未来のヘルスケアは“自動運転”へ! 程涛(てい・とう)氏が変える“健康管理はモチベーションに頼る”という常識【家電で読み解く新時代|Case.53】
「新製品だけでは、僕たちが提供したい価値を説明できない」
体重を測り、食事を記録し、運動する。健康に正しいと分かっていても、毎日続けるのは難しい。
issinのセミナーで、程涛氏が語り始めたのは新製品のスペックではなく、健康管理が抱える構造的な問題だった。

「新商品だけを説明しても、僕たちがヘルスケアで提供したい価値は伝えきれません。ようやく今後の構想を言葉にできるようになりました」
2022年にpopInを離れて以降、程氏は約4年にわたりヘルスケア事業を考え続けてきた。そこで見えたのが、健康管理が人の意志へ依存しすぎているという問題だ。
「健康管理をしたいと思っていても、食事や体重、運動を継続して管理できる人は、おそらく全体の1割か2割です。例えば、仕事で疲れた人に、夜は健康のために努力しましょうと言っても難しいですよね。意志やモチベーションに依存していること自体が一番の課題なんです」
続かないのは生活者の意識が低いからではない。努力を前提としてきたサービス側の設計にも原因があると程氏は考えている。

「本人を自動化できないなら、周囲の環境を自動化すればいい」
そんな程氏が掲げるのは「健康管理の自動運転化」だ。記録、分析、判断、実行をデバイスやAIへ移し、生活環境が先回りして健康を支えるような世界である。

「自動運転はクルマを直接制御できます。しかしヘルスケアの対象は人間です。人の行動そのものを自動化することは、現状ではできません」
現在のサービスは、AIや専門家が助言し、本人の生活習慣を変えようとするものが多い。
「一部の人は変わっても、大多数は続かない。そこで必要なのが、本人が動かなくても環境が変わる世界です。家のロボットが必要な料理をつくり、買い物まで整えてくれる。それが全自動です」
家電は人の作業を機械へ移してきた。洗濯機は衣類量を判断し、エアコンは室温を監視する。健康管理だけを「本人が頑張るもの」にするのは不自然だ。
ポップインアラジンもスイカゲームも「意識させない」発明だった
「ポップインアラジン」は照明、プロジェクター、スピーカーを一体化し、設置や配線の面倒を解決した。「スイカゲーム」も説明なしで遊べ、自然と繰り返したくなる。努力を求めず、行動したくなる環境を先につくる思想は共通する。
「健康のためのウォーキングは続かなくても、犬の散歩なら毎日歩ける。健康が目的ではないから続くんです。何かのついでに健康になる方が近道かもしれません」
通知やポイントで継続を促しても、毎日アプリを開き、課題をこなすなら新たな努力を加えただけだ。理想は、健康管理を続けていることさえ意識しない状態を作りあげることである。
「測ることを自動化しただけでは、まだレベル1です」
その入口が、体組成計とバスマットを一体化した「スマートバスマット」だ。2026年モデルは、乗るだけで体重や体脂肪率など15項目を測定し、自動記録する。本質は機能数ではなく、測定を入浴動線へ組み込んだことにある。

「普通の体重計は自分から乗りに行く必要があります。スマートバスマットは必ず踏む場所にあるので、健康管理を意識しなくてもデータがたまります」
新しい行動を追加しないからこそ継続しやすい。これはポップインアラジンがプロジェクターの置き場所を新たに要求しなかった発想にも通じる。

「自動記録がレベル1、AIの分析と提案がレベル2。その先でAIがプランを決めても、実行するのが人間ならモチベーションの壁が残ります。ここを変えるのが一番難しい」
助言の後に「実行してください」と人へ返せば、自動運転にはならない。AIの判断を現実の生活へどう反映するかが次の課題になる。
page
- 1
- 2
VAGUEからのオススメ
海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】