速さでは不要でも“MT操作”は楽しみたい!? 約400万円でスーパーカーのDCTに“手で操る感覚”を取り戻す米国発の“クイックシフト”とは
クラッチはなくても音と手応えは“ゲート式MT”
“クイックシフト”は、フェラーリの「12チリンドリ マヌアーレ」とは異なり、クラッチペダルを備えていません。また、シフトレバーとトランスミッションの間に機械的なつながりがあるわけでもありません。
車両のECUと通信しながら純正のデュアルクラッチ機構と連携し、Hパターンのシフトレバーによってマニュアル操作を再現する仕組みです。
Hパターンの各位置には電子的な指令が割り当てられており、レバー操作に応じてDCTへ変速を要求。ただし、安全上不適切なギアには入らず、実際の変速は車速などを踏まえて車両側が制御します。
ダウンシフト時のブリッピングも、純正パドルシフトを操作したときと基本的には同じ。純正のDCTが備える自動レブマッチング機能をそのまま利用し、シフトレバーが電子的に変速指令を出した後の処理はパドルシフト操作時と大きく変わりません。つまり、ヒール&トゥのように自分自身でブリッピングを操る余地はないのです。
そう考えると、“クイックシフト”は純正パドルシフターに代わるHパターン式の操作インターフェイスと表現した方が分かりやすいかもしれません。このように書くと少し味気なく聞こえますが、マニュアル操作らしい演出には抜かりがありません。
特にシフトレバーを操作した際には、金属的なクリック音が生まれるよう設計されており、往年のゲート式MTを思わせる感触をねらっているといいます。音と手応えはゲート式MT、変速処理の中身は純正DCT……それが“クイックシフト”の正体です。
そして、このシステムがユニークなのは、大がかりな改造を必要としない点にあります。そのため、装着後でもDCT仕様のノーマル状態に戻すことが比較的容易だとされています。

気になる価格は2万5000ドル(約400万円)で、ドナー車両は別途必要です。
なお、共同開発者とされるストゥディオ カロッツィも、なかなか興味深い存在です。公式サイトを見ると、一般的な製品ラインナップが並んでいるわけではなく、「Il Cancello(ザ・ゲート)」と題した、フェラーリ「GTC4ルッソ」にHパターンのゲート式シフターを組み込む研究プロジェクトが紹介されています。
そこで掲げられている思想のひとつが、“非破壊”です。車体そのものには改造を加えず、既存のコネクターから必要な信号を読み取る。ボディに穴を開けたり、純正配線を切断したりせず、取り外せば工場出荷状態へ戻せることを重視しています。
レズヴァニとストゥディオ カロッツィの関係についての詳細は明らかになっていませんが、両者に共通しているのはデジタル化された現代のスーパーカーに“手で操る楽しさ”を取り戻そうとしていることでしょう。
“クイックシフト”は、本物のMTへ改造するためのシステムではありません。しかし、速さという点で必要性が薄れつつあるHパターンのシフト操作を、現代のDCT車で再び楽しめるようにするという、効率や性能ではなく、あえて“操作する行為そのもの”に価値を見いだしたところに、このシステムの面白さがあるのかもしれません。
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