いまこそV8の味わいをナチュラルに堪能したい! ジャガー「XK8」の麗しポイントとは【旧車試乗】
ジャガー「XK8」は走りも古典的なのか?
今回のテストドライブ企画のため、箱根への道中をともにしたXK8コンバーチブルは1997年型、つまり前期型4リッターの自然吸気モデルである。
筆者も開設に関与した自動車博物館「ワクイミュージアム」のクラシックカー販売部門「ワクイミュージアム・ヘリテージ」から現オーナーに譲渡されたこのXK8は、これまでにも複数の自動車専門誌で取材したことがある1台。このさい正直にいってしまうと、筆者自身が手に入れようとなんども目論んできた個体そのものなのだ。

●ゴージャスでおとなしいグランドツアラーと思いきや……
以前からずっと追いかけていたクルマとはいえ、現車をじっくりと触れるのはずいぶん久しぶりのこと。この美しいボディには、なんど見ても魅了されてしまう。
デビュー当時には「ややアメリカ好み」とも評されたが、豊満な曲面のみで構成されるボディには、ジャガー永遠のアイコンたるEタイプ譲りの様式美が感じられる。また後継車たる「XK」や、現行の「Fタイプ」では法規制上許されないものとなってしまったボディの「薄さ」も、よりEタイプ的なイメージを増幅させる。
さらにインテリアでも、ダッシュパネルやフロントシートのバックレスト形状などに、Eタイプへのオマージュを明らかに感じ取ることができる。
このように、ことルックス面ではEタイプを強く意識した感の強いXK8。しかし、街中や高速道路でのドライブフィールは当然というべきか、コンポーネンツの多くを流用した前任モデル「XJS」を思い出させるような、高級サルーン然としたものである。
ところが、ひとたびソフトトップをオープンにしてワインディングロードに臨むと、XK8はもうひとつの顔を見せてくれた。ターンパイク箱根の高速コーナーはもちろん、曲率の小さなコーナーでも、XJSよりグッと正確かつ軽快なハンドリングを披露するのだ。
もちろんライトウェイトスポーツカーのような身の軽さは望めないとともに、ハードなドライビングが似合うわけでもない。しかし「スポーツカー冬の時代」といわれた1970年代前半に企画・開発され、大排気量スポーツカーよりのグランドツアラーくらいの仕立てに落ち着いたXJSとは違って、XK8はかなりスポーツカー寄りの味付け。V型12気筒エンジンを搭載した、Eタイプのシリーズ3くらいにはスポーティである。
また、XK8で初めて採用されたV8エンジンのフィールもここちよい。後継車「XK」以降のV8ジャガー各モデルが、いかにもV8的に力強いビートをアイドリング+αの回転域から轟かせるのに対して、このXK8の時代、とくに今回の取材車両のようなNAモデルでは、少なくとも一定の回転域までは往年のジャガーV12をも髣髴とさせるシルキーなハミングをささやきかけてくる。
しかし2500rpmあたりの回転数に達すると、こんどは「フォロロロロ」という木管楽器的なエキゾーストノートが柔らかく耳をくすぐってくる。もちろん「レーシー」とか「スパルタン」という単語にはほど遠いのだが、古典的な内燃機関の味わいをナチュラルに堪能できる。
またナチュラルといえば、スロットル操作に対するレスポンスも特筆に値する。ちょっと深めにスロットルを踏み込めば、徹頭徹尾スムーズなトルクを生み出しつつ、あっという間に良識的な限界ギリギリまでスピードを乗せてくる。
このダイナミックな力感も、4リッターという排気量、あるいは良くできた自然吸気エンジンであることを如実に示すものであるとともに、ジャガーの血筋が確かなものであることを示しているのだ。
歴代のジャガー製スポーティモデルの中でも、コンペティションを意識することなく、高級ツアラーとして生み出されたモデルたちは、おおむね優しく典雅な気質を帯びてきた。でもXK8は名スポーツカー「Eタイプ」の系譜を、見た目だけではなく走りの点でも受け継ぐ正統な後継車であることを、デビューから四半世紀の時を経て再確認できた。
かくして筆者は、再びジャガーほしさに眠れぬ夜を過ごすことになったのだが、念のため、もしも近い将来に売りに出たら買っても良いか細君に尋ねてみたところ、即答で「却下!」となったことも記しておこう。
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