「12気筒エンジン」の魅力とは? なぜ名機なのに姿を消す? BMWやセンチュリーは廃止、ベントレーは新たな時代へ
12気筒エンジンは人類が生み出した宝のひとつ
けれど、僕はそうならなかったことを神に感謝したい。なぜならエンジンは、モーターのような特性を目指しつつも、その過程において期せずして素晴らしいエンターテインメント性を生み出したからだ。

実際にサーキットに足を運んでレース観戦したことのある人なら実感できるだろうが、エンジン音はレース観戦における最大の醍醐味だ。耳をつんざくようなあのサウンドがなければ興業としてのレースはおそらく成り立たない。EVフォーミュラカーによるレース“フォーミュラE”の人気がいまひとつ盛り上がらない最大の理由はそこにある。
運転していても同じだ。回転数や速度、アクセルの踏み込み量によって変化していくエンジン音や、トップエンドに向かって勢いを増しながら一気に吹け上がる感覚は間違いなく運転の歓びにつながる。もっとも、最近はそういうエンターテインメント性に満ちたエンジンが少なくなってしまったのも事実。低カロリー食品に味気ないものが多いのと同じで、エンジンも高効率化していくと味気なくなっていくのだ。
そんななか、珠玉と呼ぶべきエンジンもまだ残っている。ポルシェの水平対向6気筒、BMWの直列6気筒、フェラーリのV型8気筒、アウディのV型10気筒などはその好例だ。しかし上には上がいる。12気筒エンジンだ。
12気筒エンジンは人類が生み出した宝のひとつだと思う。レーシングカーはもちろん、フェラーリやロールスロイスといった超高級車が搭載してきた12気筒エンジンは、常に特別な存在として憧れの対象であり続けてきた。それは単にシリンダー数が多いという理由だけではなく、6気筒や8気筒にはない魅力があったから。大きく重く複雑で燃費が悪く、かつ高価であることと引き換えに得た性能となめらかさ、サウンドは、間違いなくエンジン界のファーストクラスと呼ぶべきものである。
しかし、年々厳しくなる燃費規制によって、12気筒エンジンは絶滅危惧種になっている。多気筒化は高回転化につながり、高回転化は高出力化につながるが、燃費的には不利。そこで、ターボで大量の空気とガソリンをシリンダー内に送り込むことでより少ない排気量とシリンダー数で強大なトルクを得るのが昨今の高性能エンジンのトレンドだ。たとえば6リッターV12よりも4リッターV8ターボの方がより少ない燃料でより高い出力を得られるといった具合である。
実際、BMWは新型「7シリーズ」への12気筒エンジン搭載をあきらめた。かつて日本唯一の12気筒エンジン搭載車だったトヨタ「センチュリー」も現行モデルは8気筒ハイブリッドに。メルセデス・ベンツも12気筒をカタログから落とすのは時間の問題だろう。そして上記したベントレーの発表だ。
フェラーリやランボルギーニ、ロールスロイスは最後まで踏ん張るだろうが、それもいつまで続くかどうか。「死ぬまでに一度は12気筒エンジンを所有してみたい」というクルマ好きは少なくないが、その夢を新車で叶えようと思うのなら早めに行動した方がいいかもしれない。
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