VAGUE(ヴァーグ)

“展示だけ”のはずがサプライズ走行! レクサス「LFAコンセプト」がグッドウッドで初のデモラン V10エンジンを積まないEVスポーツが受け継ぐものとは

V10を積まない次世代モデルが受け継ぐもの

 次世代の「LFA」を考える上で避けて通れないのが、初代モデルの存在です。

 初代「LFA」は2010年から生産された、世界限定500台のスーパースポーツカーでした。最高出力560psを発生する4.8リッターV型10気筒自然吸気エンジンを搭載し、炭素繊維強化樹脂を用いた軽量・高剛性な車体や、9000rpm近くまで回るエンジンの鋭い応答とサウンドによって、レクサスを象徴する存在となりました。

 そのため、エンジンのないBEVのスーパースポーツが「LFA」を名乗ることに、違和感を抱く人もいるでしょう。しかしレクサスは、「LFA」という名前を内燃機関車だけのものとは位置づけていません。

 その時代の技術者が磨き、次の世代へ受け継ぐべき技術や技能を体現するモデル……その象徴が「LFA」であると説明しています。

 次世代の「LFA」は、“Discover Immersion”という開発テーマを掲げています。これは、ドライバーが運転の世界へ深く没入し、人とクルマが一体になったように感じられる体験を意味します。

 プロジェクト責任者は、空力性能と彫刻的な美しさを高次元で融合させ、「没入感」と、走行後にも感覚が残る「余韻」を生むクルマを目指すと説明しています。

 振り返れば、初代「LFA」も単にハイパワーなだけのモデルではありませんでした。エンジンのレスポンス、車体の動き、ステアリングから伝わる感覚、ドライバーを包み込むコックピット、そして独自のサウンドがひとつになり、運転そのものを強く記憶に残る体験へ変えていました。

「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026」のGR/レクサスブース
「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026」のGR/レクサスブース

 次世代の「LFA」は、その価値を電動パワートレインで再構築しようとしています。電気モーターは、アクセル操作に対して瞬時にトルクを立ち上げることができる一方、エンジン回転の上昇や変速が生む抑揚はありません。

 そこで、単純に最高出力や加速性能だけではなく、アクセルに対する反応性や車体の動き、ドライビングポジション、視界、音や振動までを含めた多感覚の体験が重要になります。

「LFAコンセプト」のデザインは、そうした思想から生まれています。低く伸びやかなボディは、スーパーカーらしく見せるためだけのものではありません。車体表面やタイヤ周辺、床下をとおる空気を整え、高速域での安定性を生み出す空力性能と、初代「LFA」を思わせる官能的な造形美をひとつの形にまとめようとしています。

 また、開発の背景には、スポーツカーづくりの技術・技能を次世代へ伝えるという目的があります。クルマ屋が残していくべき技術・技能を次の世代へ受け継いでいかなければならないという、マスタードライバーのモリゾウこと豊田章男会長の思いのもと、「LFAコンセプト」はGAZOO Racingの「GR GT」「GR GT3」とともに開発が進められています。3台の開発を通じて技術・技能を継承する考え方を、神社を一定の周期で建て替える“式年遷宮”になぞらえているのです。

“式年遷宮”の目的は、建物を新しくすることはもちろんのこと、材料を選び、加工し、組み上げる技能を、ベテランから若手へ実践を通じて継承することにもあります。その仕組みをスポーツカー開発に当てはめようとしているのです。

 低重心化や軽量化、高剛性化、空力開発といった技術は、実際に高性能車をつくらなければ受け継ぐことができません。次世代の「LFA」は初代の復刻ではなく、スポーツカーづくりの技能をBEV時代へと継承し、さらに進化させる役割も担っています。

レクサス「LFAコンセプト」
レクサス「LFAコンセプト」

 現時点で、モーターの最高出力、バッテリー容量、車両重量、航続距離、駆動方式、市販時期などについては明らかにされていません。特にBEVスポーツカーでは、バッテリーによる重量増加や、高負荷走行を繰り返した際の熱管理が大きな課題となります。

 また、初代のV10サウンドに代わり、どのような音や振動、操作感でドライバーの感情を高めるのかについても、「LFA」を名乗る上で重要なポイントとなるでしょう。

 それでも、当初の予定を変更し、グッドウッドを実際に走らせたことには意味があります。レクサスが「LFAコンセプト」をただのショーカーではなく、実走を重ねて完成度を高めるスポーツカーととらえていることが伝わってくるからです。

 次世代の「LFA」が目指すのは、BEVで初代をそっくり再現することではありません。動力源が変わっても、ドライバーを深く没入させ、走り終えた後まで強い余韻を残す……グッドウッドを走った「LFAコンセプト」は、初代が築いたその価値を電動化技術で新たに生み出そうとしているのです。

Gallery 【画像】超カッコいい! これがグッドウッドでサプライズ走行を披露したレクサス「LFAコンセプト」です(30枚以上)
シチズン「プロマスター」新作 “海の男”をうならせた頼れる1本

page

  • 1
  • 2

VAGUEからのオススメ

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

RECOMMEND