容力も素晴らしく、大きめのギャップを超えるようなシーンでも何の不安もありません。腕に覚えのあるライダーなら丸太や大きめの岩を乗り越えられるくらいの走破性を持ち合わせているので、林道ツーリングくらいで音を上げることはないでしょう。
素性のよさからくるオフロードの走破性をさらに磨き上げつつ、電子制御デバイスの採用でフレンドリーさをアップした新しい「テネレ700」。ベテランライダーだけでなくオフロードビギナーも“冒険”を楽しめる、懐の広いアドベンチャーバイクといえるでしょう。
ただし、シート高が低くないので、小柄なライダーにとっては足つき性の不安が残ります。また、高速道路を中心に使うツアラー志向の人であれば、より大排気量でACC(アダプティブクルーズコントロール)を備えたモデルの方が向いているかもしれません。「テネレ700」の本領はあくまで、舗装路から未舗装路までを1台でこなす“冒険の相棒”としての使い方にありそうです。
●製品仕様
・価格(消費税込):145万2000円
・車両サイズ:全長2370×全幅935×全高1455mm
・ホイールベース:1595mm
・シート高:875mm
・車両重量:208kg
・エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ
・総排気量:688cc
・最高出力:73ps(54kW)/9000rpm
・最大トルク:68Nm/6500rpm
・燃料タンク容量:16リットル
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