あわてて“アルヴェル”に決めなくてよかった!? 日産の新ラージミニバン「エルグランド」が示した「もうひとつの選択肢」
新型「エルグランド」には待たされただけの価値はあるか?
ラージミニバンの購入を検討する際、トヨタの「アルファード」と「ヴェルファイア」は真っ先に候補に挙がる存在です。しかし、約16年ぶりに全面刷新された日産の新型「エルグランド」が登場したことで、状況は一変。キャビンの豪華さだけでなく、運転する楽しさや長距離移動の快適性を重視するなら、あわてて“アルヴェル”に決める必要はなかったのかもしれません。本記事では、新型「エルグランド」の“アルヴェル”とは異なる価値を考えます。
高級ミニバン市場において、“アルヴェル”はひとつの基準となっています。堂々としたデザイン、上質な後席、幅広いパワートレインを備え、家族用から法人の送迎まで、さまざまな需要に応えてきました。
だからこそ、クルマの買い替え時期を迎えた人が「ほかに有力候補がないなら“アルヴェル”にしよう」と考えるのは自然なことです。
しかし、2026年7月16日に4代目「エルグランド」が発売されました。2010年に登場した先代から約16年ぶりの全面刷新となった新型は、単に内外装を新しくするのではなく、パワートレインや駆動制御、サスペンションなどメカも一新されています。
新型「エルグランド」は全車に第3世代“e-POWER”と電動駆動4輪制御技術“e-4ORCE”を搭載。発電専用の1.5リッター直列3気筒ターボエンジンで電気を生み出し、それで回した前後モーターが駆動を担います。
フロントモーターは最高出力205ps(151kW)、最大トルク330Nm、リアモーターは最高出力136ps(100kW)、最大トルク195Nmを発生します。アクセル操作に対してモーターが素早く反応するため、大柄なミニバンでありながらなめらかで力強い加速を引き出せるのが特徴。また気になる燃費も、WLTCモードで16.8km/Lをマークします。

さらに、“e-4ORCE”が前後の駆動力とブレーキを統合制御し、発進や加減速時の車体の揺れや動きを抑制。コーナリング時にはリアモーターを積極的に使い、自然に向きを変える感覚をつくり出します。
路面状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を変える“インテリジェント ダイナミックサスペンション”も採用。荒れた路面では細かな振動を和らげ、大きなうねりでは車体の動きを抑えることで、乗員の頭が揺さぶられにくい乗り心地を目指しています。
このように新型「エルグランド」の存在意義は、“アルヴェル”より新しいクルマを選べるというだけではありません。家族や同乗者を快適に運ぶことに加えて、ドライバー自身も長距離を走りたくなる“プレミアムグランドツーリングミニバン”という、明確な商品像が示された点にあるといえます。
●なぜ“アルヴェル”とは違う道を選んだのか?
現在のラージミニバンは、大きなフロントグリルや押し出しの強い造形が、高級感を伝える分かりやすい手法となっています。“アルヴェル”はその価値を高い完成度で確立しました。新型「エルグランド」にも大きなフロントマスクが与えられていますが、存在感の示し方は“アルヴェル”とは異なります。
フロントまわりは水平基調のデザインで、シグネチャーランプとグリルを連続的に見せる構成。グリルには日本の伝統工芸である“組子”をモチーフとした精緻なパターンを採用するなど、大きさや装飾で相手を圧倒するというよりも、面の構成や光の見え方によって静かに際立つ上質感を表現しています。
ここで重要なのは、迫力と威厳というのは必ずしも同じではないという点です。迫力はひと目で強さを伝えられますが、威厳はプロポーションや細部の質感を含め、クルマ全体から自然に感じ取れるもの。新型「エルグランド」はライバルと同じ方法で目立つのではなく、日産らしい未来感と日本的な美意識で独自の存在感をつくろうとしています。
これは単なるデザイン上の好みではなく、商品企画ともつながっています。“アルヴェル”が乗員を丁重にもてなす上質な移動空間として成熟しているのに対し、新型「エルグランド」は後席の快適性と運転する人の満足感をともに重視しています。
第3世代“e-POWER”、“e-4ORCE”、電子制御サスペンションを組み合わせたのも、そのためです。車体の揺れを抑えることは後席の快適性につながり、モーターの応答性や旋回性能を高めることは運転する楽しさにつながります。ひとつの技術を、乗員とドライバー双方の価値に変えているのです。
室内の静かさも同じ発想で磨かれています。新型には、発電時のエンジン音だけでなく、荒れた路面で生じるロードノイズも低減する“アクティブ・ノイズ・コントロール”を採用。利用場面に応じて後席を集中的に静かにするゾーンコントロール機能も用意されています。
“アルヴェル”を追いかけて似たようなクルマをつくれば、「エルグランド」は常に“アルヴェル”の代わりと評価されてしまいます。しかし日産が選んだのは、王者と同じ道を走ることではなく、ラージミニバンの価値を“豪華な後席”から“移動そのものを楽しめる時間”へ広げることでした。だからこそ、比較する意味のある、もうひとつの選択肢になったのです。
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