「タイヤはゴムだけでできているんじゃなかった!」ブリヂストンの体験セミナーで知った“原材料”と“配合技術”の知られざる世界
「走る実験室」としてのモータースポーツの立ち位置
続いて場所をブリヂストン・イノベーションギャラリーの中のモータースポーツコーナーに移動し、第2部のセミナーが始まりました。
プレゼンを行ったのはブリヂストンの執行役CPO(チーフプロダクトオフィサー)兼グローバルモータースポーツ管掌である今井 弘さん。今井さんはブリヂストンでF1タイヤの開発に携わった後、マクラーレンに転職しチーフエンジニアとしてF1の現場責任者として活躍され、その後2025年にブリヂストンに戻り、モータースポーツ管掌に就任されたという異色の経歴の持ち主です。
今井さんからは「走る実験室」としてモータースポーツの立ち位置を教えてもらいます。
ブリヂストンでは、サーキットなどで限界まで走行したタイヤを回収し、どれくらい摩耗したのか、どのように熱が加わったのか、形や素材にどんな変化が起きたのかを詳しく調べているといいます。
そこで得られたデータは、使う材料や配合、タイヤの構造設計に反映され、市販タイヤの性能向上に役立てられているといいます。
サーキットは、一般道では体験できないような大きな負荷がタイヤにかかる場所です。そのため、実験室だけでは再現できない過酷な環境でタイヤを検証できる、開発に欠かせない場所になっているそうです。

また、ここでも参加者が体験できる実演が用意され、2つのスーパーボールが入った2つの袋が手渡されます。ひとつはそのまま、ひとつは携帯カイロで温められています。
市販用タイヤとレース用タイヤのゴムを使って作られた2つのスーパーボールを机に落としてみると、違いは一目瞭然でした。市販タイヤ用はよく跳ね返る一方、レース用はほとんど跳ね返りませんでした。
次に、携帯カイロで温められた方を机に落としてみると、市販用はほとんど変化がありませんでしたが、レース用は音が鈍くなり、跳ね返りもさらに小さくなりました。
この実演で、レース用タイヤは温まることで性質が変わり、路面をしっかりつかめるようになることを体感できました。数値や資料だけでは分かりにくいタイヤの特性も、実際に見て触れることで理解しやすく、レース用タイヤが温度管理を重視する理由もよく分かる内容でした。
また、第1部で教えてもらった、タイヤリサイクルで取り出した再生カーボンブラックを、モータースポーツの世界でも実証しているといいます。
たとえば2025年にオーストラリアで開催されたソーラーカーの祭典、ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジでは、再生カーボンブラックや再生スチールなどを使ったレースタイヤで約3000kmを完走したり、日本最大の参加型自動車レースのスーパー耐久では、2025年の第7戦富士スピードウェイのST-Qクラスに出走した「トヨタ・ガズー・ルーキー・レーシング」のGR86や、「マツダ・スピリット・レーシング」のロードスターに装着されたタイヤを手がけています。
※ ※ ※
タイヤについてまだ知識の少ない筆者にとって、今回参加したブリヂストン主催のセミナーは新たな発見の連続でした。タイヤの原材料や配合の考え方といった基礎から、実演を交えながら分かりやすく解説してもらえたことで、これまで漠然としか理解していなかったタイヤの仕組みを知ることができました。
タイヤの試走会に参加した経験もありますが、じつは乗り心地やハンドリングなど、完成したタイヤの性能ばかりに注目していました。
今回のセミナーでは、その性能を支えているのが原材料の選定や配合、材料技術であることを学び、タイヤ開発の奥深さを知る貴重な機会となりました。
製品として目に見える部分だけではなく、その裏側にある技術力こそが、ブリヂストンの競争力を支えていることを感じられる内容でした。
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