「輸入車の巻き返しはあるか!?」 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー「10ベストカー」真の実力を検証する
過去9年間で輸入車が3度もイヤーカーを受賞
2022年12月8日、「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)」が決定する。

今年度のノミネート車は、2021年11月1日から2022年10月31日までに発表または発売されたモデルの中で、“継続的に生産・販売され、一般ユーザーが特別な手段を用いなくても購入できること”、また、“2021年12月下旬までに一般消費者が日本国内で購入できること”といった条件を満たした乗用車48台。このうち、選考委員の投票で選ばれた上位11台の「10ベストカー」が最終選考へと進んだ(本年度は第10位の指名数が同数だったため、規約にのっとり11台を選出)。
過去を振り返ると、2013-2014にフォルクスワーゲン「ゴルフ」が、2017-2018にボルボ「XC60」が、そして2018-2019にボルボ「XC40」が、といった具合に、過去9年間で輸入車が3度、イヤーカーに輝いている。
当時は「日本のCOTYなのになぜ輸入車?」という批判も聞かれたが、製造国や製造メーカーを問わず、各選考委員が“日本で販売されているすべてのクルマ”を、コストパフォーマンスを含め公平に評価した結果である。裏を返せば、残念ながら過去の日本車の実力は、そこまで高くなかったということだ。
ということでここからは、最終選考へと進んだ10ベストカーの実力を改めて検証してみたい。まずは、今年度も強力な顔ぶれが残った輸入車からだ。
●BMW「iX」 速さの質が従来のBMW車とは明らかに違う

EV(電気自動車)路線を積極的に推し進めているメルセデス・ベンツやアウディに対し、BMWは経営トップが「エンジンは残すべき」と発言するなど、EVオンリー戦略には懐疑的な立場をとっている。かつて「i3」で痛い目に遭った経験や、常にエンジンの魅力でビジネスをおこなってきた歴史が冷静さの理由だろう。
とはいえBMWは、EV化にも積極的に取り組んでいる。その中心となるモデルが「iX」だ。全長4995mm、全幅1965mmという大柄なボディで、重量は搭載するバッテリー容量によって2380kg〜2600kgとなる。そういう意味では、大きなボディに大量のバッテリーを搭載して動力性能と航続距離を確保するという、典型的な“エンジン置き換え型EV”に見えるが、実はそうではない。
たとえば、大きなキドニーグリルでBMWらしさを表現しているものの、そのフォルムはスポーティとはほど遠いし、室内もラウンジのような感覚が強い。そして走り出せば船のようなソフトな乗り心地に驚かされる。アクセルペダルを踏み込めば相当速いが、速さの質が従来のBMW車とは明らかに違う。“駆け抜ける歓び”ではなく、「ひかえめな速度でゆったりドライブを楽しんで下さいね」というクルマなのだ。
たしかに、EVでアウトバーンをガンガン走ったらすぐに電欠してしまう。だったら走りのコンセプトもEVにふさわしいものにしようということだろう。それがBMWらしいかどうかはともかく、作り手の意思が明確に反映されているプロダクトは魅力的だ。
●ヒョンデ「アイオニック5」 デザインと希少性とお買い得感は優秀

韓国はいまやデザイン大国であり、クルマに限らず魅力的なプロダクトを次々に生み出している。かつて日本人学生が多数在籍していたアメリカの有名デザイン学校も、日本人に代わって多くの韓国人留学生でにぎわっているという。
そんな流れでヒョンデの「アイオニック5」を眺めると、なるほど韓国デザインの優秀性がよく出ている。「こんな大きなハッチバックは見たことないぞ」と思わせるユニークなフォルムに鋭い顔つきやパキッとした面の折り返しなど、エクステリアデザインはキレッキレだ。一方、走りの性能は普通。乗り心地や静粛性、ハンドリング、動力性能等々、どこをとっても弱点と呼ぶべき部分こそないが、その反面、これは素晴らしいとうならされる部分もない。アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストといったADAS(先進運転支援機能)の実力は、ひと昔前の日本車レベルにとどまっている。
販売店を持たないのでアフターサービスは各地の協力整備工場が担当するが、数が少ないためそこも不安要素となる。とても魅力的でユニークなEVではあるが、デザインと希少性とお買い得感で選ぶクルマ、というのが現段階における僕の評価だ。
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