トヨタ“進化型”「GRヤリス」はなぜ大幅に進化した? 実戦で得た成果をすべて反映!! 開発責任者が振り返る「開発の舞台裏」
新たな武器“GR-DAT”はMTと同等の性能を持つ2ペダル
“進化型”「GRヤリス」のエンジンは、軽量ピストン、高燃圧対応、動弁系強化などハードにも手が加えられ、スペックは272ps/370Nmから304ps/400Nmへと引き上げられています。
さらに、パワートレイン、EPS、エアコンなどの特性を変更可能なドライブモードセレクト(ノーマル/スポーツ/エコ/カスタム)も新たに設定されています。

トランスミッションは6速MTに加えて、新たに8速のGR-DATが追加されました。
「『GRヤリス』はMTにこだわって開発したモデルで、当初はATの設定など眼中にありませんでした。しかし、発売後のあるときにモリゾウさんから『モータースポーツの敷居を下げるために、2ペダルの可能性を探ってみないか?』という提案があったのです。
私は即座に『求められているのはMTと同等の性能を持った2ペダルだ』と理解しました。技術者としてATの弱点はよく知っているので開発は一筋縄ではいかないと思いましたが、モリゾウさんの顔は本気でした」(齋藤氏)
GR-DATの最大のポイントは、パドル操作をおこなわずDレンジのままでも、ドライバーの意のままの走りを実現させる“完全”な自動変速にあります。
そのために、高トルク対応の8速ATをベースに、高応答ソレノイドの採用や高耐熱摩擦材への変更を実施。加えて、ブレーキの踏み込み方や抜き方、アクセル操作を細かくセンシングするスポーツ走行用に開発された制御を導入し、ドライバーの意思を汲み取るギア選択を可能にしています。
「ドライバーの意思を汲み取るということは、『MTならここでシフト操作するよね』という絶妙なタイミングに自動でシフトアップ/ダウンさせる必要がある……言葉にするのは簡単ですが、実際の開発はそう簡単にはいきませんでした。
開発中はプロドライバーやジェントルマンドライバーの方々からかなり厳しいコメントをたくさんいただき、それを愚直にフィードバックしています。
プロトタイプの試乗会ではシンヤさん(筆者)にもいろいろと指摘されましたので、今後も開発は続けていきます」(齋藤氏)
そんな“進化型”「GRヤリス」のボディは、スポット溶接打点を約13%増やし、構造用接着剤の塗布部位を約24%拡大すると同時に、走行中のアライメント変化を抑制するためにボディとショックアブソーバーを締結するボルトの本数を1本から3本に変更。それらに合わせて、サスペンションのセットアップも見直しが図られています。
そして今回、電子制御多板クラッチを用いた4WDシステム“GR-FOUR”にも改良の手が入りました。今回は前後駆動力配分の見直しに加え、「トラック」モード時には走行状況に応じて可変式(60:40~30:70)が採用されています。
「従来モデルはシンプルな制御でしたが、発売後に『壊しては直し』を繰り返しおこなうことで、我々にもスポーツ4WDの知見・ノウハウが少しずつ増えてきました。そのため今回は、少し踏み込んだ制御にトライしました。
プロドライバーやモリゾウさんからのフィードバックを元に開発をおこなってきましたが、特に佐々木雅弘選手は駆動に関してのこだわりは強く、新しい“GR-FOUR”についても我々は“佐々木デフ”と呼んでいます」(齋藤氏)
●「GRヤリス」はユーザーも開発チームの一員
実際に“進化型”「GRヤリス」に試乗してみると、その伸び代はフルモデルチェンジ級で従来モデルのユーザーであれば“箱替え”したくなることでしょう。
それはなぜか? 開発陣の「もっといいクルマにしたい」というピュアな思いが愚直に反映されているからだと筆者は分析しています。
「プロドライバーの方々からは各々の伝え方でフィードバックをいただきましたが、その中でも石浦宏明選手は試乗時こそ口数は少ないですが、提出されるレポートは非常に細かくていねいに評価が書かれていました。我々はそれを“石浦レポート”と呼んでいましたが、実際の開発にとても役立ちました」(齋藤氏)
そんな“進化型”「GRヤリス」、価格は従来モデルに対して若干アップしているものの、筆者はそれ以上の伸び代があると思っています。
「このクルマは“乗ってナンボ”のモデルですので、いろんな場所を走っていただきたいですね。そして、ユーザーの皆さんも開発チームの一員だと思っていますので、気になることがあればSNSなどを通じてどんどん発信して欲しい。我々はそんな細かい声も常にチェックしていますので」(齋藤氏)
このように“進化型”「GRヤリス」は、“現時点”における最良の「GRヤリス」であるのは間違いありませんが、このモデルが「もっといいクルマづくり」のゴールではありません。すでに開発チームは次のステップに進んでいます。さらに進化させるためのアップデートパーツもスタンバイしているようなので、今後の展開にも大注目です。
ただ心配なのは、現時点ですでに2025年までの販売枠がほぼ埋まってしまっているという状況。
「我々が想定していた以上の反響に驚いており、本当に申し訳ないと思っています。より多くの皆さんにご提供できるよう、現在、GRファクトリーの生産能力を増強する方向で進めています」(齋藤氏)
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