エンジンがなくても“BMW M”らしさは健在なのか? グッドウッドに登場した4モーターEV「Mコンセプト ノイエ・クラッセ」で変わる“駆けぬける歓び”
4輪を個別に動かすことで“駆けぬける歓び”はどう変わる?
では、エンジンを搭載しない「Mコンセプト ノイエ・クラッセ」は、どのようにして“BMW Mらしさ”を生み出そうとしているのでしょうか。その中核となるのが、次世代電動駆動システム“BMW M eDrive”です。
前後に計4基の電気モーターを搭載し、4つの車輪をそれぞれ個別に駆動します。一般的な電動4WDでは、前後の車軸に1基ずつモーターを配置する構成が多く見られますが、これに対して“BMW M eDrive”では、各車輪に対応するモーターを搭載。ひとつひとつのタイヤへ伝える駆動力を瞬時かつ細かく調整します。
4基のモーターとブレーキ、エネルギー回生を統合制御するのが、“Heart of Joy”と呼ばれる高性能コンピュータです。そこでは、M専用制御ソフト“BMW Mダイナミック・パフォーマンス・コントロール”が作動し、各輪の駆動力や制動力を緻密に管理します。
各輪へ伝えるトルクと出力を個別に制御できるため、走行状況に応じて4輪の駆動力を緻密に配分できます。これにより、発進時や旋回時、限界域におけるトラクションと応答性を高める狙いです。また減速時には、ブレーキシステムとモーターによる回生制動を連携させます。
さらに前輪側の駆動システムは、走行状況に応じて完全に切り離すことが可能です。これにより、後輪駆動ならではの走行特性と効率性、4輪駆動による高いトラクションを状況に応じて使い分けます。BMW Mは、長距離の高速道路走行などで前輪側を切り離すことで、効率と航続距離を高められると説明しています。

従来のBMW Mは、エンジンのレスポンスや後輪へ伝わる駆動力、変速時の衝撃などが、ドライバーへクルマの状態を伝えていました。新世代のBEVでは、アクセルを踏んだ瞬間からなめらかに大きなトルクを発生する一方、エンジン回転の上昇や変速による抑揚はありません。
そこでBMW Mは、将来の電動モデルでは複数のドライブモードに加え、疑似的な変速と新開発のBMW M専用サウンドを採用。内燃機関を持たないBEVでも、感情に訴えるM独自の運転体験を提供しようとしています。
また電源システムには、800Vアーキテクチャを採用しています。バッテリーの使用可能容量は100kWh以上。BMW M専用に最適化された第6世代の円筒形セルと冷却システムによって、瞬間的な高出力だけでなく、サーキットで高負荷走行を繰り返した際にも安定して性能を引き出すことを目指しているといいます。
また、バッテリーケースは電池を収めるだけの箱ではなく、前後の車軸をつなぐ車体構造の一部として使われています。重量物であるバッテリーを床下の低い位置へ搭載しながら、ボディ剛性を高める部材としても活用することで、低重心化と正確なハンドリングを両立しようとしているのです。

ちなみに現時点で、モーターの最高出力や最大トルク、車両重量、航続距離などは明らかにされていません。
また、「Mコンセプト ノイエ・クラッセ」そのものの市販化は、現時点で発表されていません。同車は、今後のBMW Mが採用するデザイン、素材、駆動技術、ドライビング体験を示すコンセプトモデルと位置づけられています。なおBMW Mは、ノイエ・クラッセ技術を用いた全電動高性能モデルを2027年から市場投入する予定です。
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エンジンの回転や排気音を中心にドライバーの感情を高めるのではなく、4基のモーターでタイヤを緻密に操り、アクセル、ブレーキ、ステアリングに対してクルマを即座に反応させることで、BMW Mは新しい“駆けぬける歓び”を生み出そうとしています。
動力源は大きく変わっても、ドライバーの操作に忠実に応え、限界まで意のままに扱えるクルマをつくる……グッドウッドに登場した「Mコンセプト ノイエ・クラッセ」は、“BMW Mらしさ”を捨てるのではなく、その本質を4モーターBEVの技術で再構築しようとしているのです。
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