VWゴルフやプジョー308は新鮮味に欠けるって人に! 「DS4」は世界一美しいフランス発の個性派ラグジュアリー
DS4で一気に理解しやすくなったDSオートモビルのブランド価値
この春、日本に上陸したDSオートモビルの最新モデル「DS4」に試乗した。DS4は2022年1月、フランス・パリで開催された第37回国際自動車フェスティバルにおいて「世界でもっとも美しいクルマ」に選ばれた、DSオートモビルの注目モデルだ。

DSというブランドは近年、クルマ好きの間で知られるようになってきたけれど、クルマへの関心が薄い人たちのところにまでは、まだいまひとつ浸透してないように思う。見たり聞いたりしたことがあるようは気がするけど、あまり意識したことはない。そんな感じの人が圧倒多数なんじゃないか? と感じている。
それには、DSブランドの新車を購入できるディーラーが全国13店舗に限られてるという入口の狭さも関係してるのかもしれないが、そもそも、これまでのDSブランドのクルマがいまひとつわかりにくかったことの方が大きいだろう。
1955年にデビューした稀代の名車・シトロエン「DS」の持つ先進性、前衛性、革新性、そして洗練といった象徴的な要素を基本骨子にして、サブブランドである“シトロエンDS”が誕生したのは2009年のこと。プジョーやシトロエンにつづく、当時のグループPSAの3つ目のブランドとしてDSオートモビルが独立したのが2015年。悠久の時間が育んできた伝統的な専門技術、独特のセンスや美学といった他国の自動車メーカーが持ち得ないものを強みにすえた、他国では決してつくれないフランスならではの高級車ブランド、というような触れ込みだった記憶がある。
DSの名が冠され、送り出されてきたクルマたちは、多くの人にとってはなかなかに難解だったかもしれない。そもそも日本人にとって、フランス車は昔からわかりにくい存在だった。時代が進んでくるにつれて少しずつ変化してはきたものの、昔はあまりにも個性豊かで、感覚が合う人にはすんなりマッチするけれど、多くの人には“なぜこのカタチ?”と素直に受け入れづらいクルマが多かった。だからそうしたフランス車に乗っていた人たちは、変わり者と呼ばれたし、呼ばれる方もそこに軽く誇りを感じてたようなところがあった。21世紀になってから登場したDSの名を持つ初期の頃のクルマたちは、その時代に逆戻りしたかのようだったのだ。
まぁ、ある意味では仕方のないことだとも思う。最近でこそ個性が認められるようになってきてはいるけれど、ある一定の世代までは「ナンバーワンこそがえらいのだからそこを目指せ」と教育されてきたわけだし、「どうして人と同じことができないのか」としかられてきたわけだ。高校の授業の必修科目に哲学があり、自分自身の脳ミソでモノゴトを考え、自分自身の言葉で話すことが当たり前であり、幼い頃から周りにいるそうした人たちを見てオンリーワンの存在であることが大切なのだ、ということを学んでくるフランス人たちの感性の結晶のようなものを、すんなり理屈として納得するのはちょっとばかり難しい。国民性の違いといってしまえばそれまでだが、そこにはそうした単純な言葉で片づけてしまってはいけないような、深いところにある人生観の相違みたいなものがあるのだと思う。
ところが、だ。2018年の「DS7クロスバック」以降、新しいモデルが上陸するたびに少しずつ歩み寄りを見せてくれてたようなDSブランドのクルマたちが、このDS4の上陸で一気に理解しやすくなったように感じる。ブランドとしての矜持をしっかり保ちながら、多くの人の心に素直に届く、いいクルマを送り出してきた。DSブランドの人たちが寛容になったのか、デザイン陣が手慣れたのか、それとも僕たちが慣れたのか。まず目に飛び込んでくるDS4のデザインに対し、素直に「かっこいい」という人が多かったことに、僕は驚いた。これまでのDSでは、ほとんどなかったことだからだ。
いや、僕自身もDS4のデザインに関しては、2021年に写真が公開されたときから魅力を感じてる。くっきりした直線基調の、いくつものプレスラインが複雑に組み合わせられ、ともすれば目にうるさくなってしまいがちなところがそれもなく、彫刻的なたたずまいを見せている。写真で見てただけの時期にはSUVっぽさを感じてたものだったが、不思議と実車からはその雰囲気が感じられず、最低地上高こそ高いものの、プロポーションのいい4ドアハッチバックに思える。
インテリアも見事なもので、フロントシートに座って視界に入ってくるのはほぼ水平を基調としたダッシュボードをさまざまな角度の直線が取り囲んでいる光景だが、それなのにやっぱり煩雑な印象などまったく感じない。ところどころに配されてるクロームのアクセントにも華美さはなく、むしろシックな雰囲気づくりにひと役買ってる感じだ。この線づかいや異素材づかいのバランスの巧みさは、いったいどういうことなんだろう? とすら思わされる。

そして、これがDSブランドの大きな見せ場のひとつなのだが、インテリアにもエクステリアにも、ところどころに配されてる繊細にして気品のある装飾の数々。思いもよらなかった箇所に凝ったディテールを見てとれたりする。それらのあしらい方が少しも“これ見よがし”じゃないから、もしかしたら気づかない人もいるんじゃないか? とむだな心配すらしてしまうほど。各部の仕上げのクオリティも高いし、安っぽい素材なんてものはまったく使われてないから、心地よく抑制が効かされてるけれど実にプレミアムなのだな、ということがわかる。
悪目立ちする派手さよりもシックなエレガンスを好む、とてもフランスらしい高級車。DS4は目に見える部分のすべてから、そうした確固たるフィロソフィのようなものが感じられるのだ。いずれにせよDS4は、これまでCセグメントの定番モデルだったVW(フォルクスワーゲン)「ゴルフ」やプジョー「308」では味わえない、独特の世界観をもつクルマであることは間違いない。
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