防災用なのに“しまわない”!? DJIの小型ポータブル電源を「延長コード」のように使って見えた新しい価値
ドライヤーもエアフライヤーも動く。ただし万能ではない
1008Whという容量を、スマートフォンやPCの充電だけで使っていると、その実力は少しわかりにくい。そこで、消費電力の大きい家電も試してみた。
今回の実使用では、ドライヤーやエアフライヤーも単独であれば動作した。とくにドライヤーをつないだとき、本体表示が一気に1000Wまで上がるのを見ると、電気の使い方がまるで違うことがよくわかる。ノートPCの66W前後、サーキュレーターの15W前後とは桁が違う。

ここで大切なのは、DJI Power 1000 Miniの日本仕様におけるAC出力は、連続800W、最大1000Wであるという点だ。家庭用コンセントにつないだバイパスモード時には最大1440Wまで対応するが、本体のバッテリーだけで使っている状態とは条件が異なる。
つまり、4口のAC出力があるからといって、何でも同時に使えるわけではない。今回もドライヤーとエアフライヤーを同時に動かそうとすると、片方が止まる場面があった。これは故障ではなく、出力の上限に達した結果だと考えればよい。
ここは、ポータブル電源を使ううえで最も誤解されやすいポイントでもある。差し込み口の数は“接続できる数”であって、“同時に使える電力の上限”ではない。ノートPC、スマートフォン、照明のような比較的低出力の機器なら同時利用しやすい。
一方で、熱を生む家電は一気に電力を使う。ポートの数ではなく、電力の予算をどう配分するか。その感覚を、表示パネルが教えてくれる。

スマートフォンなら何十回も充電できる容量感
では、1008Whという容量はスマートフォンの充電回数に換算するとどの程度なのか。スマートフォン1台のバッテリー容量を約15〜20Wh、ポータブル電源からUSBを通して充電する際の変換ロスなどを見込み、実際に使える電力量を公称値の80〜85%程度と仮定すると、およそ40〜55回前後の満充電が可能という計算になる。

もちろん、実際の回数はスマートフォンの機種、充電開始時の残量、気温、ケーブル、充電中の使用状況によって変わる。とはいえ、「スマートフォンを何十回も充電できる」という感覚は大きく外れていない。
これは非常時においても大きい。停電時に最初に必要になるのは、照明や暖房だけではない。家族や仕事相手と連絡を取り、情報を集め、必要なら決済や地図も使う。その中心にスマートフォンがある。
スマートフォンを数十回充電できる容量があるということは、単にガジェットを長く使えるという意味ではなく、生活や仕事の連絡手段をしばらく維持できるという意味でもある。
一方で、ドライヤーやエアフライヤーのような高出力家電は、短時間でも大量の電気を使う。同じ1008Whでも、低出力の機器を長く使うのか、高出力の家電を短時間使うのかで、体験はまったく変わる。容量は“どれだけ長く使えるか”、出力は“どんな家電を動かせるか”。この違いを実感しながら使えるのも、本機を日常使いする面白さだ。
「Mini」は軽さではなく、暮らしへの収まりのよさを表している
DJI Power 1000 Miniの重量は約11.5kg。製品名に「Mini」とあるが、徒歩で気軽に持ち歩くものではない。実際にハンドルを持って部屋を移動してみても、片手で軽々というより、しっかり重さのある機材を運ぶ感覚に近い。

部屋から部屋へ移す、家からクルマへ運ぶ、車中泊先でクルマの中から外へ出す。その程度なら現実的だ。しかし、駅まで歩いて持っていく、キャンプ場内を長距離移動するといった用途には向かない。距離があるなら台車を使ったほうがいい。ここでいうポータブルは、モバイルバッテリーのように常時携帯するという意味ではなく、必要な場所へ移動できるという意味だ。
ただし、家の中に置くとこの「Mini」の意味はよくわかる。外形寸法から単純に体積を計算すると約14.4L。かなり収まりのよい筐体だ。
加えて、巻き取り式のUSB-Cケーブルを本体に内蔵している点も日常利用では効く。ケーブルを探す、充電器を用意する、使い終わったら片づける。この小さな手間が減るだけで、使用頻度は上がる。すぐ使えるものは、よく使われる。すぐ使えないものは、やがて使われなくなる。これは家電全般に共通する、かなり重要な原則である。

前面ライトと車載充電で、家の外にも役割が広がる
本体前面にはLEDライトも搭載されている。実際に点灯させると、正面をしっかり照らす明るさがあり、停電時の足元灯や、棚下・デスク下での簡易照明としても使いやすい。SOS用の点滅にも対応するため、非常時の安心材料にもなる。
もちろん、車中泊やキャンプとの相性もいい。クルマの電源ソケットから充電できるケーブルが用意されているほか、別売の車内バッテリー充電ケーブルを使えば、車両のバッテリーから最大400Wで充電できる。MPPTソーラー充電モジュールも本体に内蔵しており、対応ケーブルとパネルを組み合わせれば、太陽光からの充電にも対応する。

DJIはドローンや撮影機材を通じて、電気を屋外へ持ち出すことに長く向き合ってきたメーカーである。その知見はPowerシリーズにも表れている。家からクルマへ、クルマから撮影現場やキャンプサイトへ。電気がある場所へ人が移動するのではなく、人が必要な場所へ電気を運ぶ。
この発想は、ポータブル電源を防災用品から“移動可能な生活インフラ”へ変えていく。普段は棚の中の電源、停電時は非常用電源、クルマへ積めば車中泊や屋外作業用の電源になる。ひとつの製品が、置かれる場所によって役割を変えるのである。
防災用品から「動かせるコンセント」へ
DJI Power 1000 Miniを使って最も印象的だったのは、1008Whという容量でも、最大1000Wという出力でもない。設置して数日後には、ポータブル電源であることを意識せず、普通の電源として使っていたことだ。
棚の中に置き、PCをつなぎ、USBケーブルを挿し、必要なときには本体のライトを点ける。表示パネルには電力の流れが出て、アプリでは入出力や設定を確認できる。普段は延長コードのように使っているのに、停電が起きれば蓄えていた電気が生活や仕事を支えてくれる。
ポータブル電源は、もはやアウトドア用品や非常用品だけではない。電気をため、見える化し、使う場所へ持っていく“動かせるコンセント”になりつつある。

大げさな防災対策は、日常から遠ざかりやすい。しかし、毎日便利だから使っているものが、結果的に備えにもなるのであれば、防災は無理なく暮らしへ定着する。
DJI Power 1000 Miniが示しているのは、バッテリー技術の進化だけではない。「非常時のためにしまっておく」という従来の防災から、「普段から使いながら備える」という新しい時代への変化なのである。
製品概要
「DJI Power 1000 Mini」
価格: 5万6210円(税込)
カラー:ブラック/ホワイト
タイプ:ポータブル電源(1008Wh/LFPバッテリー搭載)
バッテリー容量:1008Wh
AC出力:最大1000W(連続800W)/バイパスモード時 最大1440W
本体サイズ:約314×212×216mm
重量:約11.5kg
充電時間:急速充電モード時 約58分で80%、約75分で100%
主な機能:4口AC出力(日本仕様)、USB-A×2、USB-C×1、100W巻き取り式USB-Cケーブル、SDCポート、400Wカーチャージャー内蔵、MPPTモジュール内蔵、0.01秒UPS、内蔵LEDライト、DJI Homeアプリ連携、LFPバッテリー、BMSによる状態管理
付属品:DJI Power 1000 Mini本体、DJI Power AC電源ケーブル
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